047 最後の試合前

 あれから第三試合が無事に終了し、アブソリュートドラグーンVS臨時パーティ(仮)は、前半戦順位の低いアブソリュートドラグーンがまさかの勝利を収めたらしい。

 詳しい試合内容は控室にいて分からなかったが、おそらく峰元が活躍したのだろう。それか、想像以上に臨時パーティ(仮)が弱いかのどちらかになる。

 そうして、それから十五分の休憩を挟み第四試合、決勝戦が始まろうとしていた。

『がはは! 第四試合は男の娘シスターズVSユニィと下僕たち☆彡の対戦だ!』
『これで4444フォーフォース最後の試合だよ! 優勝パーティはEP三倍のボーナスがあるから頑張ってねッ!』

 第一試合と同様にスタジアムへと移動すると、頭上の巨大モニターからベントとナビ子の声が鳴り響く。試合を行うステージには変化は無いが、この試合はチームデスマッチ。つまり、パーティメンバー全員が一度に出場をする。

 俺たちのチームワークが試されるな。一応事前に作戦は決めているとはいえ、それも相手の固有スキルによっては破られる可能性がある。

 そう思いながらも、ベンチスペースにある端末を操作して、EPを使用することにした。まずはとりあえずスキル隠蔽を選択後、即座に購入して有効にする。

 ん? 今一瞬何か違和感があったな。

 すると、何かが身体を駆け抜けていくような感覚がした。状況からして、敵パーティが俺のスキルを確認したのかもしれない。

 一応対策はされている可能性もあったが、俺も敵パーティリーダーのスキルをEPを支払い確認をしようとした。だがやはりというべきか、EPは消費されたものの、敵パーティリーダーのスキルを確認することが出来ない。ちなみに、敵パーティリーダーの名前は星川ほしかわユニという。

 さて、相手のスキルが分からない以上、どんな耐性を付与するべきだろうか。悩みどころだな。

 俺が悩んでいると、そこに奥平が近づいてくる。

「ルインたん。向こうのベンチに見える相手パーティリーダーについて、僕ちん思い出したんだな!」
「それはどういうことだ?」

 俺がそう訊き返すと、奥平はニヤリと笑みを浮かべながら、俺に気が付いたことを教えてくれた。

「ぶひゅひゅ。敵パーティリーダーのユニィたんだけど、実は僕ちんあのチート二人組の決闘のあと、ユニィたんのマジカルステージを観戦しにいったんだなぁ!」
「チート二人組? ああ、チャラ男と命斗のことか」

 そういえばあの決闘騒ぎの時、実は奥平もその場にいたんだよな。それと今思い出したが、移動したバトルの会場では、他にも練習やパフォーマンスをしている者がいた。

 その中に確か、『ユニィのマジカルステージ☆彡』というのがあったはずだ。一瞬しか見ていなかったのであまり覚えていないが、魔法を使っていた少女がいたかもしれない。それが敵パーティリーダーのユニィなのだろう。

「そうなんだな。それで、僕ちんはあの後ユニィたんのマジカルステージを見に行ったんだな。そこで、ユニィたんは氷の魔法を使っていたんだな! でもそのあと不思議だったのは、何故か途中から記憶があいまいで、気が付いたら無一文で自室に戻っていたんだなぁ……今思えば、何か精神的な攻撃を受けたかもしれないんだなぁ……」
「なるほど。それが本当なら対策をした方がいいな。奥平、貴重な情報提供助かる」
「ぶひゅひゅ、ルインたんの役に立てたなら幸いなんだなぁ!」

 奥平はそう言って喜びの声を上げると、俺から離れて行った。残り時間も少ないので、俺は奥平の情報を元にEPを使い耐性を付与していく。

 敵パーティリーダーが使うのは、氷系魔法と精神系スキルといったところか。

 俺はそう考え、俺を含めたパーティメンバー全員に氷耐性と精神耐性を付与していく。それによって多くのEPを消費してしまったので、残りは火炎纏いを使うことを考えて、俺自身に火耐性を付与した。最終的に、購入したEP項目は以下の通りになる。

【購入項目】
 ・スキル隠蔽 1×500
 ・スキル確認 1×1,000
 ・氷耐性 4×300
 ・精神耐性 4×300
 ・火耐性 1×300

 合計EP4,200
 残り5,310EP

 だいぶ残りのEPが減ってしまったが、ケチってやられてしまうよりはいいだろう。心配なのは、敵パーティリーダー以外の固有スキルについてだ。やっかいな固有スキルの場合、窮地に陥ってしまう可能性がある。

 しかし予想が出来ない以上、勘で耐性を付与するよりは、分かっている敵パーティリーダーへの対策をする方がいいと考えた。

 敵パーティリーダーを対策すれば、焦って敵パーティの統率も乱れるだろう。そうすれば、一気に崩すチャンスが生まれる。

 そこにこちらの作戦が上手く刺されば、勝てるはずだ。

 ちなみにパーティメンバーに指示している作戦は、姫紀の補助魔法を待つ傍ら、俺と奥平が遠距離攻撃をして、接近する敵をキャサリンが抑える。そして姫紀の補助魔法が完成と共に、俺とキャサリンが敵パーティに突貫するという作戦だ。

 シンプルな作戦だが、今のパーティでは有効だと考えている。一応こちらの作戦が崩された時の指示も出しているので、問題はないだろう。

「みんな。これが最後の試合だ。ここまで来たら、優勝しよう!」
「当然さね!」
「僕ちん勝利をルインたんと姫紀たんに捧げるんだなぁ!」
「はい! 優勝しましょう!」

 パーティメンバーに声をかけと、到頭試合が始まる。これが、最後の戦いだ。


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