長編

030 新たな事件

 目が覚めると、俺はエレティアに膝枕されていた。近くにはベサルもおり、こちらを覗き込んでいる。「カミ!」「あんちゃん!!」 俺の意識が戻ったことに気が付くと、二人はそんな風に声を上げて喜びを現す。「……あんちゃん、ってのはなんだ?」 ベサル…

029 買い物と緊急事態

 はぁ、また懐が寂しくなったな。 現在俺は必要物資を買いそろえ、防具を新しく購入していた。それが済んだことで、今は宿屋の自室に戻ってきている。 ホームに戻って金銭を取りに戻ったが、まさかほとんど使ってしまうとは……。 溜息が出てしまうが、買…

028 依頼の報酬

「二人とも、ここは目立つから奥に行こうか」「わかった」「はい」 アグムとジットが衛兵に連れていかれた後、俺とブラウはルチアーノにそう言われて、奥の部屋に行くことになった。 思ったより目だったようだ。特に、ブラウが叫んだ時の注目は凄かった。 …

027 冒険者ギルドでの騒動

 道中は問題なく進んでいた。途中自己紹介をしていなかったことに気が付き、俺の名乗りを聞きながらも、後ろをブラウが付いてくる。ただし、ブラウは足を短剣で斬られた傷があるので、若干足が遅い。 麻痺は流れで治したが、傷を治してわざわざ自分の手札を…

026 獣人差別と魔素

 改めて何を訊こうかと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは獣人の差別についてだった。そのことをブラウに質問をしてみる。「俺はこの国出身じゃなくて詳しくはないんだが、獣人は何故差別されているんだ?」「え? ……それは、この国が人族至上主義だから…

025 東の森

「ふッ」「ギュビビッ!?」 俺は目の前に現れたグリーンキャタピラーを両断した。小型犬ほどの大きな芋虫ではあるが、吐かれる糸さえ気を付ければ相手にはならない。 芋虫だけに動きが遅いのもあって、楽に倒せるな。 倒されたグリーンキャタピラーは光り…

024 常時依頼

 俺が冒険者ギルドにやってくると、担当であるルチアーノの元へと向かう。「やあ、いらっしゃい。早速依頼を受けるかい?」「ああ、今日は討伐系を頼みたいのだが」「討伐系? おや、どうやら剣を手に入れたようだね。武器無しなら厳しいと思ったけれど、持…

023 保護をする理由

 魔力をかなり使ってしまったな。維持するための魔力も馬鹿にならない。だが、戦闘で使う分にはまだ余裕はありそうだ。 途中からホームの拡張が楽しくなってしまい、魔力を湯水のように使ってしまった。しばらくホームの拡張は控えた方がいいだろう。 さて…

022 移動と拡張作業

「それじゃあ、お前らを俺のホームに招待しようと思う」「ホーム?」 獣人が囚われていた部屋に戻ると、俺は早速そう切り出す。ベサルはそれに対し、若干不思議そうに訊き返してくる。「ああ、ホームだ。俺が拠点としている場所だが、安全は保証しよう。移動…

021 獣人の子供たち

 こいつは、似ている。俺と直接戦った獣人の男とそっくりだ。 俺はその偶然に驚く。しかし、だからといってやることは変わらない。むしろ好都合とさえ思えた。 あの獣人は強かったからな、こいつを保護しておけば役に立ちそうだ。「俺はミカゲだ。まあ落ち…

030 予想外の敵

「はぁ……」 五回戦目最後のステージ。どのような強敵が出てくるのかと、それなりにわくわくしていたのだが、目の前のこれが流石にない。「わっ、これ、僕でも知っているモンスターですよ!」「あたしゃもクエストで倒したさね」 姫紀とキャサリンも知って…

029 フレイムダイル

 ステージは残すところあと二つ。その四つ目まできたが、ようやく当たりが来たようだ。「な、なんだいありゃ」「ひっ!?」 全長約四メートルはありそうな巨大なワニ。それがステージ中央で存在感を放っていた。 あれは、ヤバそうだな。もしかしたらあのオ…