022 オークの住処

 「ぶひいぃ!?」

 基本、この付近でオークは単独行動をしている。

 動作は遅く、代わりに力が強い。耐久性も高そうだ。

 しかしデミゴッドの俺には関係なく、一撃で倒せる程度である。

 ちなみに周囲は、二匹のグレイウルフに警戒をさせている感じだ。

 それとどうやら一階層のグレイウルフでは、二階層の構造が分からないらしい。

 なので当然宝箱の場所も知らず、階層ごとに道案内用のモンスターを手に入れる必要がある。

 なおオークは足が遅いので、案内には向かない。

 そういう訳で他のモンスターを探す必要があるのだが、二階層でもホーンラビットはいた。

 探せば、グレイウルフもいるかもしれない。

 とりあえずは適当に彷徨さまよい、モンスターを狩っていくことにする。

 それと二階層目は、意外と冒険者の数が多い。

 どうやら目的はオークのようであり、先に狩られていることが何度かあった。

 おそらくオークは豚肉として、消費されているのだろう。

 体も大きく、一匹狩ればかなりの量になる。

 解体して包み、運んでいるようだ。

 まあそのままだと、一層目に続く階段を登るのは地獄だろう。

 そう考えると、収納系スキル保持者の価値が跳ね上がる。

 戦闘能力がなくても、上位冒険者にスカウトされていそうだ。

 俺もそのうち声をかけられるかもしれないが、その時は断ると思う。

 二階層目の入り口付近だと効率が悪そうだし、奥に行くか。

 そう思い奥へと進むと、案の定冒険者の数が減っていく。

 代わりにオークが増え、集団で現れ始める。

「ぶぎいい!」
「びぎゃあぁ!」

 けれども一撃で仕留めているので、増えても問題はない。

 むしろ効率が良くなったので、ありがたかった。

 普通の冒険者なら、複数体は危険だよな。

 単独行動している二階層目の入り口周辺が、狩場になるのも頷ける。

 加えて夜になれば一階層目に上がり、あの野営場所で他の冒険者と協力して見張りをしているのだろう。

 慣れれば、とても効率がよさそうだ。

 そんなことを考えながら、どんどんオークを狩っていく。

 加えてグレイウルフも現れたので、カード化しておいた。

 一階層目で手に入れたグレイウルフから青い布を取りカードに戻すと、今手に入れた個体を召喚して結び直す。

「宝箱まで案内してくれ」
「ヴォン!」

 そしていつも通り、宝箱に案内させる。

 二層目は一層目と違い、モンスターと出会うことが多い。

 大抵はオークだが、一層目に出てきたゴブリン、ホーンラビット、グレイウルフ、グリーンスネークもいる。

 あとは、以前街道で遭遇したポイズンモスも現れた。
 
 ポイズンモスのカードは七枚だったので、三枚追加しておく。

 そしてグレイウルフの案内で辿り着いた先には、オークの住処があった。

 開けた場所に、無数のオークがいる。数十匹はいるかもしれない。

 よし、ここはモンスター軍団を活用しよう。

 現在俺の手持ちカードは、以下の通り。

 ・ゴブリン30枚
 ・ホブゴブリン(ボス)1枚
 ・ホーンラビット10枚
 ・グレイウルフ21枚
 ・ジャイアントバット5枚
 ・ポイズンモス10枚
 ・マッドクラブ10枚
 ・グリーンスネーク10枚
 ・オーク18枚

