031 つかの間の休憩

 さて、残す試練はあと一つか。

 現在俺たちは、待合室で休憩を取っている。今回は疲労が限界ということもあり、三十分ほど時間を使うことにした。試練は俺たち以外にも三チームいるらしく、先にゴールした順番にボーナスが付くらしい。それを考えると、三十分は長く感じてしまう。

 急いては事を仕損じるってことだろうな。実際、ここまでの試練でかなり体力を消耗した。俺は何とかまだやれるが、他のパーティメンバーはそうじゃない。

 パーティメンバーの中では、特に姫紀の体力が無く、次に奥平となっている。意外なのは、ぱっと見体力のなさそうな見た目のキャサリンだが、俺よりも余裕がありそうだということだ。そのことについて聞いてみると、このような返答があった。

「あたしゃのビキニアーマーは、防御力だけじゃなく、体力も含めた身体能力全般が上がるさね」

 とのことだ。あのビキニアーマーはかなり凄い装備だったらしい。やはりガチャガチャから排出されただけはある。

 ガチャガチャといえば、パーティメンバーがそれぞれ最低何回くらい回したか、予想が立てられるんだよな。

 CPに加算されるやつが出たのか、それともまだ他に使用していない固有スキルがあるのかもしれないが、確認した限りパーティメンバーの三人は、以下のものをガチャガチャから手に入れている。

『キャサリン』
 予想回数:四回
 ・ビキニアーマー
 ・剣?
 ・盾?
 ・デルタアタック(固有スキル)

『奥平』
 予想回数:四回
 ・モンスター眼鏡
 ・復活(固有スキル)
 ・イターラ(固有スキル)
 ・ワーシャ(固有スキル)

『姫紀』
 予想回数:一回
 ・補助魔法(固有スキル)

 こうして考えると、意外とみんなガチャガチャを回してはいない。特に姫紀なんかは補助魔法以外に、ガチャガチャから排出したと思われる固有スキルやアイテムを見ていなかった。

 俺のように精神耐性やCPを手に入れたと考えても、回したのおそらく一桁だろう。決闘騒ぎを起こしたあの命斗は、ガチャガチャを六十回も回したらしいが、案外寿命がかかっているだけに、多くの人はそこまで回してはいないのだろうか?

 ふと俺はそんなことを思う。寿命一年は、数字で見ると短いが、時間にすると長い。このどちらかに考えが偏っていると、ガチャガチャを多く回したり、逆に少なくなるのだろうか。

 まあ、回す回数なんて、案外欲に負けるのか、それとも打ち勝つかの違いかもしれないが。

 そう考えると、奥平などはもっと回しているような気がするが、復活する固有スキルのデメリットで寿命が五倍早く縮むのであれば、妥当な回数なのかもしれない。

 俺も寿命を削るのが嫌で、三回しかガチャガチャを回さなかったんだよな。

 だが実際、俺が三回で思いとどまったのは、ラーニングの固有スキルが手に入ったからというのが大きい。もっと微妙な固有スキルだった場合、回した回数は増えていただろう。

 今でこそ分かるが、ラーニングは反則級だ。スキルが手に入るというのは、それだけ可能性が広がる。今回の第三試練でも、新しいスキルが手に入ったしな。

 第三試練で手に入れたスキルは、火炎纏いというスキルだ。使用していたフレイムダイルを見た限り、かなり有用そうだった。そのスキルの効果を、俺はスマホを取り出して確かめることにする。

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 名称:火炎纏い
 CP:10
【説明】
 発動中自身に火炎を纏わせる。
 火属性に対して耐性が無ければ、自身も焼かれてしまう。 

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 これは……使いどころが限られるな。

 火炎纏いのスキルには、デメリット効果があった。火属性耐性が無ければ、自分で生み出した炎に焼かれることになる。

 そういえばフレイムダイル自身、斬られた尻尾の断面とか焼けてたな。それに、姫紀の補助魔法に対して、火炎纏いがどう発動するかが問題だ。

 結界の内側から炎が出れば俺だけ焼かれるし、その逆で結界の外ならば、俺が焼かれず敵だけに効くことになる。

 上手く姫紀の補助魔法と使えれば、かなり強いな。もしもの時は、考えてみるのも良いかもしれない。だが、その時は何で俺がそのスキルを持っているのかと、怪しまれることになるが。

 パーティメンバーとはいえ、ラーニングのことを話す気はなかった。信用がどうこうではなく、それを知る人が増えることが問題だ。本人にその気が無くても、情報が洩れる時は洩れてしまう。

