026 ペロロは夢の中

 僕の名前は、小山内おさないペロ。

 現在では、幼精紳士ペロロと名乗っている。

 名称からも分かる通り、僕はロリコンだ。

 加えて、ナルシストでもある。

 鏡に映る自分の姿は、この世で一番可愛らしい。

 だから元々男には興味は無いし、間違っても僕に触れてほしくはない。

 そんな僕だけども、実は友達が欲しかった。

 もちろん、ただの友達ではない。

 僕の趣味と同じ、せめて近い感性の同志が欲しかったんだ。

 けれども出会う人たちは皆、僕を性的な目で見てきた。

 ロリコンの同志は、もちろんロリコンだからね。

 これは、仕方がないのかもしれない。

 ロリが好みだけど、僕を性的な目で見てこないロリコンなんて、矛盾している。

 だから僕は、半ば諦めていた。

 普通に、同性の友達を作ろうとも考えていた。

 だけどそんな時、運命的な出会いをしてしまう。

 友人探しのためにランダムパーティに参加した時、クルコン君と出会った。

 そして彼が引いたダンジョンは、『性癖暴露と望まれない誘惑者』という、聞いたことがないダンジョンだ。

 嫌な予感がしつつも、僕はクルコン君と他の人たちと共に、ダンジョンへと挑戦する。

 けどそこでトラップに引っ掛かって、性癖を暴露ばくろすることになるとは思わなかった。

 まあ、僕は自分の性癖に誇りを持っているので、暴露したところで気にはしない。

 それよりも、クルコン君の性癖が僕の琴線きんせんに触れた。

 どうやらクルコン君は、『小柄なクーデレ妹系で、甘えたがりの絶対領域少女』が好みらしい。

 僕の脳内でそれは、ロリータだと変換された。

 彼はロリコンの才能がある。

 なにより、僕を欲望に満ちた目で見てこなかった。

 そうだ。同好の士に出会えないのであれば、自分で作ればいい。

 完璧はもはや求めない。

 ロリコンに矯正する途中で、僕を少しいやらしい目で見ても妥協しよう。

 逆に葛藤しながらも、チラチラ見てしまうクルコン君を想像して、僕は自尊心が満たされた。

 黒くにごった欲望でなければ、思ったよりも悪くはないかもしれない。

 そう考えて僕は、クルコン君と友人になった。

 話して分かったことは、クルコン君は思ったよりも良い人だったということ。

 それに、僕の性癖に偏見もない。

 これは、ますます見逃せない人物だと思った。

 しかしそんな浮かれた気分だったからか、僕はクルコン君を巻き込んでトラップに引っ掛かってしまう。

 これが後に、僕の運命を大きく変えることになる。

 気が付けば僕は、大きなキングサイズのベッドに寝ていた。

 加えて金縛りのように、体の自由が効かない。

 僕は当然戸惑う。

 助けを呼ぼうと声を上げようとすると、いつの間にか目の前に彼がいた。

 そう、先ほどまで楽しく会話をしていた、クルコン君だ。

 クルコン君は僕の事を優しい瞳で見つめると、一言こういった。

『かわいいね』と。

 僕は何故か、胸がドキッとした。

 そして彼は、それから僕に甘い言葉をささやき続ける。

 何時間経ったのか分からないけど、頭の中がおかしくなりそうだった。

 その後はクルコン君が何か言うと、僕の体は自然と動き始める。
 
 雰囲気に流されて、僕は今思い返しても凄いことをしてしまった。

 何日、何週間、もしかしたら数か月。

 僕はクルコン君と……。

 これまでの僕だったら、有り得ないことだった。

 けど、友達になって少し良いと思っていたクルコン君に、長い間甘い言葉を囁かれれば、僕だって堕ちる。

 今思えば、精神に何か作用していたのかもしれない。

 それと、クルコン君の手は優しかった。

 あの雰囲気で、拒絶しきれなかった僕は弱い。

 そして気が付けば、いつの間にか幻覚は消えていた。

 あれは脳内で見せられていた、単なる妄想だったのだろう。
 
 クルコン君に化けたモンスターとかでなくて、本当によかった。

 あんな凄い経験をしたけど、僕の体は清いままだ。

 けどあのトラップのせいで、僕の性癖が歪んでしまった。

 いや、ロリコンという事には変わりはないし、男に興味はない。

 ただそこにクルコン君だけが、例外的に入り込んできた。

 幻覚が覚めたと気づかずにクルコン君に迫ってしまったのは、今思い返しても恥ずかしい。

 それとクルコン君が、僕のことを幻覚で見ていたことを期待してしまった。

 けどクルコン君が見たのは、『長身な美人ヤンママ系に、甘やかされながら生の太ももに頭を乗せられて、エッチなことをされた』らしい。

 それを聞いて、僕はこれまでに感じたことのない想いが胸をキュッとした。

 これが、寝取られという感覚らしい。

 だけど何故か胸がキュッとするのに、興奮が収まらなかった。

 僕の性癖は幻覚の後だったからか、簡単に歪んでしまった。

 そして、つい想像してしまう。

 可愛らしい僕が、クルコン君にもてあそばれている姿を。

 自分が大好きすぎる僕には、これはクリティカルヒットだった。

 新たな性癖と組み合わさって、取り返しのつかない沼の底へと堕ちてしまう。

 だからこそ、このままクルコン君といるのは危険だと思った。

 今のままじゃ、自制が効かない。

 僕が逆に、クルコン君を襲うのも時間の問題だ。

 そう思ったから『もうクルコン君とは組めない』と言って、距離を取った。

 けどそれは、自制が効くようになるまでの間だけ。

 それまでは、クルコン君の動画で我慢した。

 光が邪魔するとはいえ、クルコン君が衣服を脱ぐシーンには、とても興奮してしまう。

 僕はその時、猿になった。xxxxを覚えたばかりの猿だ。

 そしてイベントが始まり、クルコン君が行くダンジョンが判明する。

『ロリコンと鏡の森ダンジョン』これまでのクルコン君を見る限り、碌なものじゃない。

 僕好みの幼女が出て来るとは、とてもじゃないが思えなかった。

 けど、これはクルコン君と再会する口実になる。

 たぶん、おそらく、もう自制は出来るようになった。

 だから、大丈夫。

 少しずつ、僕が好みになるように・・・・・・・・・・矯正すればいい・・・・・・・

「ん……?」

 僕は、不意に目が覚めた。

 いつの間にか、タオルケットがかけられている。

「すんすん……クルコン君の匂いがする」

 そして周囲を見れば、クルコン君が何もかけずに横になっていた。

 あれじゃあ、寒いに違いない。

 だけど僕は持ってくる荷物の取捨選択から、タオルケットなどは外している。

 僕は小さいし、そこまで入る大きなリュックサックは邪魔になるからだ。

 つまり、タオルケットはこの一枚しかない。

「これは、仕方ないよね?」

 僕はクルコン君に近づくと、その上に覆いかぶさった。

「寝相が悪いだけ。そう、僕は寝相が悪いんだ」

 そう言って、起きたクルコン君を脅かそうと思い、隠れるようにタオルケットをかぶる。

 凄い。クルコン君の匂いに包まれて、我慢できないかも……。

 やはり僕は、猿だった。

 大丈夫、バレてない。バレてないよね? けど、バレてもそれはそれでいいんだよ?

 気が付けば、僕は眠ってしまう。

 どうやら、疲れが抜けきっていなかったみたいだ。

 二日目も、クルコン君と色々したいなぁ……。

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