サイコキラーとラーニング

 清城瑠院は、ある日見渡す限り真っ白な空間になぜかいた。目の前には黄金に輝く無数のコインと、場違いにも置かれたガチャガチャ。しかもその黄金のコインは、自身の寿命を現しており、一枚で寿命一年を現していた。コインを投入して回すしか選択肢が無い現状に仕方がないと諦めて回したところ、偶然にも固有スキルラーニングという、自身が受けたスキルを一定の確率で取得することができる破格の固有スキルを手に入れてしまう。それが終わりようやく帰れると思いきや、ゲームのような世界に閉じ込められてしまった。しかも記憶が一部無くなっている。未使用のコイン分の寿命がそのまま命の残り時間になるが、外的要因で増えたり減ったりすることで、世界は徐々に殺伐としていく。瑠院は生き残るために死力を尽くすが、その途中で自身が人を嬲り殺すことに快楽を覚える【快楽殺人者】(サイコキラー)であることに気が付いてしまう。そして、瑠院のとった行動とは……。

 ダークシリアス系メインに思うかもしれませんが、ギャグ要素有りのケモミミ男の娘が男にナンパされたり、別の男の娘と仲良くしたりする内容とかもあります。

 

  • 001 始まりのガチャガチャ

     どこまでも続く真っ白な空間に、俺、|清城瑠院《せいじょうるいん》は立ち尽くしていた。 夢の世界なのか、はたまた幻なのか、全く見当もつかない。「ここは……」 見渡す限りの真っ白な空間。シミ一つないような場所に、ポツンと場違いにも二つのテーブ…

  • 002 ワンルーム

    「んあ?」 目が覚めると、俺は何もない部屋にいた。 といっても、先ほどの白い空間とは違い、マンションの一室といった感じだ。「ここはどこだ?」 部屋の見渡せば、ドアが一つ、蛇口しかないキッチンらしき流し台。玄関と思われる場所には青い魔法陣があ…

  • 003 チュートリアル前半

     視界に広がるのは、窓の外から見えた光景と酷似した何もない草原地帯と、一人の少女……。 少女!? ぱっと見十代半ばの少女は、ポロシャツにホットパンツ、キャップ帽とすべて白で統一されており、黒いショートヘアーと特徴的な紅い瞳をした美少女だった…

  • 004 チュートリアル後半

    「いやいや、終わってないからねッ! 君、生き返ってるから」「あ……本当だ」 気が付けば、俺はまた草原に立っていた。近くにはナビ子もいる。ちなみにクリスタルドラゴンは影も形もなく、その痕跡も消えている。「あれ。あれれ? 君、精神ぶっ壊れてない…

  • 005 偽装された部分

     気が付けば、俺は何もない六畳間、ホームに戻ってきていた。 玄関でブーツを脱ぎ、部屋中央で胡坐をかく。 俺が|男の子《・・・》なのは当たり前だろう? もしかしてナビ子はビッチなのか? そう思うと俺はナビ子への幻滅を隠せない。 贔屓してくれた…

  • 006 クエスト選択

     後はチュートリアルで解放されたアイテムポケットからアイテムを取り出しておくか。 スマホを確認すると、新たにアイテムポケットのアプリが追加されており、立ち上げると収納か排出を選択できるようで、当然排出を選択。 とりあえず、枠は五つしかないか…

  • 007 盗賊を探せ

     クエストをスタートすると、俺は見知らぬ森の中にいた。 周囲には草木が生え、盗賊が潜伏している小屋らしき建物は見つからない。 どうやらクエストと言っても、開始早々目の前に小屋があるということにはならないようだな。 制限時間は五時間。短くは無…

  • 008 本当の自分

     前方に発見した盗賊は、周囲を|憚《はばか》ることもなく談笑しながら歩いている。片方が背中に何か茶色い袋を背負っていた。何か良いものを手に入れたのかもしれない。 こちらには……よし、気が付いていないようだな。 これ幸いだと、俺は引き続き気配…

  • 009 クエストの収穫

     無事に戻ってきたようだな。 視界が戻ると、俺はホームである六畳間の部屋にいた。「……はぁ、そこまでうまくはいかないか」 戻ってくると同時に、俺は左手に掴んでいた大きめの袋が無くなっていることに気が付いた。 どうやら、持って帰れるといっても…

