小説

025 その者の末路

「おいおい、まだ死ぬんじゃねえぜ! てめえには、まだ絶望してもらうんだからな!」「ぐあっ!」 ゴタロウはそう言って、黒栖からどす黒い長剣を抜き取ると共に蹴りを放つ。黒栖は抵抗できず、地面へと転がった。「あぁ、いい気分だぜ! この剣は最高だ!…

024 黒栖VS復讐者

「てめぇ、俺から逃げられると思っている訳じゃないだろうな? 俺はお前を絶対に許さねえ。例え逃げ続けたとしても、お前を追い続けてやる」 ゴタロウが校庭に辿り着くと、額に青筋を浮かべながら、黒栖にそう言い放つ。「そうか、だがもう逃げないから安心…

023 二人の誓い

「おらッ! フレアボム!」 初手を放ったのは、ゴタロウだ。火の魔法を有しているのか、左手からバスケットボール程の火の玉が黒栖めがけて飛んでくる。「白羽、飛ぶぞ!」「え!?」 だが、それをわざわざ迎え撃つ気は黒栖にはない。白羽の手を握ると、手…

022 因果は巡る

 二回目の並行世界を経て、その翌日の土曜日黒栖と白羽は、現在商店街に来ていた。 その道中、白羽がとあるおしゃれなカフェが気になり、今は黒栖と共に休憩中だ。もちろんそのおしゃれなカフェとは、以前黒栖が姫紀と来ていた所である。 白羽が注文したコ…

021 復讐を願う者

 そこは、砂漠地帯だった。肌を焼くような暑さに、砂丘以外には変化のとぼしい場所。人が生きるには、厳しい環境だ。 しかし、その過酷な砂漠地帯に、三人の男女がいた。そして、そのうちの一人、尖ったような硬い髪質の茶髪に、悪戯好きに見える顔立ちをし…

020 盗賊の頭

 何でこんなところに獣人の子供が……って普通に考えたら盗賊に捕まったんだろうな。 獣人の子供たちは、檻の中ですやすやと眠っているようだった。その首には、見覚えのある首輪がされている。 あの首輪は、確か獣人集団が付けていたものと似ているが、同…

019 盗賊の塒

 ホームを経由して盗賊がいると思われる森へと俺はやってきた。 確か、あの盗賊の話ではあと八人仲間がいるんだよな。 潜んでいるであろう人数を思い浮かべながら、盗賊が仲間のいる場所を指さしていた方角を見つめる。森を出るとき、その盗賊が指さした逆…

018 満腹と浅い眠り

 ……もう満腹だな。 あれからひたすら素振りをしていた俺は、夕食時になったこともあり宿屋の一階で食事をしていた。出てきた献立は、野菜のスープに肉の炒め物、それに少々固いパンである。内容はシンプルだが、量だけは多い。 普通の二倍はあるな。だが…

017 鳥のゆりかご亭

 ここがルチアーノの紹介してくれた宿屋か。 大通りから少し外れた場所にあるが、二階建ての立派な宿屋だった。看板には、宿屋の名称である鳥のゆりかご亭という文字が記されている。「いらっしゃい。宿泊かい?」「はい、とりあえず三泊頼みます。それと、…

016 小競り合い

「おう。お前凄い力持ちなんだな!」「武器を持っていないところを見るに格闘家か?」 俺が木箱を運んでいると、不意に若い冒険者二人から声をかけられた。「ん? いや、格闘家ではないな」 急になんだ? それよりも、木箱運べよ。 誰がいくつ運んでも全…

015 初依頼

「うん。これなんかどうかな。今近い時間帯ではこれがお勧めだよ」「倉庫から別の倉庫への荷移しか」 受付のカウンターに戻ると、ルチアーノが早速依頼を勧めてくる。戦闘系の依頼だと思っていたので、少し腑に落ちない。ちなみにだが、冒険者のルールなどの…

014 契約冒険者について

 契約冒険者? なんだそれは? そのような制度があるという話は、盗賊の男からは訊いていなかった。「ああ、僕の契約冒険者になれば、依頼の紹介をしてあげるし、ランクの昇給審査も通りやすくなるよ。他にも、メリットはたくさんあるんだ」 そこだけの部…