026 冒険者ギルドで依頼達成

 翌日俺は、冒険者ギルドに来ていた。

 掲示板を見て、提出できそうなものを吟味ぎんみする。

 うーん。オークの納品はDランクか……。

 現在俺はFランクなので、二つ上のDランクの依頼は受けられない。

 例えそれが、納品できるとしてもだ。

 しかし売却自体はできるようなので、売ることに決める。

 ただその場合、かなり安くなってしまうみたいだ。

 駆け出し冒険者が金に目がくらんで、格上を倒しに行かないための対策だろうか。

 そんなことを思いつつ、俺のランクでも受けられる依頼を受けることにした。

 受付に並び順番が来ると、依頼票と冒険者証を提示する。

 すると受付の女性が俺の冒険者証を見ると、声をかけてきた。

「ジン様には商業ギルドより、救助依頼などに対する複数の達成報告が届いております」
「ん?」

 商業ギルド? あぁ、もしかして盗賊からの救出に対して、ハプンが村の商業ギルドに報告しに行ったものだろう。

 あの時逃げるように村を出たから、達成が今になったのかもしれない。

 行き場所は知らないはずだが、この時期に冒険者が行く場所の目星は容易についたのだろう。

 実際俺はここにいたわけだし、当たっている。

「達成したのは、盗賊団の壊滅及び指名手配犯である頭目ザブウの討伐、行商人ハプンとその家族の救出、そして安全な村までの護衛、商品全てを持ち主に返却したことに対する四件となっています」

 おおっ、思ったより依頼としてカウントされたようだ。

「今回は特殊な状況下ということになり、ランクの制限はございません。また報酬はこちらになります」

 そして俺の目の前に、大金が置かれる。

 内訳は以下の通り。
・盗賊壊滅関係=小金貨二枚
・救出=小金貨一枚
・護衛=銀貨五枚
・商品の返却=小金貨一枚と銀貨五枚
合計小金貨四枚と銀貨十枚

 あの盗賊の頭目、思っていたよりも凄かったんだな。懸賞金が半端ない。
 
 それと商品返却の報酬が多い気がするな。もしかしてハプンが増額したのだろうか。

 確かに、ハプンからは直接助けたお礼は貰っていなかったし、可能性は高いな。

 にしても、こうも簡単に大金が手に入るとは。

 俺の感覚だと、この世界の通貨価値は脳内でこう変換している。

 ・小銅貨=1円~10円 
 ・銅貨=50円~100円 
 ・小銀貨=500円~1,000円 
 ・銀貨=5,000円~1万円 
 ・小金貨=5万円~10万円 
 ・金貨=50万円〜100万円?

