彼女殺しのデスハザード

018 道化の男

 翌朝、黒栖は何事もなく目が覚めると、即座に自宅へと帰ろうとしたが、そこは白羽に止められ、朝食をごちそうになる。 食パンに、生ハム、サラダとスクランブルエッグなど、手軽なものだが、どれも美味であり、黒栖は瞬く間に完食した。 その後、白羽がお…

017 一つ屋根の下

「それでその、今日は私が黒栖君の家に泊まるって事でいいのかな?」 白羽は、緊張しながらも、そう話を切り出す。今になって意識し始めたのか、つい周囲に視線を動かしてしまう。「いや、転移の事を考えれば、白羽の家の方がいいと思う」「そ、そうだね」 …

016 赤面の勘違い

 一つ問題が解決すれば、即座に次の問題が現れるのは、世の必然だろうか。「え? という事は、黒栖君はずっと私の事を監視していたの?」「あ、ああ」「もしかして、着替えやお風呂、それに、お、おトイレも……?」「待ってくれ、流石にそこまで覗いてはい…

015 二人の想い

「あの女の子はいないんだね」「っああ、あいつは金で雇っただけだ」 入って早々の言葉に、黒栖は慌ててそう答えた。しかし、それが誤解を招く結果となる。「え……お金で作った関係……?」「い、いや、違うぞ! 何か勘違いをしている!」「勘違いって………

014 自業自得

 隔離された場所から無事に戻って来た黒栖は、元々いた公園のベンチに座っている。 戦いには勝利したが、これで最悪な事態が二つも判明してしまった。 それは、デスハザードが現れるのは一度だけでは無かった事、そして、白羽と離れていても現れるという事…

013 校庭での死闘

 黒栖は、自らが通う高校、|陸央《りくおう》高等学校の校庭に転移してきた。 隔離された人のいないその場所に、デスハザードの姿が無い。「くたばれ!」「!?」 その瞬間、背後からデスハザードの声と共に手刀が迫る。デスハザードは、黒栖が転移してく…

012 能力値の割り振り

 黒栖は使い慣れてきた覚醒エネルギーを纏う。黄金の光が黒栖の身体をを包み込み、能力を引き出す。「くっ!」「死ねぇ!」 正面から受け止めたデスハザードの手刀。その戦い方は、黒栖の知るデスハザードとは、少々違う感じがした。 そう、デスハザードも…

011 選択の結果

 自宅を出た黒栖は、現在白羽を追いかけている。  白羽を追いかけて、いったいどうするというのか。追いかけないのが正解のはずだと、黒栖は自分にそう問いかける。 しかし、理性ではそう分かっていながら、実際は逆のことをしている。 追いかけて、白羽…

010 迫られる選択

「……」「……」 黒栖は|咄嗟《とっさ》の行動だったとはいえ、姫紀を抱き寄せた。その事に後悔はない。 しかし、今までに感じた事の無い、取り返しのつかない感情に襲われ、言葉を出すことができなかった。 白羽もあまりの出来事に、黙り込んでしまう。…

009 愚かなる閃き

 おしゃれなカフェに、|黒栖《くろす》と|姫紀《ひめき》は向かい合わせで座っていた。 姫紀はホイップクリームに、様々なフルーツが盛り合わせてあるコーヒーゼリーを、幸せそうに頬張っている。 そう、プリンではなく、コーヒーゼリーだ。このカフェの…

008 ドツボにはまる

 とあるビルの屋上に、黒栖はいた。 日はとうに過ぎ、今は翌日の昼過ぎだ。 何故このような場所にいるのか、黒栖もよくは理解していない。あえて言えば、心にぽっかりと穴が空いたようであり、それを紛らわすため、どこか高いところで風にあたりたかったの…

007 伝わったからこそ

 黒栖と白羽は、お互いに死んでほしくないと思っている。確かな絆が生まれた瞬間だった。 しかし、それをあざ笑うかの如く、それは起こる。 前兆。それは黒栖をデスハザードとして、異世界に呼び寄せるもの。「……どうやら、行かなければならないようだ」…