長編

003 チュートリアル前半

 視界に広がるのは、窓の外から見えた光景と酷似した何もない草原地帯と、一人の少女……。 少女!? ぱっと見十代半ばの少女は、ポロシャツにホットパンツ、キャップ帽とすべて白で統一されており、黒いショートヘアーと特徴的な紅い瞳をした美少女だった…

002 ワンルーム

「んあ?」 目が覚めると、俺は何もない部屋にいた。 といっても、先ほどの白い空間とは違い、マンションの一室といった感じだ。「ここはどこだ?」 部屋の見渡せば、ドアが一つ、蛇口しかないキッチンらしき流し台。玄関と思われる場所には青い魔法陣があ…

004 並行世界での戦い

 黒栖、いや、デスハザードの視界には、見覚えのある教室が映り込んでいた。 茜色に染まる空からは、光が差し込んでいる。「なっ!?」「う、嘘……」 すると、不意に声を駆けられた。デスハザードは左方へと体を向ける。そこには多少癖のある黒髪に、僅か…

003 嵐の前の静けさ

 黒栖は自分の通う高校、|陸央《りくおう》高等学校から、徒歩二十分のところにある1Kマンションの二階に住んでいる。 あれから無事に帰宅した黒栖は、ドアポストに入っている封筒を手に取った。 そこには、数枚の一万円札が入っている。これは異世界に…

002 宿命の始まり

 場が沈黙する。部外者のいない通学路に、|黒栖《くろす》と|白羽《しろは》を観察するかの|如《ごと》く、デスハザードの白い単眼模様が二人を見つめていた。 それはほんの僅かであるが、黒栖と白羽には永遠に感じられる。 その中で、黒栖はこの状況に…

001 巻き込まれた者

 寝て、起きて、ダンジョンに行って、寝て、起きて……変わり映えのしない、いや、死んでしまえばそれまでの毎日を俺、|天動御影《てんどうみかげ》は過ごしていた。 この世界にダンジョンが発生して約百年、世界は疲弊してくたびれている。 モンスター大…

001 始まりのガチャガチャ

 どこまでも続く真っ白な空間に、俺、|清城瑠院《せいじょうるいん》は立ち尽くしていた。 夢の世界なのか、はたまた幻なのか、全く見当もつかない。「ここは……」 見渡す限りの真っ白な空間。シミ一つないような場所に、ポツンと場違いにも二つのテーブ…

001 一線を越えた世界

「えっ……」 不意に背後から|貫手《ぬきて》による攻撃を受けた少女は、僅かに声を|漏《も》らした。その貫かれた|個所《かしょ》は確実に少女の心臓を捉え、死に至らしめる。「ゆ、ユリス!」 突然の出来事に少年は声を上げた。しかし、攻撃した何者か…