小説

017 鳥のゆりかご亭

 ここがルチアーノの紹介してくれた宿屋か。 大通りから少し外れた場所にあるが、二階建ての立派な宿屋だった。看板には、宿屋の名称である鳥のゆりかご亭という文字が記されている。「いらっしゃい。宿泊かい?」「はい、とりあえず三泊頼みます。それと、…

016 小競り合い

「おう。お前凄い力持ちなんだな!」「武器を持っていないところを見るに格闘家か?」 俺が木箱を運んでいると、不意に若い冒険者二人から声をかけられた。「ん? いや、格闘家ではないな」 急になんだ? それよりも、木箱運べよ。 誰がいくつ運んでも全…

015 初依頼

「うん。これなんかどうかな。今近い時間帯ではこれがお勧めだよ」「倉庫から別の倉庫への荷移しか」 受付のカウンターに戻ると、ルチアーノが早速依頼を勧めてくる。戦闘系の依頼だと思っていたので、少し腑に落ちない。ちなみにだが、冒険者のルールなどの…

014 契約冒険者について

 契約冒険者? なんだそれは? そのような制度があるという話は、盗賊の男からは訊いていなかった。「ああ、僕の契約冒険者になれば、依頼の紹介をしてあげるし、ランクの昇給審査も通りやすくなるよ。他にも、メリットはたくさんあるんだ」 そこだけの部…

013 G級試験

 練習場の一角にて、俺は模擬戦を行うことになった。目の前にいるのは、冒険者ギルドの教官だというガイラスという男だ。 相手も同じ木剣か、俺に合わせているのか? そんなことを思いながら、互いに少し距離を取る。「ミカゲとかいったな? まぁ気軽にか…

012 冒険者ギルド

 エレバスの町は、活気に満ち溢れている。行く人々は明るく、商売人は声高らかに客を呼び込んでいた。 すごいな……何というか、人々の表情が明るい。未来に希望があるように感じる。 元居た世界では、行く先々で暗い表情の人が多かった。といっても、俺の…

011 異世界初の町へ

 現在俺は、再び街道を歩いている。手荷物は特にない。石刀はホームに置いて来ているが、疑似天地創造で創り出したので、状況によっては即座に呼び出すことができる。 それにしても、ホームに金銭の半分を置いていたのが功を奏したな。 人外集団に金銭を奪…

020 数百の矢の雨

 流石にあの数が一気に来るとすれば、避け切れる自信がないぞ。 俺は頭上の光景に思わず舌打ちをしてしまう。更に、数百の矢は直ぐには落ちてこず、姫紀の作り出した光の結界が消えるのを待っているようだった。「この試練を考えた奴は、クリアーさせる気が…

019 第一の試練『千の矢』

 試練が決定されると、少しして俺を含めたパーティメンバーは、見知らぬ荒野に転移していた。周囲には山と大小さまざまな岩が転がっている。 そして上空には、大きな文字でカウントダウンが開始されており、十秒後には試練が始まるようだった。「とにかくみ…

018 初めてのイベント

 時間が来ると、俺は先ほどのスタジアムではなく、テーブルや向かい合わせのソファー、壁掛けの巨大モニターなどが設置されている待合室にいた。 ここは……。 周囲を見れば、俺と同じように現れたプレイヤーらしき人物が三人いる。 まずは左に見えるのは…

017 夕食の時間

 無事借りた木製のナイフ二本を返却してホームに帰還すると、いつもの通り汚れが消え去り、更には多少斬り飛ばされた耳や尻尾が再生していることに気が付く。 もしやと思って直接確かめてみたが、本当に再生しているとは……だから斬り飛ばした張本人である…

016 練習相手

 クエストを始めると、視界にはグラウンドの茶色い地面が広がっていた。右方向には巨大な屋敷があり、練習相手というのが富豪か貴族なのではないかと予想してしまう。 これで相手が貴族の子供とかだったら面倒くさいなぁ……。 一瞬このクエストはハズレで…