043 試合前の準備

 転移した場所は、イベント開始時に連れてこられたスタジアムだった。そのベンチスペースに、俺たちはいる。よく見れば、観客席には大勢の人たちがいた。

 あの観客はいったいどこから集めてきたんだ?

 そんなことを思いつつ、これから起きることを今か今かと待ちわびる。すると、唐突にスタジアム中央のステージに、ベントとナビ子が現れた。

『みんな待たせたな! これより、4444フォーフォース後半戦第一試合を始めるぜ! がはは!』
『試合は勝ち抜き戦だよ! 各パーティから一名ずつ出場して、最後までメンバーが残っていた方が勝ちだよッ!』
『ルールは何でもありだ! 相手を殺した方が勝ちになるぞ!』
『殺しは不安かい? でも大丈夫ッ! どうせ死んでもプレイヤーは生き返るからねッ!』

 ベントとナビ子はマイク片手に、観客席に向けてそのように説明を始める。

 勝ち抜き戦か。やっかいな固有スキルの奴は面倒だが、強いやつは大歓迎だ。是非戦ってみたい。

『がはは! 試合は今から十五分後だ! それまでに、各パーティは出場順番を決めておくんだぞ!』
『詳しくはベンチスペースに設置された端末から行ってね!』
『それでは、十五分後にまた会おう!』
『観客のみんなも楽しみに待っていてねッ!』

 説明を終えると、ベントとナビ子はその場から消え去る。スタジアム上空にある巨大モニターには、残り時間が表示されていた。

 とりあえず、順番を決めないといけないな。

「勝ち抜き戦だが、順番はどうする? 一対一になることを考えると、戦う術の少ない姫紀は最後に回した方がいいと思うが」

 俺がそう提案すると、三人も意見をくれる。

「僕ちんは最初がいいんだな! 僕ちんが全部倒して歓声を独り占めなんだな!」
「あたしゃは何番でもいいけれど、リーダーであるルインは出来るだけ後ろの方がいいと思うさね」
「ぼ、僕は正直一対一は怖いです。上手く戦える自信がありません」

 なるほど。全員の意見を汲み取ると、順番は奥平、キャサリン、俺、姫紀という感じになるな。出来れば最初に出たかったが、勝利を考えれば無難かもしれない。

 パーティの中で戦闘に関しては、俺が一番優れていると自負している。であるならば、下手に消耗して強敵との戦いに敗れるようであれば、目も当てられない。

「よし、順番は奥平、キャサリン、俺、姫紀の順番でいこう」
「了解さね」
「そ、それでよろしくお願いします」
「流石ルインたん! 僕ちんが全戦全勝してみせるんだな!」

 パーティメンバーも納得したので、順番を入力する端末とやらに近づく。タッチパネル式のそれには、順番を決める項目と、EPを使う項目があった。

 EPはここで使うのか。とりあえず先に、出場の順番を登録しよう。

 そう思い、俺は順番を決める項目をタップして進み、奥平、キャサリン、俺、姫紀の順番で登録をした。

 よし、順番はこれでいいとして、問題はEPだよな。一度どんな感じか確認してみるか。

 俺は端末からEPを使う項目をタップした。すると画面一覧は、このように表示される。

 ____________________________________

 所持EP:12,110

 筋力増強 1×300
 耐久増強 1×300
 魔力増強 1×300
 精神増強 1×300
 敏捷増強 1×300
 ___
 __
 _
 火耐性 1×300
 水耐性 1×300
 風耐性 1×300
 土耐性 1×300
 光耐性 1×300
 闇耐性 1×300
 ___
 __
 _
 毒耐性 1×300
 眠り耐性 1×300
 麻痺耐性 1×300
 スタン耐性 1×300
 火傷耐性 1×300
 呪い耐性 1×300
 石化耐性 1×300
 魅了耐性 1×300
 精神耐性 1×300
 ___
 __
 _
 食いしばり 1×700
 一度だけの回復 1×1,000
 スキル確認 1×1,000
 スキル隠蔽 1×500
 ___
 __
 _
 武器強化 1×500
 防具強化 1×500
 装備修復 1×500
 ___
 __
 _
 バトル形式変更 1×1,000
 地形変更 1×500
 ___
 __
 _
 ____________________________________

