彼女殺しのデスハザード

006 知ってほしい想い

 どうしたものだろうかと、黒栖は溜息が出そうになる。 現在、黒栖の自宅には白羽がいた。部屋をキョロキョロと見渡しながらも、緊張した面持ちでベッドに腰かけている。 黒栖といえば、椅子に座り両手を膝に置く姿勢は、まるで就職面接を控えた者のようだ…

005 帰還後の学校

「……くそがっ!」 自分の世界に戻ってくると、黒栖はそう言わずにはいられなかった。 握りしめた両手から僅かに血が流れる。 救う事ができなかった。いや、そもそも救う事はできないのだ。「……そうだ。白羽は」 思わず、視界を飛ばして白羽の安否を確…

004 並行世界での戦い

 黒栖、いや、デスハザードの視界には、見覚えのある教室が映り込んでいた。 茜色に染まる空からは、光が差し込んでいる。「なっ!?」「う、嘘……」 すると、不意に声を駆けられた。デスハザードは左方へと体を向ける。そこには多少癖のある黒髪に、僅か…

003 嵐の前の静けさ

 黒栖は自分の通う高校、|陸央《りくおう》高等学校から、徒歩二十分のところにある1Kマンションの二階に住んでいる。 あれから無事に帰宅した黒栖は、ドアポストに入っている封筒を手に取った。 そこには、数枚の一万円札が入っている。これは異世界に…

002 宿命の始まり

 場が沈黙する。部外者のいない通学路に、|黒栖《くろす》と|白羽《しろは》を観察するかの|如《ごと》く、デスハザードの白い単眼模様が二人を見つめていた。 それはほんの僅かであるが、黒栖と白羽には永遠に感じられる。 その中で、黒栖はこの状況に…

001 一線を越えた世界

「えっ……」 不意に背後から|貫手《ぬきて》による攻撃を受けた少女は、僅かに声を|漏《も》らした。その貫かれた|個所《かしょ》は確実に少女の心臓を捉え、死に至らしめる。「ゆ、ユリス!」 突然の出来事に少年は声を上げた。しかし、攻撃した何者か…