 まあ、火炎纏いはどうしようもない時の最終手段ということにするか。

 俺はそう納得するとスマホを操作して、スキル欄から火炎纏いを入れ替える。控えに回すのは、オーガ戦で役に立ったシールドバッシュだ。

 現状、赤鬼の小太刀があるし、ナイフの時のような負担のかかる使い方は出来そうにはないからな。

 そうした理由から、シールドバッシュを装着欄から外すことになった。

 にしても、空きがあと二つしかないな。ラーニングするスキルもできるだけ厳選しなければいけない。

 試練途中でラーニングが発動した結果、俺が覚えられるスキル数が残り二つになっていた。

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 CP 75/135

 固有スキル
【ラーニング】【精神耐性】

 装着
【偽装/30】【ウインドスラッシュ/20】
【パリィ/10】【威圧/5】【火炎纏い/10】

 控え
【クリスタルブレス/100】【クリーン/5】
【シールドバッシュ/10】【】【】

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 イベントの後半は他のチームと争う以上、使えるスキルが手に入る可能性がある。それを考えれば、できるだけ敵の攻撃を避ける必要があった。

 せめて控えの空きがあともう少しあれば……イベントが終わったら、本格的にスキルの数を調整する方法を見つけないとな。おそらく、スキルショップにその可能性がある気がする……そういえば、奥平はスキルショップに行ったことがあるんだったか。少し訊いてみよう。

 スキルショップの詳細が分からなかった俺は、奥平にそのことを訊いてみることにした。

「ぶひゅ? ルインたん。どうしたんだな?」
「ああ、少し訊きたいことがあってな。今大丈夫か?」
「ぶひゅひゅ! 全然大丈夫なんだな! 僕ちんが知っていることならなんでも教えちゃうんだな!」

 待合室のソファで寛いでいた奥平は、嬉しそうにサムズアップをすると、自信満々にそう答える。

「それは助かる。実は、スキルショップについて少し気になってな。どんなところだったか教えてくれないか?」
「ぶひゅ、ルインたんはスキルショップが気になるんだな? スキルショップは名称の通りスキルカードが売っている場所で、大枠でCP別で分けられていて、その中で更に種類などで分けられていたんだなぁ! しかも、安いスキルカードでも10,000メニ―もしていて、初心者お断りだったんだなぁ」
「なるほど」

 スキルカードは、意外と高いらしい。

「ぶひゅぅ。僕ちんそれで欲しいスキルがあったんだけれど、買えないからスキル売却をしようとしたら、固有スキルは駄目だったんだなぁ」
「スキル売却?」

 とても気になる単語が出てきたので、俺は奥平にそう訊き返す。

「そうなんだな。スキル売却は、要らないスキルを売却してメニ―にすることができるんだなぁ」
「そうだったのか。それは知らなかった」

 どうやら、俺の悩みは思ったよりも簡単に解決できそうだった。更にメニ―も手に入るとなれば、スキル売買だけで生きていけそうな感じもする。

 これは、イベント終了後に試してみる価値はあるな。

「ぶひゅひゅ。ルインたんの力になれたのなら本望なんだなぁ!」
「お、おう。ありがとう」

 そうして、休憩はあっという間に過ぎ去り、到頭最後の第四試練に挑戦する時が来た。みんなで一か所に集まり、俺のスマホを注目している。

 出来れば、あまり悪辣な試練は来ないでくれよ。第三試練みたいなので頼む。

 俺は願いを込めて、ルーレットをストップさせた。そして、選ばれた試練は……。

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 第四の試練『生贄の回廊』

 進むごとに仲間を生贄に捧げなければ先に進めない回廊だよ!
 よく話し合って生贄を決めよう!

 道中は敵が蔓延っているから気を付けてね!
 回廊の角にはそれぞれ大部屋があるよ。
 そこにはちょっとした試練が待ち受けているぞ!

 生贄ポイントの前には、リタイア可能の魔法陣があるから活用してね!
 リタイアした場合、通過した生贄ポイントの数と、倒した敵の分EPが貰えるよ!

 最後まで行けば追加報酬だ!
 コンプリートすれば、他の試練が一つ駄目でも逆転の可能性があるかもよ?

 全滅してもペナルティ無しだから気楽に頑張ろう!

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 どう考えても、悪辣な試練だろこれ……。

 内容から嫌な予感がしてならなかったが、変更することは当然できない。俺たちは、第四試練の行われる場所へと転移した。


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