  • 010 ショップと容姿

     ここは……すごいな。 目の前に広がったのは、特大ショッピングモールだった。 ショップっていうからもっと狭いのをイメージしたのだが、これは良い意味で予想を裏切られたな。 前後左右に伸びていく長い通路に、上を向けば吹き抜けになっていて上階が何…

  • 011 男にナンパされる男の娘

    「俺ちゃんの名前は|遊野チャラ男《あそびのちゃらお》! こう見えてちょー誠実! ねえねえ、かわい子ちゃんの名前、俺ちゃんに教えてくれなーい?」 なんだこいつは……。 俺は突然すぎる出来事に戸惑いを隠せない。 そもそもチャラ男って本名なのか?…

  • 012 チャラ男VS命斗

     観戦席に移動すると、そこはコロッセオのようになっていた。「まずは逃げずにここまでついてきたことを褒めてやろう!」「御託はいいからさっさと始めろキンキラ小僧!」 中央にある円形の地面には、命斗とチャラ男の戦いが間もなく始まりそうだったが、そ…

  • 013 チャラ男の告白

    「……何か用?」 俺はいつの間にか観客席まで移動してきたチャラ男を前にして、若干嫌な予感がしつつもそう返事をする。「俺ちゃんが勝つところ見た見た? ちょーかっこ良かったっしょ? つまり、どんな奴が来ても俺ちゃんなら君のこと守ってあげらちゃう…

  • 014 オーク討伐

     目の前に広がるのは、長く続く街道に草原地帯。討伐目標のオークはおろか、人の姿も見えない。 さて、制限時間は一時間しかないし、さっさとオークを見つけないとな。それと、今度こそクリスタルブレスを実際に使って威力を確かめることも忘れないようにし…

  • 015 ショップ再び

     ホームに戻ってくると、オークの返り血で真っ赤だった衣服の汚れが嘘のように無くなっていた。 ふう、盗賊の討伐から帰還した時も思ったが、衣服や装備品がきれいになるのは助かるな。 ブーツを脱ぎ六畳間に上がると、窓辺の椅子に腰かける。 今回は儲か…

  • 016 練習相手

     クエストを始めると、視界にはグラウンドの茶色い地面が広がっていた。右方向には巨大な屋敷があり、練習相手というのが富豪か貴族なのではないかと予想してしまう。 これで相手が貴族の子供とかだったら面倒くさいなぁ……。 一瞬このクエストはハズレで…

  • 017 夕食の時間

     無事借りた木製のナイフ二本を返却してホームに帰還すると、いつもの通り汚れが消え去り、更には多少斬り飛ばされた耳や尻尾が再生していることに気が付く。 もしやと思って直接確かめてみたが、本当に再生しているとは……だから斬り飛ばした張本人である…

  • 018 初めてのイベント

     時間が来ると、俺は先ほどのスタジアムではなく、テーブルや向かい合わせのソファー、壁掛けの巨大モニターなどが設置されている待合室にいた。 ここは……。 周囲を見れば、俺と同じように現れたプレイヤーらしき人物が三人いる。 まずは左に見えるのは…

  • 019 第一の試練『千の矢』

     試練が決定されると、少しして俺を含めたパーティメンバーは、見知らぬ荒野に転移していた。周囲には山と大小さまざまな岩が転がっている。 そして上空には、大きな文字でカウントダウンが開始されており、十秒後には試練が始まるようだった。「とにかくみ…

  • 020 数百の矢の雨

     流石にあの数が一気に来るとすれば、避け切れる自信がないぞ。 俺は頭上の光景に思わず舌打ちをしてしまう。更に、数百の矢は直ぐには落ちてこず、姫紀の作り出した光の結界が消えるのを待っているようだった。「この試練を考えた奴は、クリアーさせる気が…

  • 021 奥平の秘密と第二試練決定

    「僕ちんの最強伝説の始まりなんだなぁ!!」 待合室に戻ってくると早々、奥平がどや顔で自画自賛をし始めた。 確かに最後役に立ったのは認めるが、目の前のこいつを見ていると、何だか釈然としないな……。「あんたが凄いのは分かったよ。けれど、少しは落…

  • 022 第二の試練『勇気の吊り橋』

    「場合によっては、敵を倒すよりも先に吊り橋の死守を優先する必要がある」「確かにそうですね。落ちちゃったら終わりなわけですし」 むしろ、敵よりも吊り橋の死守をメインにしてもいいくらいだ。「むむむ、僕ちんの火魔法イターラじゃ吊り橋の縄を燃やして…

  • 023 宝箱の中身

     何が起きてもおかしくはない。 そう考えた俺は、即座に何が起きてもいいように身構える。だが、しばらく経っても特に変化はなく、罠が発動した様子は見られなかった。「ぶひゃひゃ! お宝なんだな!」 すると、奥平が何やら一枚のカードを手に歓喜する。…

  • 024 ここは俺に任せて先に行け!

