023 シルダートダンジョン二層目で宝さがし

 二階層目もやはり、難易度の低い宝箱はほとんど取られているようだ。

 いくつか見つかっていない物も発見したが、中身はショボい。

 最下級ポーションや、小銀貨が数枚などだった。

 どうやら難易度によって、手に入る内容も変わるらしい。

 まあオークの住処を殲滅せんめつして、宝箱の中身が小銀貨数枚だったらキレても仕方がないだろう。

 そうならないのは、ありがたい。

 あとは道中、新たなモンスターが現れた。

 種族:スモールモンキー
 種族特性
【集団行動】【身軽】

 見た目は小さい茶色のサルであり、木々の間をアクロバティックに飛び移る。

 そして集団で同時に襲い掛かってくるという、やっかいなモンスターだ。

 けどまあ俺の相手ではなく、各個撃破してカード化した。

 一匹の強さは、ホーンラビットより少し上くらいである。

 数と連携、そして身軽な動きで敵を翻弄ほんろうするモンスターなのだろう。

 普通ならオークに慣れてしまうと、逆に手強く感じるかもしれない。

 道中何度も襲ってきているので、既に三十枚も集まってしまった。

 当初は十枚で良いかと思ったが、このモンスターの強みは数なので、三十枚に変更している。

 何気にこれで、俺のモンスター軍団は十種類になった。

 これからもどんどん増えていくので、存在を忘れるカードも出て来るかもしれない。

 まあ、それも初期カードの運命だろう。

 そうして何度か食事休憩を挟み、ダンジョン内も時間によって日が沈むので、本日の寝床を見つける。

 ここがちょうどいいか。

 森の少し開けた場所に、まずは土塊でやわらかい土を量産していく。

 その上に街で購入していたシートを敷いて、十匹に増えたホーンラビットを召喚する。

 これだけ集まると、ホーンラビットでも凄いな。

 一匹ずつ清潔を発動させていき、ついでに自身とグレイウルフにも発動させる。

 まるで風呂上がりのようにスッキリした。

 周囲には見張りとして、ホブゴブリン・オーク複数・グレイウルフ複数・ジャイアントバット複数・グリーンスネーク複数で固める。

 ゴブリンでは流石に、オークが現れる森では力不足だ。

 何か対処できなければ起こすように伝えて、俺は横になる。

 枕にはグレイウルフ。抱き枕兼掛け布団代わりにはホーンラビット十匹。

 角が少し邪魔なのを我慢すれば、下手な寝具よりも気持ちがいい。

 清潔を発動させたおかげで、ふわふわだ。

 俺はこうして、ダンジョンで眠りについた。

 翌朝目覚めると、軍団の数が減っていることに気が付く。

 どうやら、何匹かやられてしまったみたいだ。
 
 近くには、オークやスモールモンキーなどが積みあがっている。

 おっ、ジャイアントバットもいるな。

 五匹追加でカード化して、合計十枚にしておく。

 他にはグレイウルフも何匹かいたので、そちらもカード化した。

 生き残った軍団を見れば、どうやらホブゴブリンが頑張ったらしい。

 流石は、ダンジョンボスのエクストラがある個体である。

 オークが増えても、ホブゴブリンが軍団のエースに変わりはないようだ。

 積みあがったモンスターをストレージに収納して、朝の支度を終わらす。

 さて、今日も宝探しを始めよう。

 軍団をカードに戻し、俺はグレイウルフに道案内を頼む。

 道中オークなどを見つけるが、無視することにした。

 既にオークのカードは五十枚あるし、ストレージ内にも結構入っている。

 正直あきたし、もういらない。

 宝箱を集めきったら、次の階層を目指すことにする。

 そして二層目の高難易度宝箱では、単一モンスターの群れが主流のようだ。

 ポイズンモスの群れや、スモールモンキーの群れなどが宝箱を守っていた。

 それをシャドーアーマーで突っ込んで壊滅させたり、ゴブリン軍団とスモールモンキーの群れを戦わせたりして乗り越える。

 結果として手に入れた宝箱の内容は、以下の通りだった。

 名称:耐毒の指輪(下級)
 説明
 装備している間、毒性耐性(小)を得る。

 名称:集団行動のオーブ
 説明
 使用することで、集団行動のスキルが習得できる。

 集団行動は何気に欲しいと思っていたので、手に入ったことに驚いた。

 効果は集団行動時に、補正がかかるというもの。

 モンスターの軍団を従える俺には、ピッタリだ。

 それに二重取りの効果で進化すると思われるので、どうなるか楽しみである。

