小説

035 絶望的な状況

 現れたデスハザードを確認した瞬間、黒栖は勝てないことを悟り、白羽を連れて転移する。「無駄だ」「諦めろ」 しかし、デスハザードは当然追ってくる。|追撃者《チェイサー》の能力を使い、即座に居場所を特定されてしまうのだ。 一対一でもぎりぎりの戦…

034 幸せなひと時

 並行世界で白羽を殺すことができないまま、黒栖は元の世界にある学校の屋上に戻ってきてしまった。 身体からはタイムリミットを過ぎたことによるペナルティなのか、覚醒エネルギーが多く失われてる。それに伴って疲労感が襲い、肉体的にも、そして精神的に…

033 タイムリミット

「――ッ、はぁ、はぁ……」 気がつけばデスハザードは、この並行世界に来る前にいた場所、学校の屋上にいた。隔離世界にいる以上、周囲に人の気配は存在しない。「無理だ……俺には、できない……」 そう言葉を口にして、頭を抱えるデスハザードは、どうし…

032 壊れた世界

 黒栖がデスハザードとして、並行世界に姿を現す。周囲を見渡すと、どうやらその場所は白羽の自宅のようだった。「ん?」 しかしそこで、デスハザードは何とも言えない違和感を覚える。いや、違和感と言うよりも、確実におかしかった。白羽の自宅には、見覚…

031 技の開発

「|次元の略奪者《ディメンションスナッチ》」 黒栖はその言葉と共に右手を前方に振るうと、能力が発動しておよそ五メートル離れた場所にあるもの、クマのぬいぐるみが一瞬にして黒栖の右手に収まる。「わっ、すごい!」「そうか?」「うん!」 それを間近…

030 新たな事件

 目が覚めると、俺はエレティアに膝枕されていた。近くにはベサルもおり、こちらを覗き込んでいる。「カミ!」「あんちゃん!!」 俺の意識が戻ったことに気が付くと、二人はそんな風に声を上げて喜びを現す。「……あんちゃん、ってのはなんだ?」 ベサル…

029 買い物と緊急事態

 はぁ、また懐が寂しくなったな。 現在俺は必要物資を買いそろえ、防具を新しく購入していた。それが済んだことで、今は宿屋の自室に戻ってきている。 ホームに戻って金銭を取りに戻ったが、まさかほとんど使ってしまうとは……。 溜息が出てしまうが、買…

028 依頼の報酬

「二人とも、ここは目立つから奥に行こうか」「わかった」「はい」 アグムとジットが衛兵に連れていかれた後、俺とブラウはルチアーノにそう言われて、奥の部屋に行くことになった。 思ったより目だったようだ。特に、ブラウが叫んだ時の注目は凄かった。 …

027 冒険者ギルドでの騒動

 道中は問題なく進んでいた。途中自己紹介をしていなかったことに気が付き、俺の名乗りを聞きながらも、後ろをブラウが付いてくる。ただし、ブラウは足を短剣で斬られた傷があるので、若干足が遅い。 麻痺は流れで治したが、傷を治してわざわざ自分の手札を…

026 獣人差別と魔素

 改めて何を訊こうかと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは獣人の差別についてだった。そのことをブラウに質問をしてみる。「俺はこの国出身じゃなくて詳しくはないんだが、獣人は何故差別されているんだ?」「え? ……それは、この国が人族至上主義だから…

025 東の森

「ふッ」「ギュビビッ!?」 俺は目の前に現れたグリーンキャタピラーを両断した。小型犬ほどの大きな芋虫ではあるが、吐かれる糸さえ気を付ければ相手にはならない。 芋虫だけに動きが遅いのもあって、楽に倒せるな。 倒されたグリーンキャタピラーは光り…

024 常時依頼

 俺が冒険者ギルドにやってくると、担当であるルチアーノの元へと向かう。「やあ、いらっしゃい。早速依頼を受けるかい?」「ああ、今日は討伐系を頼みたいのだが」「討伐系? おや、どうやら剣を手に入れたようだね。武器無しなら厳しいと思ったけれど、持…