    「なんだいありゃ……」「ひぃっ!」「あ、あれはオーガなんだな!」 奥平がモンスター眼鏡で鬼の名称を叫ぶ。その正体は、オーガというモンスターだった。 だめだ。あいつはヤバすぎる。体中が逃げろと本能的に叫んでいる。だが、それでも……。「あれはど…

  • 025 猛攻のオーガ

    「グガァアア!!」 オーガの猛攻が続く、何とかパリィでやり過ごすが、現状を維持すれば消耗戦になってしまう。そうなれば、先にダメになるのは俺の方だった。 くそ、向こうも体力の消費は激しいはずだが、やはりモンスター。人間とは基本的な体力が違い過…

  • 026 赤鬼の小太刀

    「流石に焦りました」「今回も危なかったさね」「ぶひゅぅ。ひどい目に遭ったんだなぁ」 待合室に戻ってくると、パーティメンバーの面々は疲れたように言葉を口にした。「確かに、第二試練は疲れたな」 第一試練とはまた違った疲労感であり、第三試練へとこ…

  • 027 第三の試練『モンスター50:50』

     第三試練が始まると目の前に広がるのは草原と、白い闘技ステージのような場所だと気が付く。闘技ステージの中央には、左に赤い魔法陣、右に青い魔法陣が見える。 あの魔法陣のどちらかに乗ることで、敵のいる場所に移動できるのだろうな。「さて、赤と青。…

  • 028 打ち上げられた魚

    「あれは……」 次のステージに来て早々目に入ってきたのは、全長三メートルはあろう巨大な青魚だ。その先端には、三又槍のような角を生やしている。「トライデントフィッシュなんだな」 奥平が青魚の名称を口にした。見た目通りの名前をしたモンスターのよ…

  • 029 フレイムダイル

     ステージは残すところあと二つ。その四つ目まできたが、ようやく当たりが来たようだ。「な、なんだいありゃ」「ひっ!?」 全長約四メートルはありそうな巨大なワニ。それがステージ中央で存在感を放っていた。 あれは、ヤバそうだな。もしかしたらあのオ…

  • 030 予想外の敵

    「はぁ……」 五回戦目最後のステージ。どのような強敵が出てくるのかと、それなりにわくわくしていたのだが、目の前のこれが流石にない。「わっ、これ、僕でも知っているモンスターですよ!」「あたしゃもクエストで倒したさね」 姫紀とキャサリンも知って…

  • 031 つかの間の休憩

     さて、残す試練はあと一つか。 現在俺たちは、待合室で休憩を取っている。今回は疲労が限界ということもあり、三十分ほど時間を使うことにした。試練は俺たち以外にも三チームいるらしく、先にゴールした順番にボーナスが付くらしい。それを考えると、三十…

  • 032 第四の試練『生贄の回廊』

     ここが、生贄の回廊か。和風な寺や城の回廊って感じだな。 見渡せば、そこは広々とした廊下の一角であり、背後には壁、外側には海、内側は和風庭園がある。ちなみに正面には廊下が長く続いていた。「みんな! こんなところに看板があるんだな!」 すると…

  • 033 最初の大部屋

     サハギンが度々現れる以外に、特に変わったことは無い。順調に回廊を進んでいる。 今のところ問題は無さそうだが、そろそろ大部屋に着きそうだ。いったい、どんな試練が与えられるんだ? 真っすぐと続く回廊の奥には、大部屋らしき扉が離れた場所からでも…

  • 034 最初の生贄ポイント

    「デルタアタックさね!」「マジックショットなんだな!」「ギョエーッ!?」 大部屋を出て西側の回廊に着くと、キャサリンと奥平が率先して戦闘を行っている。 まあ、先ほど消耗しすぎたし、戦闘に参加できないのは仕方がないか。 俺は現在、最後尾を歩い…

  • 035 西の回廊

     門を抜けて西の回廊に来ると、本来生贄によって人数が減る関係上からか、モンスターの襲撃頻度が少なくなっている。 やっぱり、奥平の固有スキルって反則だよな。イベントのルールの裏を突いて復活しているし。 奥平本人は残機という固有スキルを強いとは…

