小説

005 最初の町と、浮かれたプレイヤーたち。

  町に入ると、まず見えてくるのは大通りであり、左右には西洋風の建物が並んでいる。人の活気も想像以上であり、大通りを行く人の数は、まるでどこかのテーマパークを|彷彿《ほうふつ》とさせた。 活気がある……いや、ありすぎるのか。プレイヤーの数が…

004 街道と町の門

 あれから廃村を後にした俺は、現在街道へと辿り着いていた。当然、道中にはVRMMO風と|謳《うた》っていることだけはあり、魔物が一定の範囲にある程度は存在している。「シャドーネイル」「キュイッ!?」   こうして今も、角の生やした兎、ホーン…

003 血の誘惑と美少年

「助カッタゼ!」「そう、こっちはいい迷惑だった」 ゴブリンのプレイヤー、プレイヤーネーム|白星銀河《シラボシギンガ》を縄から解く。「アー、キャラクターメイキングノランダムノセイデ、酷イ目ニ合ッタケド、ソレ以上ニ、超カワイイヒロインマジキタコ…

002 最初から豪運が仕事していない件。

「ここは……ん?」 視界が戻ると、そこは廃屋と化した建物の中だった。机や椅子には埃が被り、しばらく人が住んでいないことを容易に想像させる。しかし、よく見ると一部不自然に埃のない箇所がところどころあり、床には無数の足跡があった。 ここには最近…

001 異世界帰りに拉致られる

 俺の名前は|如月《きさらぎ》レト。ごく普通の高校一年生だったが、ある日異世界に召喚され、いろいろあってTSヴァンパイアの真祖になったり、教会に追い回されながらも何とか邪神を仲間と倒し、さきほど涙ながらに別れを告げて、ほぼ全ての力を代償にこ…

空き缶を蹴飛ばせば世界は終わる。

 それは、雪の降る寒い日だ。 俺は苛ついていた。バイトの面接には落ちるし、停めていた自転車は盗まれ、しまいに犬の糞まで踏む。 泣きっ面に蜂とはまさにこのことだ。 だから、転がっていた空き缶を何となく蹴飛ばしてしまった。 今日はついていない。…

氷結世界のロルド

 世界は氷に包まれていた。 草木や家、人々までもが氷の彫刻となり果て、最早国々すらもまともに機能はしていない。 まるで水面が氷結するかのように、世界は氷で満ちていた。 そんな氷結世界のとある村に、一人の男が目を覚ます。「ここは……」 男の名…

048 最終試合とこれから

 準備が完了すると、俺たちはステージ中央へと移動した。目の前には、対戦相手であるユニィと下僕たち☆彡のメンバー四人がいる。「あんたたち、速攻で終わらすわよ!」「もちろんだよユニィちゃん!」「へへへ楽勝だぜ!」「ユニィちゃんの力があれば問題な…

047 最後の試合前

 あれから第三試合が無事に終了し、アブソリュートドラグーンVS臨時パーティ(仮)は、前半戦順位の低いアブソリュートドラグーンがまさかの勝利を収めたらしい。 詳しい試合内容は控室にいて分からなかったが、おそらく峰元が活躍したのだろう。それか、…

046 試合後のひと時

 第一試合が終わると、俺たちは控室のような場所にいた。どうやら、他パーティの試合は見ることが出来ないらしい。 まあ、相手の試合を見て固有スキルが分かってしまえば、面白味に欠けると思われたのだろう。 そんなことを思いつつ、俺は控室のベンチに座…

045 VSアブソリュートドラグーン②

「ぶひゅ! 美人さんなんだなぁ! でも、僕ちん美人さんでも手加減しないんだな!」「はぁ、別にどうでもいい。それよりも、さっさとこのイベントを終わらせたいわ……」 奥平は対戦相手の美貌に目を奪われて若干舞い上がるが、対する峰元という女性はどこ…