小説

015 二人の想い

「あの女の子はいないんだね」「っああ、あいつは金で雇っただけだ」 入って早々の言葉に、黒栖は慌ててそう答えた。しかし、それが誤解を招く結果となる。「え……お金で作った関係……?」「い、いや、違うぞ! 何か勘違いをしている!」「勘違いって………

014 自業自得

 隔離された場所から無事に戻って来た黒栖は、元々いた公園のベンチに座っている。 戦いには勝利したが、これで最悪な事態が二つも判明してしまった。 それは、デスハザードが現れるのは一度だけでは無かった事、そして、白羽と離れていても現れるという事…

013 校庭での死闘

 黒栖は、自らが通う高校、|陸央《りくおう》高等学校の校庭に転移してきた。 隔離された人のいないその場所に、デスハザードの姿が無い。「くたばれ!」「!?」 その瞬間、背後からデスハザードの声と共に手刀が迫る。デスハザードは、黒栖が転移してく…

012 能力値の割り振り

 黒栖は使い慣れてきた覚醒エネルギーを纏う。黄金の光が黒栖の身体をを包み込み、能力を引き出す。「くっ!」「死ねぇ!」 正面から受け止めたデスハザードの手刀。その戦い方は、黒栖の知るデスハザードとは、少々違う感じがした。 そう、デスハザードも…

011 選択の結果

 自宅を出た黒栖は、現在白羽を追いかけている。  白羽を追いかけて、いったいどうするというのか。追いかけないのが正解のはずだと、黒栖は自分にそう問いかける。 しかし、理性ではそう分かっていながら、実際は逆のことをしている。 追いかけて、白羽…

010 スラッシュの確認

 なるほどな。そんなうまい話はないという訳か。ダンジョンで手に入るアイテムを作り出せれば、怖い物なんて無いに等しいだろうしな。 ダンジョンから時折見つかるアイテムは、物によってその価値はユニーク称号所持者に迫る物まで存在していた。それを自由…

009 力の確認

 元はホームに戻るために用意したが、今回はいい方向に転がったな。 そう思いながら俺は自らの手の平に|創り出した《・・・・》石ころへと視線を移す。それは、転送/召喚の称号スキルでホームと行き来するために必要なものだった。 一度ホームに戻ってし…

008 遠い記憶と核

 深い、闇の中に俺はいた。いや、これは夢なのだろうか。灰色の映像が映し出されている。「君の両親は立派だったよ。ダンジョンに迷い込んだ子供たちをモンスターから命がけで助けた上に、そのまま|囮《おとり》になって皆を助けたんだから」 それは、遠い…

007 街道での事件

 道中は至って平和だった。街道の端からモンスターがやってくることは無いし、人とすれ違うこともない。 意外と人通りは少ないのかもしれないな。 当初街道で人とそれなりにすれ違うのではないかと警戒していた。それはもちろん、エレティアがゾンビだと気…

006 移動手段

 目が覚めると、そこは洞窟の中だった。 ここは……ああ、そうか。ダンジョンを作ったんだっけ。「あー」「おはようエレティア」 横に視線を向けると、そこにはエレティアが昨日と同じ場所に立っていた。ゾンビだから寝る必要が無いのかもしれない。そもそ…

010 ショップと容姿

 ここは……すごいな。 目の前に広がったのは、特大ショッピングモールだった。 ショップっていうからもっと狭いのをイメージしたのだが、これは良い意味で予想を裏切られたな。 前後左右に伸びていく長い通路に、上を向けば吹き抜けになっていて上階が何…

009 クエストの収穫

 無事に戻ってきたようだな。 視界が戻ると、俺はホームである六畳間の部屋にいた。「……はぁ、そこまでうまくはいかないか」 戻ってくると同時に、俺は左手に掴んでいた大きめの袋が無くなっていることに気が付いた。 どうやら、持って帰れるといっても…