 ごり押しでもどうにかなりそうだが、今回は普段使わないモンスターを活用しよう。

 まずはポイズンモスを十匹と、ジャイアントバット五匹を召喚する。

 種族:ポイズンモス
 種族特性
【毒鱗粉】【毒耐性(小)】

 種族:ジャイアントバット
 種族特性
【吸血】【超音波】

 そしてポイズンモスの群れをオークの集落に向かわせて、毒鱗粉を発動させた。
 
 ジャイアントバットには隙を見て超音波を行わせ、オークの意識を朦朧もうろうとさせる。

「 ぶぁ!?」
「ぶふ!?」
「ぶぎぃ!」

 すると上空から毒鱗粉を撒き散らすポイズンモスと、超音波を発するジャイアントバットに対して、オークたちは石や木片を投げる事で対抗し始めた。

 ほとんどは当たらないが、命中した個体は一撃でやられてしまう。

 しかしその隙に、俺は次のモンスター召喚して向わせていた。

 種族:グリーンスネーク
 種族特性
【毒牙】【熱感知】

 種族:マッドクラブ
 種族特性
【鋏強化(小)】【地属性耐性(小)】

「ぶひぃ!?」
「ぶぎゃっ!?」
「ぶぐご!」

 上空に意識を向けていたオークたちは、毒牙を喰らい、ハサミで足を切られる。
 
 当然足元の敵にも注意が向くが、白い何かが駆けずり回り狙いが定まらない。

 まあ、白い何かはホーンラビットである。

 種族:ホーンラビット
 種族特性
【気配感知】【逃げ足】

 逃げ足を活かして、かく乱させることに使った。

 攻撃させても、おそらく効かなそうだしな。

 さて、そろそろか。

 十分オークたちが弱ってきたので、モンスターたちをカードに戻す。

 距離が離れていても、一度に戻して手元に引き寄せることは可能である。

 敵が突然いなくなった事で戸惑うオークたちだが、そこに新たな存在が姿を現す。

「ぶひ?」
「ぶう?」
「ぶぶう」

 現れたのはオークであり、弱ったオークたちは味方が来たのかと、一瞬安堵する。

 しかし十分近づいたところで、やって来たオークたちが暴れ出す。

「ぶぎゃぁ!?」
「ぶひっ!」
「ぶがぁ!?」

 登場したオークはやつらの味方ではなく、俺の召喚したオークたちだ。

 数はやつらの方が多いが、弱っているなら勝つことは可能だろう。

 それに俺の召喚モンスターは、常に恐れを知らぬ死兵である。

 腕が千切れようが、目が潰されようが戦い続ける存在だ。

 これが、カード召喚術の真骨頂の一つである。

 弱ったオークたちは、そうして殲滅された。

 倒したオークは手持ちと合わせて、三十枚になるようにカード化していく。

 残りはストレージに収納しようと思ったが、あることに気がついた。

「あ、毒に犯されているのか……」

 毒が混じっているなら、肉としての価値は無くなる。

 中級生活魔法の清潔では、毒までは抜けない。

 もったいないし、全部カード化するか。

 多くて困ることはないだろう。

 そうして全てカード化した結果、オークのカードが合計四十六枚になった。

 数が中途半端なので、後で四枚手に入れることにする。

 さて、オークは処理できたし、宝箱を開けよう。

 オークの住処の中心には、宝箱が置かれていた。

 いつも通りゴブリンに開けさせるが、特に罠は無い。

 そして俺が中身を確認すると、宝箱の中にはスキルオーブが入っていた。

 名称:性病耐性(小)
 説明
 使用することで、性病耐性(小)のスキルが習得できる。

 うーん。いらない。

 デミゴッドには病気無効があるし、習得しても意味はないだろう。

 それと何気に、このスキルはタヌゥカも持っていたな。

 以前ダンジョンコアを鑑定した時に、定期的に宝箱を補充するとあった。

 宝箱の中身も、ある程度方向性が決まっているのかもしれない。

 手に入れた時の周囲の状況が、関係していそうだ。

 泥沼では耐地の指輪、グリーンスネークでは毒牙の短剣であり、オークの住処では性病耐性のオーブだった。

 まあ、ゴブリンのダンジョンでは色々手に入ったので、例外や条件などの違いがあるかもしれないが。

 とりあえず、このダンジョンではそうしたルールが適応されている気がする。

 けれどもあくまで予想できるだけで、何が出るかは分からない。

 これからも、宝箱を狙っていこう。

 俺は手に入れたスキルオーブをストレージに収納して、次の宝箱を目指すのであった。

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