小説

028 打ち上げられた魚

「あれは……」 次のステージに来て早々目に入ってきたのは、全長三メートルはあろう巨大な青魚だ。その先端には、三又槍のような角を生やしている。「トライデントフィッシュなんだな」 奥平が青魚の名称を口にした。見た目通りの名前をしたモンスターのよ…

026 赤鬼の小太刀

「流石に焦りました」「今回も危なかったさね」「ぶひゅぅ。ひどい目に遭ったんだなぁ」 待合室に戻ってくると、パーティメンバーの面々は疲れたように言葉を口にした。「確かに、第二試練は疲れたな」 第一試練とはまた違った疲労感であり、第三試練へとこ…

025 猛攻のオーガ

「グガァアア!!」 オーガの猛攻が続く、何とかパリィでやり過ごすが、現状を維持すれば消耗戦になってしまう。そうなれば、先にダメになるのは俺の方だった。 くそ、向こうも体力の消費は激しいはずだが、やはりモンスター。人間とは基本的な体力が違い過…

024 ここは俺に任せて先に行け!

「なんだいありゃ……」「ひぃっ!」「あ、あれはオーガなんだな!」 奥平がモンスター眼鏡で鬼の名称を叫ぶ。その正体は、オーガというモンスターだった。 だめだ。あいつはヤバすぎる。体中が逃げろと本能的に叫んでいる。だが、それでも……。「あれはど…

023 宝箱の中身

 何が起きてもおかしくはない。 そう考えた俺は、即座に何が起きてもいいように身構える。だが、しばらく経っても特に変化はなく、罠が発動した様子は見られなかった。「ぶひゃひゃ! お宝なんだな!」 すると、奥平が何やら一枚のカードを手に歓喜する。…

022 第二の試練『勇気の吊り橋』

「場合によっては、敵を倒すよりも先に吊り橋の死守を優先する必要がある」「確かにそうですね。落ちちゃったら終わりなわけですし」 むしろ、敵よりも吊り橋の死守をメインにしてもいいくらいだ。「むむむ、僕ちんの火魔法イターラじゃ吊り橋の縄を燃やして…

021 奥平の秘密と第二試練決定

「僕ちんの最強伝説の始まりなんだなぁ!!」 待合室に戻ってくると早々、奥平がどや顔で自画自賛をし始めた。 確かに最後役に立ったのは認めるが、目の前のこいつを見ていると、何だか釈然としないな……。「あんたが凄いのは分かったよ。けれど、少しは落…

030 幸せの温もり

「な、何を突然言っているんだ!?」 白羽の言葉に、黒栖は思わずそう言葉を返す。しかし、それに対して白羽は一歩も引く気はない。「私は本気だよ? だってね、記憶を思い出した事で、今がどれだけ幸せな時間なのか気がついたの。だから、その幸せを少しで…

029 繋がった記憶

「白羽、もう大丈夫なのか!」 黒栖はソファから立ち上がり、白羽と向き合う。すると黒栖は、白羽の様子がいつもとはどこか違うような、そんな違和感がした。「黒栖君……あなたは本当に黒栖君なの?」「え?」 白羽が問い掛けてきた内容は、そんな突拍子も…

028 戦う理由

『あの方は、試練を司っておる。それによる報酬が、先か後かの違いはあるがの』「それはどういう……」 どす黒い長剣が話す内容に、黒栖はとてつもない嫌な予感がしていた。試練と報酬。では、この地獄のような現状とは――『お主も気がついたであろう。そう…

027 どす黒い長剣

 白羽が気を失うとそれに合わせたかのように、残りの球体が消滅する。そしてその場に残されたのは、あのどす黒い長剣だけだった。「クソッ、どうすれば」 黒栖は白羽を抱きかかえながら、いったいどうなってしまうのかという、|漠然《ばくぜん》とした不安…