075 状況の把握

「私の名前はジフレ。ジンは無事だから安心して。詳しいことは後で話すから、今は待ってほしいな」
「あ、ああ」

 俺がそう言うと、リードは一瞬言葉に詰まりつつも頷いた。

 正体を言うのは、いつでもできる。

 それに簡単に信じてくれるかは不明だし、時間をあまりかけたくはない。

 まず先に、やるべきことがある。

 俺は一度リードたちから離れると、束縛している紫鎧に近付く。

 おそらくこいつは、人ではない。

 まあ切断したとき中身が無かったし、モンスターなのだろう。

 そう考えて、まずは鑑定をしてみる。

 種族:リビングアーマー
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(小)】
【技量上昇(小)】【マナドレイン】
【自動修復】

 リビングアーマーというのか。能力的に、Cランクといったところだろう。

 守りに特化しており、本来は剣などの武器を使っているのかもしれない。

 それを利用して、このライフル銃を使用させているのだろう。

 俺は続いて、その気になっていたライフル銃を鑑定する。

 しかし鑑定妨害が付与されているのか、中々上手いくいかない。

 だが集中して魔力を多く込めることにより、鑑定妨害を突破する。
 

 名称:量産型魔導ライフル銃
 説明
 ・魔力を使用することで、魔力弾を発射する。
 ・中級鑑定妨害を自動で発動する。
 ・登録者以外は使用できない。
 ・登録者が死亡した場合、この武器は自爆する。
 ・登録者から一定以上離れた場合、この武器は自爆する。
 ・製作者が死亡した場合、この武器は自壊する。

 概ね、予想通りの内容だな。

 しかしこれは、どう考えても転移者がかかわっている。

 いや、むしろ転移者が神授スキルで、これを作ったのだろう。

 どちらにしても、やっかい極まりない。

 ただ最後の製作者が死亡した場合、自壊するというのがひっかかる。

 もしかして死後の名声や、子孫のことを考えてのことだろうか。

 まあそれでも自壊させるということは、殺されないための予防策なのだろう。

 だがそのことは、正直どうでもいい。

 あと調べていないのは、この輪っかだな。

 俺は五つあるうちの一つを、鑑定してみる。

 こちらも鑑定妨害がしてあったが、突破した。

 名称:量産型契約の輪
 説明
 ・この装飾品は、五つ身につけることで以下の効果を発揮する。
 ・登録した者と仮契約状態になる。
 ・登録した者に服従状態になる。
 ・中級鑑定妨害を自動で発動する。
 ・大きさを自動で調整する。
 ・輪が一つでも外れた場合、全ての輪が自爆する。
 ・身につけている者が死亡した場合、全ての輪が自爆する。
 ・製作者が死亡した場合、この輪は自壊する。

 以前見た、仮契約の足輪の完全上位互換だな。

 五つ同時に装備する必要はあるものの、その有用性は計り知れない。

 同じ仮契約でも、できることに差があるようにも感じる。

 これはどう考えても、歴史的な発明レベルの物だろう。

 とりあえず知ったことを、二人にも共有する。

 加えて、このリビングアーマーを倒した。

 いつ自爆してもおかしくないし、いつまでも拘束を続けることは難しい。

 また二人はこのことを知って驚愕きょうがくしていたが、今が緊急事態だと思い出して落ち着きを取り戻す。

 倒したことにも、納得してくれた。

 そして俺は、倒したリビングアーマーたちをカード化していく。

 カードは普段収納している異空間へと、直接送った。

 なので周囲からは、リビングアーマーの残骸が光の粒子になって消えたようにしか見えない。

 またこいつらは仮契約で無理やり服従させられていただけであり、主への忠誠心は全く無いと思われる。

 それにここまで数が多いからか、育てられている雰囲気は一切ない。

 ゆえに他人のモンスターだが、カード化するデメリットは皆無だ。

 そして合計五十枚のリビングアーマーが、おそらくカードになった。

 何となく、それが分かる。

 ちなみに、周囲には銃と輪の残骸だけが残った。

 これは、後でハパンナ子爵がどうにか回収するだろう。

 俺も一応、いくつか回収しておく。

 続いて俺は、気絶しているアミーシャに近付いて鑑定をする。

 またもや妨害されるが、意味をなさない。

 
 名称:ミシェル
 種族:人族
 年齢:28
 性別:女
 スキル 
【契約召喚】【鑑定】【逃げ足】
【中級鑑定妨害】【集団指揮】
【姿隠し】【投擲】【毒耐性(小)】

 ん? アミーシャというのは、偽名だったのか。

 本名は、ミシェルというらしい。

 まあそれはいいとして、まず契約召喚はサモナーの基本能力だ。

 これがあるおかげで、モンスターを従えることができる。

 他のスキルも、概ねサモナーらしい構成だろう。

 それとアミーシャ、いやミシェル自身には、戦闘能力があまり無いらしい。

 にもかかわらず、なぜコイツはあれほど、目立つ立ち回りをしていたのだろうか?

 俺はふと、そんなことを思う。

 ……なんだか、とても嫌な予感がしてきたな。

 俺の脳裏に、陽動作戦という言葉が浮かんでくる。

 これは、急いだ方がいい。

 俺はそう思い、生活魔法の飲水をミシェルの顔にぶっかけて、無理やり起こす。

「っあ!?」

 無事に気を取り戻したので、俺はその直後に以心伝心+で一方的に心を繋げる。

「な、なにこれ……」

 なにやら違和感があるようで、俺も抵抗を感じた。

 だが、問題はない。

 以心伝心+は、ミシェルの心へと無事に接続を果たす。

「さっそくだけど、質問に答えてもらおうか?」
「ふんっ、言う訳ないじゃない!」

 自信満々にそう言うが、内心恐怖を感じているのが伝わってくる。

 ミシェルもまさか、心を読まれているとは思ってもいないらしい。

 では時間もないし、さっそく質問をしていこう。

 

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