長編

134 独立と転換期

 あれから騒ぎにはなったが、予定通り帰還することになった。 そして翌日の早朝、依頼を受けた村に戻ってくる。 今更だが、この村はラクールというらしい。 また冒険者ギルドに行くと、人で|溢《あふ》れ返っていた。 多くの冒険者たちが、新国家樹立に…

133 依頼の帰り道

 あれから無事に、コボルトの殲滅作戦は終了した。 ちなみにCランク冒険者たちは、数匹のハイコボルトを狩ったようである。 だが群れの規模にしては、上位種が少ないことに対して頭を捻っていた。 結果として上位種が生まれる前に狩れたのだと、そう判断…

132 北の渓谷

 ※125話の最初の方に以下の文章を追加。 理由:パーティの代表者とソロ冒険者だけがいるはずの大部屋に、メンバーのギルスとダンリがいたため。「パーティメンバーが外で待っているから、まずは移動してもいいかしら?」「ああ、構わない」 そう言われ…

131 神聖な儀式について知る

 それから俺は、ビムから神聖な儀式について分かる限りのことを教えてもらう。 俺が神聖な儀式を知らないことに最初は戸惑っていたが、それでも教えてくれた。 まず神聖な儀式についてだが、正式には族長選定祭というらしい。 ダークエルフには族長がおり…

130 ダークエルフの少年 ②

「実は、母さんが病気なんだ。父さんは僕が小さいときに死んじゃって、兄妹もいない。食べ物はフライングモスボールでどうにかなるけど、病気を治すにはお金が必要なんだ」 なるほど。だから火の輪潜りを見て声をかけてきたのか。 使役しているソイルバグで…

129 ダークエルフの少年 ①

「えっと、どうやって覚えさせたんですか?」「今の火の輪潜りか?」「は、はい」 少年は先ほどソイルバグにやらせた火の輪潜りが、気になるようだ。 しかし覚えさせたもなにも、普通に命令したのと全感共有で操作をしただけである。 なので正直に言っても…

128 夜番中に試してみたこと

 さて、この間にできる事をやってみよう。 俺はできるだけ遠くに、アサシンクロウを十数羽召喚する。 そして先行させて、モンスターを狩らせる予定だ。 実のところ、カード化が可能な距離には制限がある。 視界に入っていれば大抵はカード化可能だが、視…

127 ゲッコー車での移動 ②

 それから道中、俺は情報収取のために荒野の闇の面々の話を聞く。 村の周囲はFランクモンスターがほとんどで、稀にEランクモンスターが出る程度らしい。 村の近くにあるダンジョンは全十五階層だが、三人は四階層までしか行ったことがないようだ。 また…

126 ゲッコー車での移動 ①

  馬車、ゲッコー車が動き出す。 過去馬車に乗った時は、散々な目に遭った事を思い出す。  揺れは酷かったし、臭くて更には酔った者が|嘔吐《おうと》したんだったか。  しかしゲッコー車は、思ったよりも揺れが少ない。 木製の壁と天井に、小さな小…

125 Eランクパーティ【荒野の闇】

「俺が、Dランクのジンだ」 そう言って、俺は女性冒険者へと近づく。「貴方がDランクのジンさん、君ね」 女性冒険者は俺を見ると、人称をさんから君に変えた。 まあ、それについてはどうでもいい。 女性冒険者は十代後半に見えるが、実年齢は不明だ。 …

124 ダークエルフの村で買い物

 人が集まるまでの間、俺は村の中を練り歩いた。 屋台なども複数あり、モスサンドも売っている。 ちょうど小腹も減っていたので、購入して食べてみた。 丸いパンにフライングモスボールから取れた藻が挟んであり、他にも野菜や肉が入っている。 フライン…

123 ダークエルフの村

 全感共有で視界を繋げてみると、そこには銀髪に赤い瞳をした褐色の人物がいた。 耳も長く、手には武器を持っている。 人数は四人であり、内三人が子供で一人が大人だ。 どうやら、フライングモスボールを狩っているようである。 たぶんあれが、ダークエ…