 村単位で物価が違うし、日本円に変換するのは少し無理があるかもしれない。
 
 金貨一枚百万とか、どうなっているのだろう。

 金貨といいつつ、特殊な素材も使われている気がする。

 そんなことを考えていると、いつも通り二重取りが発動した。

『神授スキル【二重取り】が発動しました。依頼貢献度と報酬が倍になります』

 どこからともなく硬貨が現れ、合計小金貨八枚、銀貨二十枚になる。

 両替すれば金貨になるが、使いづらいので止めておく。

 金貨については、いずれ見ることになるだろう。

「ジン様の貢献度が一定数に達したため、ランクアップ処置をさせて頂きますね。少々お待ちください」

 すると待ち札を渡されたので、一旦受付から離れることになった。

 ちなみに受けるつもりだった依頼は、問題なく受理されている。

 大金はストレージに入れて、受付の列から出た。

 ものすごく視線を感じたが、諦めることにする。

 まあ、合計金貨一枚分だからな。

 普通に生活する分には、使用するのはほとんど小銀貨までだ。

 たまに銀貨を使う感じになる。

 なので冒険者とは、意外と高給取りなのだ。

 ただし、駆け出しは除く。

 そう考えると、改めてあの銀貨二枚のぼったくり宿屋が酷い。

 今いる宿屋は質が良くて銀貨二枚だが、感覚が麻痺していたんだな。

 キョウヘンの宿屋は、小銀貨四枚だった。

 あれが普通なのだろう。

 この街では、宿屋の主人も高給取りのようだ。

 それと俺の稼ぎがおかしく見えるが、本来は二重取りは発動しないし、パーティで山分けになる。

 パーティは、二人〜六人くらいが一般的なようだ。

 複数のパーティが集まると、同盟になる。

 または大人数が一つのパーティに集まると、クランになるようだ。

 そして複数のクランが集まると、連合になる。

 高難易度の依頼ほど、大人数で受けることが増えていく。

 結果として、一人当たりの報酬も常識的なものに落ち着く感じだろう。

 まあ上位になってくると、一人当たりの報酬も多そうだが。

 俺が冒険者の上澄みになったら、いったい報酬はどうなるのだろうか。

 モンスター軍団を使って依頼を熟すと思うので、高ランク依頼でも報酬は独り占めだ。

 そして、二重取りで倍になる。

 ……なんだか、経済を破壊しないか心配だ。

 そこは通貨を統一したという、創造神にどうにかしてもらおう。

 俺が先の未来に少々頭を悩ませていると、専用の窓口から呼ばれる。

 そこで新しく渡された冒険者証は、Eランク。

 おそらく、ギリギリランクアップに届いたと思われる。

 今回は特殊依頼で、ランク制限はない。

 そしてランクが一つ上になるごとに、貢献度は倍増していく。

 今回の依頼が一つCランクの場合、八倍になる。

 更に二重取りで十六倍だ。それが四つで六十四。

 俺のこれまでの貢献度は、おそらく四十は無いくらいだった。

 それか特殊依頼には、貢献度に何かボーナスが発生するのだろう。

 本来ランクアップにはかなりの時間を要するので、短期間でのランクアップは実は凄かったりする。

 Fランク依頼だけだと、百回分の貢献度が必要だ。

 真面目にこなしても、四カ月近くかかる。

 今回は、運が良かったと考えよう。

 これで一つ上の、オークの納品依頼が受けられる。

 だが待てよ、俺の貢献度をどうやって他の村と共有したんだ?

 俺が知らないだけで、冒険者ギルドは未知のアイテムを使用しているのかもしれない。
 
 それか、そこは創造神が上手くやっているのだろう。

 俺はそう思いつつも、新しい冒険者証であるドックタグを受け取った。

 この冒険者証も、実は凄い隠し効果があるのだろうか?

 やはり鑑定してみても、特に効果は見られない。

 まあ今気にしても、仕方がないか。

 ちなみに、ランクアップには二重取りは発動しないようである。

 コツコツ上げていこう。

 そしてランクアップを終えると、掲示板から追加で依頼を手に取った。

 結果として俺は、更なる報酬と貢献度を稼ぐことに成功する。

 ランクアップで目立ってしまったので、もはや自重するのも馬鹿らしいと思い、ストレージから自分で食べる分以外は全て納品した。

 他にもゴブリン、ホーンラビット、ポイズンモス、グリーンスネークなどを筆頭に、三階層のジャイアントリーチやビッグフロッグ、その他etc…を提出している。

 解体場の男性は、もはやドン引きだ。

 加えてその場にいる全員が、大変な長時間作業になることを理解して、絶望した表情になった。

 これには思わず、罪悪感を覚えてしまう。

 だが俺にはお願いすることしかできず、しばらくギルドの椅子に座って待ち続けることになった。
 
 けれどもその途中、様々な人物から勧誘の誘いが来る。

 当然断ったが、諦めない者が何人もいた。

 これは、しばらく粘着されそうである。

 すると見かねた職員が、専用の待合室に案内してくれた。

 本来高ランク冒険者用だが、今回は特別に使わせてくれるようだ。

 将来性のありそうな冒険者には、こうした便宜をはかるのだろう。

 そうして全てが済んでギルドを出ると、既に昼を越えていた。

 とりあえず、後をつけてくる者たちから離れることにする。

 相手をするのも面倒だ。

 デミゴッドの身体能力を発揮すれば、逃げ切るのは簡単だった。

 それにしても、一気に稼いでしまったな。

 少し前まで金欠だったのが、嘘のようだ。

 これだけあれば、欲しい物をある程度そろえられるだろう。
 
 そろそろ、防具とかをどうにかしたかったんだよな。

 ここまでずっと、初心者冒険者セットの装備だった。

 増えたのはゴブリンの洞窟で手に入れた、グレイウルフのグローブくらいだ。

 そのグレイウルフのグローブも、ホーンラビットを触るために外したままだったりする。

 今もストレージの中で、眠っている状態だ。

 正直、あれくらいの防具では無い方が楽だった。

 なので外してから、忘れたままだったのだろう。

 そんなことを思いつつ、俺は昨日目星をつけていた店に向かうのだった。

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