 ちなみに耐毒の指輪は、右手の人差し指につけることにした。

 どうやら指輪は、左右に一つずつしか効果を発揮しないらしい。

 まあ全ての指で効果が発揮してしまえば、バランス崩壊も良いところだろう。

 あ、これは俺が言える事じゃないか。

 何はともあれ、集団行動のオーブを使うことにする。

『スキル【集団行動】を習得しました』
『神授スキル【二重取り】が発動しました。スキル【集団行動】を獲得します』
『スキルが重複しているため、スキルが統合されました。スキル【集団行動】は、スキル【軍団行動】に進化しました』

 おおっ、思った通りになったな。

 さっそく効果を確認してみよう。

 名称:軍団行動
 効果
 ・一定数の味方の数に応じて、あらゆる行動に補正がかかる。
 ・ある程度の距離や数が入り混じっていても、狙った個体と情報共有などの意思疎通が容易になる。

 
 凄いな。今後のことを考えると、かなりありがたい。

 特に数が増えたとき、個々に命令を出すのが大変になると思っていた。

 それがある程度しやすくなるのは、普通に助かる。

 気になるのはあらゆる行動の補正だが、これは試してみないと分からないな。

 俺はモンスターを少しずつ召喚していき、体の変化を確かめていく。

 それからしばらく続けて分かったことは、体のキレや瞬間的な判断などがよくなっていることだった。

 身体能力自体が上昇する訳ではないが、敵味方が混じった集団戦の時には、大活躍するだろう。

 加えて効果が上昇する一定数は、十・五十・百という感じだった。

 一応所持しているカードで切り良く百五十まで召喚したが、上昇する感じはしていない。

 軍団にしては百は少ないので、更に効果を上げるには、それ以上の味方を召喚する必要があるようだ。

 それならザコモンスターを片っ端からカード化すれば良いのかもしれないが、それは何か違う。

 状況によって変わるかもしれないが、今はそれをする気はない。

 ホーンラビットなどのザコ千匹の軍団を率いるのは、なんだか嫌だった。

 そういう訳で検証を終えて、三層目を目指すことにする。

 二層目の宝箱は、あれで粗方手に入れた。

 グレイウルフは三層目の入り口も知っているようなので、場所については問題ない。

 そして道中のモンスターを蹴散らしつつ、俺は三層目に行ける階段付近に辿り着いた。

 どうやら階段は、洞窟の先にあるらしい。

 周辺には一層目のように、冒険者たちが野営していた。

 一層目と違って、装備などが立派に見える。

 だがそんな時、突然声をかけられた。

「お前はあの時の!?」
「ん?」

 声のする方に視線を向けると、そこにはタヌゥカが立っている。

 驚きの表情で、こちらを指さしていた。
 
 うわっ、もう再会してしまうのか。

「もしかしてお前も、イレギュラーモンスターを狙っているのか?」
「は?」

 イレギュラーモンスターってなんだ?

「お前も転移者のようだが、俺は負けない。ポイントを顔面整形に使っているようじゃ、大したことがないだろうしな」
「そうか」

 何故かライバル視されているな。というか、やはり転移者と気づかれていたようだ。

 それよりも、イレギュラーモンスターというのが気になる。

 雰囲気からして、とても強そうだ。

 これは、良い情報を聞いたな。

 是非我が軍団に迎え入れたい。

 迎え入れても、ダンジョンが崩壊することは無いよな?

「偽装で誤魔化していたようだが、カード召喚術というのは本当みたいだな。だがそんなザコを幾ら集めても、俺には勝てないぜ」

 そばに連れているグレイウルフを見て、タヌゥカがドヤる。

「タヌゥカ、そいつ人知り合い?」
「わわっ、イケメンです」

 すると、タヌゥカの取り巻きがやってきた。

「チッ、騙されるな。コイツの顔は作りもんだ。どうせアソコは小さいに決まっている」

 そう言ってタヌゥカは、見せつけるように取り巻きを両手で引き寄せた。

「ちょっと、こんなところで止めてよね」
「タヌゥカさん大胆です」

 はぁ、いったい俺は何を見せられているのだろうか。

「言いたいのはそれだけか? じゃあな」
「待て、逃げるな!」

 背後からそう聞こえたが、俺は無視して先へと進んだ。

 流石にタヌゥカも、背後から襲ってくることはなかった。

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