彼女殺しのデスハザード

030 幸せの温もり

「な、何を突然言っているんだ!?」 白羽の言葉に、黒栖は思わずそう言葉を返す。しかし、それに対して白羽は一歩も引く気はない。「私は本気だよ? だってね、記憶を思い出した事で、今がどれだけ幸せな時間なのか気がついたの。だから、その幸せを少しで…

029 繋がった記憶

「白羽、もう大丈夫なのか!」 黒栖はソファから立ち上がり、白羽と向き合う。すると黒栖は、白羽の様子がいつもとはどこか違うような、そんな違和感がした。「黒栖君……あなたは本当に黒栖君なの?」「え?」 白羽が問い掛けてきた内容は、そんな突拍子も…

028 戦う理由

『あの方は、試練を司っておる。それによる報酬が、先か後かの違いはあるがの』「それはどういう……」 どす黒い長剣が話す内容に、黒栖はとてつもない嫌な予感がしていた。試練と報酬。では、この地獄のような現状とは――『お主も気がついたであろう。そう…

027 どす黒い長剣

 白羽が気を失うとそれに合わせたかのように、残りの球体が消滅する。そしてその場に残されたのは、あのどす黒い長剣だけだった。「クソッ、どうすれば」 黒栖は白羽を抱きかかえながら、いったいどうなってしまうのかという、|漠然《ばくぜん》とした不安…

026 戦いのあと

「黒栖君ッ!」「白羽……」 ゴタロウに勝利したものの、黒栖が重症という事実には変わらず、急いで駆け寄った白羽が、黒栖の上半身を支えるように抱きしめる。「どうしよう、どうすれば」 白羽は未だに流れ続ける黒栖の出血を見て、動揺を|露《あら》わに…

025 その者の末路

「おいおい、まだ死ぬんじゃねえぜ! てめえには、まだ絶望してもらうんだからな!」「ぐあっ!」 ゴタロウはそう言って、黒栖からどす黒い長剣を抜き取ると共に蹴りを放つ。黒栖は抵抗できず、地面へと転がった。「あぁ、いい気分だぜ! この剣は最高だ!…

024 黒栖VS復讐者

「てめぇ、俺から逃げられると思っている訳じゃないだろうな? 俺はお前を絶対に許さねえ。例え逃げ続けたとしても、お前を追い続けてやる」 ゴタロウが校庭に辿り着くと、額に青筋を浮かべながら、黒栖にそう言い放つ。「そうか、だがもう逃げないから安心…

023 二人の誓い

「おらッ! フレアボム!」 初手を放ったのは、ゴタロウだ。火の魔法を有しているのか、左手からバスケットボール程の火の玉が黒栖めがけて飛んでくる。「白羽、飛ぶぞ!」「え!?」 だが、それをわざわざ迎え撃つ気は黒栖にはない。白羽の手を握ると、手…

022 因果は巡る

 二回目の並行世界を経て、その翌日の土曜日黒栖と白羽は、現在商店街に来ていた。 その道中、白羽がとあるおしゃれなカフェが気になり、今は黒栖と共に休憩中だ。もちろんそのおしゃれなカフェとは、以前黒栖が姫紀と来ていた所である。 白羽が注文したコ…

021 復讐を願う者

 そこは、砂漠地帯だった。肌を焼くような暑さに、砂丘以外には変化のとぼしい場所。人が生きるには、厳しい環境だ。 しかし、その過酷な砂漠地帯に、三人の男女がいた。そして、そのうちの一人、尖ったような硬い髪質の茶髪に、悪戯好きに見える顔立ちをし…

020 それぞれの覚悟

 デスハザードとしては、二度目となる並行世界。 その場所は河川敷であり、川を越えれば、すぐそこは隣町である。 目の前には当然、並行世界の黒栖と白羽がいた。既に|疲弊《ひへい》しきっているのか、並行世界の黒栖の息は荒く、まるで先ほどまで戦って…

019 最悪の呼び出し

 教室に入ってからしばらく、黒栖の周囲は大変騒がしかった。 というのも、以前金魚の糞の|如《ごと》くつきまとってきた者たちと、旺斗を見限って黒栖に鞍替えしようとした者たちが、黒栖に媚びを売って来たのだ。 最早、旺斗のクラスカースとは地に落ち…