小説

003 突然の襲撃者

「エレティア・レイマーズ。お前にルドライナ枢機卿に嫁がれると面倒なんだ。俺の出世のためにも死んでくれるよな?」 突然現れた騎士風の男はそう言って剣を抜くが、先に動いた者がいた。「あ“あ“ぁああ!!」「なっ!? ぐべぇ!?」 信じられない速度…

002 称号スキル

≪ゾンビシスター『エレティア・レイマーズ』に支配契約を実行致しますか?≫ 実際に声が聞こえたわけじゃない。けれども、それは確かに俺の脳内に浮かび上がっていた。 何だこれは? 支配契約? 訳が分からないが……。 突然のことに混乱してしまうが、…

005 偽装された部分

 気が付けば、俺は何もない六畳間、ホームに戻ってきていた。 玄関でブーツを脱ぎ、部屋中央で胡坐をかく。 俺が|男の子《・・・》なのは当たり前だろう? もしかしてナビ子はビッチなのか? そう思うと俺はナビ子への幻滅を隠せない。 贔屓してくれた…

004 チュートリアル後半

「いやいや、終わってないからねッ! 君、生き返ってるから」「あ……本当だ」 気が付けば、俺はまた草原に立っていた。近くにはナビ子もいる。ちなみにクリスタルドラゴンは影も形もなく、その痕跡も消えている。「あれ。あれれ? 君、精神ぶっ壊れてない…

003 チュートリアル前半

 視界に広がるのは、窓の外から見えた光景と酷似した何もない草原地帯と、一人の少女……。 少女!? ぱっと見十代半ばの少女は、ポロシャツにホットパンツ、キャップ帽とすべて白で統一されており、黒いショートヘアーと特徴的な紅い瞳をした美少女だった…

002 ワンルーム

「んあ?」 目が覚めると、俺は何もない部屋にいた。 といっても、先ほどの白い空間とは違い、マンションの一室といった感じだ。「ここはどこだ?」 部屋の見渡せば、ドアが一つ、蛇口しかないキッチンらしき流し台。玄関と思われる場所には青い魔法陣があ…

004 並行世界での戦い

 黒栖、いや、デスハザードの視界には、見覚えのある教室が映り込んでいた。 茜色に染まる空からは、光が差し込んでいる。「なっ!?」「う、嘘……」 すると、不意に声を駆けられた。デスハザードは左方へと体を向ける。そこには多少癖のある黒髪に、僅か…

003 嵐の前の静けさ

 黒栖は自分の通う高校、|陸央《りくおう》高等学校から、徒歩二十分のところにある1Kマンションの二階に住んでいる。 あれから無事に帰宅した黒栖は、ドアポストに入っている封筒を手に取った。 そこには、数枚の一万円札が入っている。これは異世界に…

002 宿命の始まり

 場が沈黙する。部外者のいない通学路に、|黒栖《くろす》と|白羽《しろは》を観察するかの|如《ごと》く、デスハザードの白い単眼模様が二人を見つめていた。 それはほんの僅かであるが、黒栖と白羽には永遠に感じられる。 その中で、黒栖はこの状況に…

違法神を狩る執行神、異世界と地球ダンジョンブームに今日もため息を吐く。

「あなたには異世界へと召喚される代わりに、好きな能力を授けましょう」 傲慢にも僕にそう言って空中から見下す存在がいる。当然それは女神なんだけれども、まるで虫を見るような眼だ。「いえ、別に能力はいりませんよ」「なに?」「他に欲しいものがあるの…

サブヒロインのその後を考えたら悲しくなった。

「完結した……くそがッ!」 俺は嘆くようにそう叫ぶと、手に持った漫画本『モブの俺が高根の花を振り向かせたくて』の12巻を床に叩きつけた。(王道恋愛漫画だもんな。ヒロインと結ばれるだろうとはわかっていたけど、主人公をずっと支えてきた幼馴染が報…

過去の俺から今の俺へ。今の俺から未来の俺へ。

「はぁ……」 ため息が不意に出る。たった今、俺は二十六歳になってしまった。二十歳を過ぎてからは早いとはよく言うが、実際あっという間だ。これでは三十を迎えるのもそう遅くはないだろう。「まずい……本当にこれはまずいな」 現実を逃避するかのように…