小説

014 契約冒険者について

 契約冒険者? なんだそれは? そのような制度があるという話は、盗賊の男からは訊いていなかった。「ああ、僕の契約冒険者になれば、依頼の紹介をしてあげるし、ランクの昇給審査も通りやすくなるよ。他にも、メリットはたくさんあるんだ」 そこだけの部…

013 G級試験

 練習場の一角にて、俺は模擬戦を行うことになった。目の前にいるのは、冒険者ギルドの教官だというガイラスという男だ。 相手も同じ木剣か、俺に合わせているのか? そんなことを思いながら、互いに少し距離を取る。「ミカゲとかいったな? まぁ気軽にか…

012 冒険者ギルド

 エレバスの町は、活気に満ち溢れている。行く人々は明るく、商売人は声高らかに客を呼び込んでいた。 すごいな……何というか、人々の表情が明るい。未来に希望があるように感じる。 元居た世界では、行く先々で暗い表情の人が多かった。といっても、俺の…

011 異世界初の町へ

 現在俺は、再び街道を歩いている。手荷物は特にない。石刀はホームに置いて来ているが、疑似天地創造で創り出したので、状況によっては即座に呼び出すことができる。 それにしても、ホームに金銭の半分を置いていたのが功を奏したな。 人外集団に金銭を奪…

020 数百の矢の雨

 流石にあの数が一気に来るとすれば、避け切れる自信がないぞ。 俺は頭上の光景に思わず舌打ちをしてしまう。更に、数百の矢は直ぐには落ちてこず、姫紀の作り出した光の結界が消えるのを待っているようだった。「この試練を考えた奴は、クリアーさせる気が…

019 第一の試練『千の矢』

 試練が決定されると、少しして俺を含めたパーティメンバーは、見知らぬ荒野に転移していた。周囲には山と大小さまざまな岩が転がっている。 そして上空には、大きな文字でカウントダウンが開始されており、十秒後には試練が始まるようだった。「とにかくみ…

018 初めてのイベント

 時間が来ると、俺は先ほどのスタジアムではなく、テーブルや向かい合わせのソファー、壁掛けの巨大モニターなどが設置されている待合室にいた。 ここは……。 周囲を見れば、俺と同じように現れたプレイヤーらしき人物が三人いる。 まずは左に見えるのは…

017 夕食の時間

 無事借りた木製のナイフ二本を返却してホームに帰還すると、いつもの通り汚れが消え去り、更には多少斬り飛ばされた耳や尻尾が再生していることに気が付く。 もしやと思って直接確かめてみたが、本当に再生しているとは……だから斬り飛ばした張本人である…

016 練習相手

 クエストを始めると、視界にはグラウンドの茶色い地面が広がっていた。右方向には巨大な屋敷があり、練習相手というのが富豪か貴族なのではないかと予想してしまう。 これで相手が貴族の子供とかだったら面倒くさいなぁ……。 一瞬このクエストはハズレで…

015 ショップ再び

 ホームに戻ってくると、オークの返り血で真っ赤だった衣服の汚れが嘘のように無くなっていた。 ふう、盗賊の討伐から帰還した時も思ったが、衣服や装備品がきれいになるのは助かるな。 ブーツを脱ぎ六畳間に上がると、窓辺の椅子に腰かける。 今回は儲か…

014 オーク討伐

 目の前に広がるのは、長く続く街道に草原地帯。討伐目標のオークはおろか、人の姿も見えない。 さて、制限時間は一時間しかないし、さっさとオークを見つけないとな。それと、今度こそクリスタルブレスを実際に使って威力を確かめることも忘れないようにし…

013 チャラ男の告白

「……何か用?」 俺はいつの間にか観客席まで移動してきたチャラ男を前にして、若干嫌な予感がしつつもそう返事をする。「俺ちゃんが勝つところ見た見た? ちょーかっこ良かったっしょ? つまり、どんな奴が来ても俺ちゃんなら君のこと守ってあげらちゃう…