  • 036 二つ目の大部屋

     ここは、道場か? 中に入ると、そこは道場のような内装をしていた。床や壁は木造であり、窓からは光りが差し込んでいる。中央には、まるで試合でも行うかのように白線が浮かび上がっていた。 何だここは? この大部屋でいったい何をさせられるんだ?「あ…

  • 037 北の回廊

     北のエリアにやってくると、相変わらずサハギンが現れる。リーダー一匹にノーマル数匹という構成が多い。「マジックショットなんだな!」「デルタアタックさね!」 最早道中のサハギンはおまけのようなものだな。この試練はおそらく、生贄で人数を減らし、…

  • 038 イライラ棒

     慎重に進んでいこう。焦っても仕方がない。 俺はイライラ棒のスタート地点から、ゆっくりと棒を進ませていく。最初は何の変哲もない直線コースだ。 ここは問題ないな。 そこを難なく突破し、続いては直角に曲がるコースだった。ちなみに、ここでキャサリ…

  • 039 東の回廊

     東路回廊に来ると、最早ノーマルサハギンは現れることは無く、サハギンリーダーしか現れなくなった。「ウェオーッ!?」 戦闘パターンが決まってきているので、奥平とキャサリンも苦戦することなくサハギンリーダーを倒していく。「楽勝さね」「ぶひゅひゅ…

  • 040 最後の試練

    「「「マジックショットなんだなぁ!」」」「なっ!? みんな避けろ!」 俺たちが躊躇っていると、偽奥平三人が一斉に攻撃を仕掛けてくる。「ぶひゃああああ!!?」「お、奥平さぁああああああああん!!」 すると偽奥平の放ったマジックショットは、全て…

  • 041 前半戦終了

    「ここは?」 転移した先は待合室ではなく、豪華なレストランのような場所だった。正面上部には、でかでかと『前半戦1位おめでとう!』という看板が掲げられていた。「見るからに、レストランさね」「うわぁ、こんな豪華なレストラン初めてです!」「ぶひゅ…

  • 042 後半戦開始

     高級レストラン内には、俺たち以外に人の気配がない。他のテーブルには食器類だけが置かれている。 キッチンや正面入り口から外に出ることは出来ず、唯一行けるのはトイレくらいだ。 トイレと飲水が無料なのは地味にありがたいが、やることが無いな。 レ…

  • 043 試合前の準備

     転移した場所は、イベント開始時に連れてこられたスタジアムだった。そのベンチスペースに、俺たちはいる。よく見れば、観客席には大勢の人たちがいた。 あの観客はいったいどこから集めてきたんだ? そんなことを思いつつ、これから起きることを今か今か…

  • 044 VSアブソリュートドラグーン①

    『みんな待たせたな! 試合の時間がやってきたぞ! がはは!』『第一試合は男の娘シスターズVSアブソリュートドラグーンだよ!』 時間がくると、頭上の大型モニターにベントとナビ子が映り喋りだす。到頭試合が始まるようだ。『どちらのチームも準備はい…

  • 045 VSアブソリュートドラグーン②

    「ぶひゅ! 美人さんなんだなぁ! でも、僕ちん美人さんでも手加減しないんだな!」「はぁ、別にどうでもいい。それよりも、さっさとこのイベントを終わらせたいわ……」 奥平は対戦相手の美貌に目を奪われて若干舞い上がるが、対する峰元という女性はどこ…

  • 046 試合後のひと時

     第一試合が終わると、俺たちは控室のような場所にいた。どうやら、他パーティの試合は見ることが出来ないらしい。 まあ、相手の試合を見て固有スキルが分かってしまえば、面白味に欠けると思われたのだろう。 そんなことを思いつつ、俺は控室のベンチに座…

  • 047 最後の試合前

     あれから第三試合が無事に終了し、アブソリュートドラグーンVS臨時パーティ(仮)は、前半戦順位の低いアブソリュートドラグーンがまさかの勝利を収めたらしい。 詳しい試合内容は控室にいて分からなかったが、おそらく峰元が活躍したのだろう。それか、…

  • 048 最終試合とこれから

     準備が完了すると、俺たちはステージ中央へと移動した。目の前には、対戦相手であるユニィと下僕たち☆彡のメンバー四人がいる。「あんたたち、速攻で終わらすわよ!」「もちろんだよユニィちゃん!」「へへへ楽勝だぜ!」「ユニィちゃんの力があれば問題な…


小説一覧に戻る▶▶

ツギクルバナー