長編

016 練習相手

 クエストを始めると、視界にはグラウンドの茶色い地面が広がっていた。右方向には巨大な屋敷があり、練習相手というのが富豪か貴族なのではないかと予想してしまう。 これで相手が貴族の子供とかだったら面倒くさいなぁ……。 一瞬このクエストはハズレで…

015 ショップ再び

 ホームに戻ってくると、オークの返り血で真っ赤だった衣服の汚れが嘘のように無くなっていた。 ふう、盗賊の討伐から帰還した時も思ったが、衣服や装備品がきれいになるのは助かるな。 ブーツを脱ぎ六畳間に上がると、窓辺の椅子に腰かける。 今回は儲か…

014 オーク討伐

 目の前に広がるのは、長く続く街道に草原地帯。討伐目標のオークはおろか、人の姿も見えない。 さて、制限時間は一時間しかないし、さっさとオークを見つけないとな。それと、今度こそクリスタルブレスを実際に使って威力を確かめることも忘れないようにし…

013 チャラ男の告白

「……何か用?」 俺はいつの間にか観客席まで移動してきたチャラ男を前にして、若干嫌な予感がしつつもそう返事をする。「俺ちゃんが勝つところ見た見た? ちょーかっこ良かったっしょ? つまり、どんな奴が来ても俺ちゃんなら君のこと守ってあげらちゃう…

012 チャラ男VS命斗

 観戦席に移動すると、そこはコロッセオのようになっていた。「まずは逃げずにここまでついてきたことを褒めてやろう!」「御託はいいからさっさと始めろキンキラ小僧!」 中央にある円形の地面には、命斗とチャラ男の戦いが間もなく始まりそうだったが、そ…

011 男にナンパされる男の娘

「俺ちゃんの名前は|遊野チャラ男《あそびのちゃらお》! こう見えてちょー誠実! ねえねえ、かわい子ちゃんの名前、俺ちゃんに教えてくれなーい?」 なんだこいつは……。 俺は突然すぎる出来事に戸惑いを隠せない。 そもそもチャラ男って本名なのか?…

020 それぞれの覚悟

 デスハザードとしては、二度目となる並行世界。 その場所は河川敷であり、川を越えれば、すぐそこは隣町である。 目の前には当然、並行世界の黒栖と白羽がいた。既に|疲弊《ひへい》しきっているのか、並行世界の黒栖の息は荒く、まるで先ほどまで戦って…

019 最悪の呼び出し

 教室に入ってからしばらく、黒栖の周囲は大変騒がしかった。 というのも、以前金魚の糞の|如《ごと》くつきまとってきた者たちと、旺斗を見限って黒栖に鞍替えしようとした者たちが、黒栖に媚びを売って来たのだ。 最早、旺斗のクラスカースとは地に落ち…

018 道化の男

 翌朝、黒栖は何事もなく目が覚めると、即座に自宅へと帰ろうとしたが、そこは白羽に止められ、朝食をごちそうになる。 食パンに、生ハム、サラダとスクランブルエッグなど、手軽なものだが、どれも美味であり、黒栖は瞬く間に完食した。 その後、白羽がお…

017 一つ屋根の下

「それでその、今日は私が黒栖君の家に泊まるって事でいいのかな?」 白羽は、緊張しながらも、そう話を切り出す。今になって意識し始めたのか、つい周囲に視線を動かしてしまう。「いや、転移の事を考えれば、白羽の家の方がいいと思う」「そ、そうだね」 …

016 赤面の勘違い

 一つ問題が解決すれば、即座に次の問題が現れるのは、世の必然だろうか。「え? という事は、黒栖君はずっと私の事を監視していたの?」「あ、ああ」「もしかして、着替えやお風呂、それに、お、おトイレも……?」「待ってくれ、流石にそこまで覗いてはい…

015 二人の想い

「あの女の子はいないんだね」「っああ、あいつは金で雇っただけだ」 入って早々の言葉に、黒栖は慌ててそう答えた。しかし、それが誤解を招く結果となる。「え……お金で作った関係……?」「い、いや、違うぞ! 何か勘違いをしている!」「勘違いって………