違法神を狩る執行神、異世界と地球ダンジョンブームに今日もため息を吐く。

「あなたには異世界へと召喚される代わりに、好きな能力を授けましょう」

 傲慢にも僕にそう言って空中から見下す存在がいる。当然それは女神なんだけれども、まるで虫を見るような眼だ。

「いえ、別に能力はいりませんよ」
「なに?」
「他に欲しいものがあるのです」

 僕の言葉に、女神は何かを察したのか、身体を隠すように自身の両手で抱きしめた。

「私がいくら美しいといっても、それはダメです。その目で見ることすら本来泣いて喜ぶものなのですよ」
「いえ、身体にも興味はありません」
「なんだと!?」

 おやおや、口調から素が出ていますね。そろそろ面倒なので仕事をしますか。

「では、本当に欲しいものをお伝えしますね。それは……」
「ヒュグッ!?」
「あなたの命です」

 そう言った瞬間、女神の口から血が吹きだす。視線を下げれば、女神の心臓のあった場所にぽっかりと穴が空いていますね。

「な……に……」
「無駄ですよ。修復はできません。あなたはそのまま死にますので」

 僕は抜き取った心臓を右手で掴むと、そのまま握り潰します。

「そ……んな……」

 そして、女神はそのまま息絶えました。

 やれやれ、女神殺しも面倒ですね。近頃異世界転生と称して、地球人を拉致監禁する違法神が後を絶ちません。

 自分の作った世界という箱庭に、一つの異分子を入れるというのが近頃神々のブームというのだから、実に嘆かわしいですね。

 こういう質の悪い違法神という烙印を押される神々たちは、僕のように地球人に変装しなければ、なかなか尻尾を出さないのも厄介です。

 そんなことを考えていると、不意にメッセージが届きました。

『ご苦労。女神№545414541485の始末が終わったようだな。次は最近はやり出した他神の世界にダンジョンを生み出す神を始末してくれ。それと、また地球が狙われたそうだ』
『了解いたしました。それはそうと、また地球ですか。これまで何回違法神を始末して時間を巻き戻したことやら』

 僕はつい愚痴を零してしまいます。神々の間でブームが起こると、違法だとわかっていても止まらないので質が悪いんですよね。

『そう愚痴るな。これからは地球にダンジョンを出現させる違法神はますます増えるだろう。今からそう言っても仕方がない』
『はい、そうですね。了解です』
『分かればよろしい。では頼んだぞ』

 そうして連絡が切れます。神でも社畜は厳しいですね。これならまだ力を持ちすぎた勇者を始末する方が楽しかった。神は似たり寄ったりで飽きてしまいます。

 僕は、そうして次の現場に向かいました。場所は、もちろん地球です。

「これは、少し遅かったようですね」

 見渡す限り荒廃した街並みに、いたるところに出現したダンジョンと、そこから溢れ出す魔物たちが跳梁跋扈ちょうりょうばっこしています。

 はぁ、急いだつもりでも、数年経っていることなんてざらにあるんですよね。

 周囲の様子を見れば、人間が魔法を使っていたり、身体に見合わない大剣を振り回したりなど、やりたい放題になっています。これは、早々に違法神を片付ける必要がありますね。

 僕はダンジョンの発生源である違法神を探します。

 うーむ、どうやら何かに擬態しているようですね。しかし、このパターンは既に156454目なので問題はありません。

 いつものパターンから予想し、少しでも違和感のある魔力の力場に転移します。すると案の定、そこには地球人の中でとびぬけた能力を持つであろう少年がいました。

 どうやら、あれが今回の主人公君のようですね。そして、その隣にいる少女。おそらくあれが違法神でしょう。

 主人公君の横というのは、ある意味一番の特等席です。それに加え、自分の気に喰わないルートに行けば、修正しやすいという利点もあり、更には擬態しているので僕のような存在に感知されにくいのですよね。

 まぁしかし、一度見つけ方を確立してしまえば、次からは楽勝なのですが。

「やあやあ、そこのお嬢さん。少々よろしいかな?」
「え……だれですか?」

 これはこれは、上手く化けているつもりなのでしょうね。実にあざとい仕草です。

「なんだお前? 用があるならまず俺に話せよ!」

 この主人公君は、どうやらオラオラ系のようですね。異世界だと王様とかに対して、普通にタメ語とか使うタイプです。

「邪魔です」
「グベッ!?」

 僕の言葉だけで、主人公君は地面の染みになりました。所詮は人間です。

「この気配! お前執行神だな!」
「おやおや、口調がかわいくないですね? 先ほどの方が好みでしたよ?」
「くそがっ! 死ね!」

 こちらに気が付いた違法神がそう言って襲い掛かってきますが、力量は既に把握しているので問題はありません。

「死ぬのはあなたの方ですよ」
「なに……グバギャッ!?」

 違法神は水風船のように破裂しました。襲い掛かるという行動自体が、自信を三流だと証明しているようなものなのですがね。

「さて、時間を巻き戻しましょう」

 違法神の始末が完了したので、地球の時間をダンジョン出現前まで巻き戻します。なので先ほど殺した主人公君も、全てを忘れて元通りということですね。

 やれやれ、毎回似たような仕事で飽きてきますが、これも仕事です。

 僕が戻りゆく地球を眺めていると、またしても連絡が届きました。

『よくやった。早速で悪いのだが、続けて同様のダンジョン系違法神の始末を頼む。今回はガチャとスキル強奪の抱き合わせだ。時間がかかれば、違法神が飽きて放置されるぞ。』
『了解です。それで、その地球は何番目の地球なのでしょいうか?』
『ああ、2546846548485番目の地球だ。よろしく頼む』
『了解』

 はぁ、いくら地球が人気だからって、量産しないでほしいものですね。それに、今回はダンジョンに加えてガチャとスキル強奪系ときましたか。主人公君に力を与えすぎると、途中で違法神は飽きて別の違法行為をするので厄介です。

 遅れれば、それだけ巻き戻すのが面倒になるので、僕は急ぎ足で現場に向かいました。

「やれやれ、またこのパターンですか」

 神々のブームとは本当に面倒ですね。


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