 EPを使う項目は多岐にわたった。画面をスクロールすれば、項目が大量に現れる。

 これは、慎重に考えないといけないな。しかし、時間はあまり残されていない。決めるなら、即決する必要があるだろう。

 そうは思うものの、無断でEPを使う訳にもいかず、パーティメンバーに相談することにした。

「どうやらEPを使う項目がたくさんあるようだ。しかし、残り時間を考えるとあまり時間をかけられない。それを踏まえて、意見をくれないか?」

 俺がそう質問を投げかけると、三人は一瞬思考するが、どうやら直ぐに答えが出たらしい。

「僕ちんはルインたんが好きに選べばいいと思うんだな!」
「そうさね。これまでの試練は、ルインの選択に任せてきた。それは間違いじゃ無かったさね」
「そうですね! ルインさんが好きに決めてください!」
「そうか、なら任せてくれ」

 三人はEPの使用を俺に委ねてくれた。ここまで信頼されたからには、結果を出さなければいけない。

 その前に、一つやっておくことがあるな。

 俺はEPを使う項目を見て、先にしなければいけないことに気が付く。それは、スキルの隠蔽だ。

 普通に考えて、敵リーダーの能力を把握するのは必須だ。そう考えると、俺のスキルも見られる可能性が高い。

 俺はそう考えて、まずは偽装のスキルで自分のスキルを誤魔化す。結果として、このように偽装した。

 _____________________

 CP 0/30

 固有スキル
【威圧】【ウインドスラッシュ】

 装着

 控え
【】【】【】【】【】

 _____________________

 この世界に来て二日目である現状、このようなスキル構成でも違和感はないはずだ。一応リーダーということもあり、ウインドスラッシュを固有スキルにしておいた。弱すぎれば違和感を持たれるかもしれない。

 それに加え、EPを支払いスキル隠蔽を重ね掛けしておく。俺の偽装だけでは不安であり、EPをケチった結果、スキルを確認されれば本末転倒だからだ。

 そうして、次に俺は敵リーダーのスキルを確認することにした。スキル確認の項目をタップすると、敵パーティのメンバーリストが表示される。

 たしか、敵パーティのリーダーは外道田杉助げどうだすぎすけとかいったな。

 前半戦ランキングに載っていた敵リーダーの名前を思い出し、俺はその中から外道田杉助げどうだすぎすけをタップすると、スキル欄が表示された。

 _____________________

 CP 15/30

 固有スキル
【強制命令】【芋虫博士】【ひよこ鑑定士】

 装着
【ラッシュ/15】

 控え
【】【】【】【】【】

 _____________________

 固有スキルが三つに装着スキルが一つか。効果までは分からないが、名称から予想することはできるな。

 特に固有スキルの強制命令は危険に思えた。発動条件は分からないが、自決しろと強制命令された場合、それだけで負けてしまう可能性がある。対処法は、精神耐性だろうか。

 それを考え、俺はキャサリンにEPを支払い精神耐性を付与すると、俺にも念のため付けておく。

 俺には固有スキルで精神耐性が元々あるが、重ね掛けすればより、強固になるはずだろう。

 そして次に俺は、基礎能力増強系を仲間たちに付与しようと考えたが、何故か既に発動済みと表示されていた。

 これはどういうことだ? いったいどこで……レストランの食事か。一食500EPで高いと思ったが、基礎能力全てが適応されていることを考えると、かなりお得ということになるな。

 それしか理由が考えられなかった。基礎能力増強は全部で五種あるので、合計1,500EPということになる。

 これはかなりありがたいな。そう考えると、レストランの食事はある意味罠だったということか。

 そう理解しながらも、最後にキャサリンのビキニアーマーを強化しておくことにした。ただでさえ強力な防具なので、強化すれば早々にやられることは無いはずだ。

 奥平と姫紀には悪いが、二人の強化は無しになる。バランスとEPの残りを考えれば妥当だろう。正直耐性系をもっと付与したほうが良かったかもしれないが、次の試合もあるし、報酬自体がしょぼくなってしまうしな。

 そう判断したこともあるが、キャサリンと奥平を強化しすぎると、俺まで順番が回ってこないかもしれないと思い、このような結果になった。

 ちなみに、購入した項目は以下の通りとなる。

【購入項目】
 ・スキル隠蔽 1×500
 ・スキル確認 1×1,000
 ・精神耐性 2×300
 ・防具強化 1×500

 合計2,600EP
 残り9,510EP

 そうしてEPの使用項目の選択を終了すると、到頭試合の時間がやってきた。


目次に戻る▶▶

ブックマーク
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA