小説

004

 それにしても、この顔と声は便利だな。露店で購入の時は値引きしてくれるし、聞いたことは丁寧に教えてくれる。それも男女関係なく。 そう、俺の見た目は幼さを残す少女であり、声は愛らしく、長い銀色の髪は後ろで大きな三つ編みにしており、どこか眠そう…

003

「――というわけで、チュートリアルは以上となる。何か質問はあるか?」「いや、十分だ。いろいろ確認できて助かった」「そうか、ならもう言うことはないだろう。お主ならば大丈夫だとは思うが、たっしゃでな」 そうして、話を聞き終わってチュートリアルを…

002

「ん?」 目が覚めると、そこはまるで熱湯が煮えたぎるような音を鳴らす場所。溶岩地帯だった。暗っぽい岩が周囲に散乱している。「おう、目覚めたようじゃな」「誰だ?」 突然そう声をかけてきたのは、ずんぐりむっくりという言葉を表したような体系の老人…

001

 俺はいったい誰なのだろうか? それが最初に思ったことだった。 体が動かない暗闇の中、いや、|体の感覚《・・・・》のない暗闇の中で、俺はぼんやりとただ存在しているだけだというのに、そこに何の不快感も無く、負の感情すら湧き上がってはこない。 …

006 案内

 700万シルをストレージの中とはいえ、持ち運ぶ勇気は無く、俺は早速冒険者カードを利用して冒険者ギルドに預けた。「君のような稀人ばかりならいいのだが、あのような者もそれなりにいるとみて対応をすべきだな。では、私はこれで失礼する」「ここまであ…

005 奴隷商

「娘を助けていただきありがとうございました。遅れながら申しますが、私はこちらの冒険者ギルド職員をしておりますフィーネと言います。今は会計や依頼の仕分けなどを主にしておりますが、以前は受付嬢をしておりました」フィーネさんはそういうと、冒険者登…

004 能力の確認

≪稀人で初めてPVPに勝利したことにより、称号『勝利者』を獲得しました≫≪アルカナ『吊るされる男』の能力『忍耐の試練』により、称号『勝利者』は『連勝者』に向上しました≫視界が戻ると同時に、そんなアナウンスが聞こえてくる。 そして、目の前には…

003 稀人の少年

 稀人の少年は自分の世界に入っているのかこちらには気がついておらず、偶然空いていた正面の受付まで向かうと再び笑みを浮かべる。受付の女性はその表情に若干引き気味だ。 そんな時、一人の男性冒険者が少年に近づくと、右肩に軽く触れてこう言った。「お…

002 冒険者ギルドへ

 三人の子どもに案内されて街中を歩く。小さな広場を出ると、すぐそこには大通りがあり、その土の路上を沿う形で家々が並んでいる。 どうやら木造建築が多く、全体的に村から町に昇格したばかりという印象を受けた。 流石に歩道までは整備されていないか。…

001 現実からの逃避

 日々の疲労に嫌気がさしたことは無いだろうか? アットホームな職場と言いつつ、実際は奴隷労働所だと思ったことは? そう思ってしまった時、自己防衛の為だろうか、現実逃避をしてしまう。それはもう、自分の事を誰も知らない、しがらみの無い世界に行き…

004

 糸目の男の鍛冶屋に向かう道中、エフィンは見た目平然を装っていたが、内心ではかなり焦っていた。 何故ならば、この錬金鍛冶術というユニーク級スキルを見せることによって、利用されたり、はたまた奴隷として売られるかもしれないからであり、その場合エ…

003

 大男に路地裏へと連れてこられたエフィンは、早速手に持っていた袋を奪われる。「っち、やっぱりゴミしか入っていねえか」 大男は中身を確認するとそう言って、エフィンがせっかく集めた物ごと、その袋を適当な場所へ投げ捨てた。「あぁ!」 エフィンはそ…