046 試合後のひと時

 第一試合が終わると、俺たちは控室のような場所にいた。どうやら、他パーティの試合は見ることが出来ないらしい。

 まあ、相手の試合を見て固有スキルが分かってしまえば、面白味に欠けると思われたのだろう。

 そんなことを思いつつ、俺は控室のベンチに座る。周囲を見れば、パーティメンバーは試合の勝利に対して未だに喜びを分かち合っていた。

「二人とも凄いです! 今回僕は見ているだけでしたけれど、次は僕も活躍してみます!」
「ぶひゃひゃ! 僕ちん大活躍だったんだな!」
「あたしゃも今回の結果には大満足さね!」

 それを聞いて俺も、三人につられて笑みを浮かべてしまう。

 確かに今回、奥平とキャサリンはかなりの活躍をした。特にキャサリンは敵の中で一番強い峰元と、パーティリーダーである外道田を倒した功績は大きい。

 だが次に俺たちの対戦相手が決まる第二試合では、前半戦二位のユニィと下僕たち☆彡と、三位の臨時パーティ(仮)が戦っている。前半戦の順位を考えれば、どちらが勝っても外道田たちよりも強敵になる可能性は高い。

 それを考えれば、次も楽勝と考えるのは危険だろう。かといって、不安を煽るのも違うかもしれない。

 俺はあえて先ほどの勝利で喜んでいる三人に、水を差すことはしなかった。

 まあ試合直前でも浮かれているようであれば、その時は声をかけるか。どちらが勝っても前半戦の順位が下とはいえ、油断はできないしな。

 そうしてしばらくの間、控室で時間を潰す。控室には巨大モニターと、自販機が複数台(EPではなくメニ―で支払う)があり、奥の扉にはトイレの個室があるだけだった。

 念のため次の試合に向けてスキル構成をもう一度考えるが、特に替えることなく時間だけが過ぎていく。そんな空気の中、奥田が痺れを切らす。

「暇何だなぁ……そうだ! みんなイベント報酬で何がほしいか、話し合うんだな! 僕ちんは断然、寿命とスキルなんだなぁ!」

 あまりに暇だったのか、奥平がそんなことを言い始める。それにつられて、姫紀とキャサリンも報酬で欲しい物を述べた。

「僕は、服とスキルです。この格好はちょっとダサいので」
「あたしゃは純粋にメニーさね。メニ―がたくさんあれば、今後の生活に余裕が生まれるからね」

 どうやら姫紀は現状初期装備の服装が気に食わないらしい。確かに、プレイヤーは白いシャツと茶色のズボンにブーツと、みんな同じだ。シンプルで動きやすいが、少々ダサいかもしれない。

 次にキャサリンは現実的で、イベント報酬にメニ―を選ぶとのことだった。確かにメニ―があれば生活は豊かになり、余裕が生まれる。プレイヤーはみんな基本的に物が足りていない現状、金銭を選ぶのもありだろう。

「ルインさんは報酬を何にする予定ですか?」

 すると、姫紀が俺にイベント報酬をどうするのか訊いてくる。未だイベントの報酬内容は不明だが、とりあえず俺の欲しい物を無難に応えることにした。

「そうだな。俺も姫紀と同じで服や装備だな。それと、クリスタルブレスのこともあるし、CPが増やせれば増やしたいところだ」

 実はそれ以外にもスキル枠を増やしたかったが、そこは言えば不思議に思われるので、言わないでおく。

 ちなみに欲しい服や装備の目的は主に防御面の向上であり、姫紀は俺とは違いファッション的に服が欲しいようだが、俺はより強敵との戦闘を楽しむために欲している。

 それに加え、俺のラーニングは攻撃を受けなければ効果が発動しないため、服や装備で防御面を底上げする必要があった。

「そうなんですね! 今度僕と是非服の見せあいをしましょうね!」
「あ、ああ」

 俺の回答が嬉しかったのか、そう言って姫紀が俺の両手を掴んで喜んだ。

「ぶひゃひゃ。ルインたんと姫紀たん尊いんだなぁ!」
「……あんた、そのよこしまな瞳を二人に向けるのをよしな」
「なっ!? ぼ、僕ちんはけ、決して二人の間に挟まりたいなんて思っていないんだなぁ!?」
「奥平、あんた……」

 奥平が何か言っているようだが、俺は聞いていないことにした。姫紀はおしゃれ仲間を見つけたと喜び自分の世界に入り込んでいるので、奥平の言葉は耳に入っていないようだ。

 そんなやり取りをしていると、控室の巨大モニターの画面が急に切り替わった。

『がはは! 第二試合終了だ! 』
『結果はユニィと下僕たち☆彡の勝利だよ! おめでとう!』
『前半戦順位の高いパーティがまたもや勝利したな!』
『やっぱり、多くのEPを稼いだということは、それだけ強いってことだよね!』

 どうやら第二試合が終了したようであり、第二試合は前半戦で二位のユニィと下僕たち☆彡が勝利したようだった。

『がはは! という訳で、次は第三試合だ!』
『第三試合は、アブソリュートドラグーンVS臨時パーティ(仮)だよッ!』
『後半戦四位はEPが半分になるから、死ぬ気で頑張れよ! がはは!』
『第三試合からチームデスマッチになるから、仲間との連携を大事にねッ!』

 最後にそうナビ子が言葉を残すと、巨大モニターの画面が再び消える。第三試合が始まったのだろう。

 次の試合はチームデスマッチか。名称からして不穏だが、ナビ子は仲間との連携が大事だと言っていた。それを考えれば、俺たちはその点問題はないだろう。

 これまでの前半戦の試練では、上手く連携して乗り越えてきたという自負がある。だがしかし、それは俺たちの対戦相手であるユニィと下僕たち☆彡も同様かもしれない。

 改めて、連携について話あっておいた方がいいか。

 そう思った俺は、三人と連携についてしばらく話し合った。そして、到頭時間がやってくる。


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