006 ボス戦後

 ボスを倒しただけでは、クリアではない。

 ここで死亡すれば、全てが水の泡だ。

 俺は傷口を手で押さえながら、何かないかと必死に頭を働かせる。

 すると、近くに先ほど投げ捨てたぬるぬるすっきりポーションがあった。

 これだ!

 俺は最後の力でそれを拾いに行くと、傷口に注入する。

 先ほど自身のアレに入れたが、浄化の効果を考えれば大丈夫だろう。

「ぐぁあぁ!」

 最初は激痛に襲われたが、内部を浄化して保護するという効果が発揮された途端、痛みが治まる。

 それどころか、出血が止まった。

「まじかこれ」

 刺された箇所には未だに穴が開いている。

 だが、動いても異常が全くない。

 おそらく、何か膜のようなもので内部が保護された結果だろう。

 更に浄化もされているので、感染症のリスクなども無さそうだ。

 このアイテム、治療道具としてはかなり凄いのでは?

 しかも時間経過で自動的に補充されるので、無くなる心配がない。

 ピンクパルチザンもあるし、今回のダンジョン探索は大当たりだ。

 俺は笑みを浮かべると、武器や道具を収納してダンジョンを出ることにした。

 もちろん、衣服も整えて。

 そしてボスを倒したことで、奥にあった扉が開く。

 しばらく先に進むと小さな部屋があり、そこにはダンジョンに入る前にあった水晶がある。
 
 ちなみに水晶は、腰までの高さの台に乗っていた。

 他には何もない。

 俺は水晶に近づくと、右手を乗せた。

 すると水晶が光り出し、今回のリザルトが目の前に表示される。

_______________

ダンジョン名
『男色ゴブリンのぬるぬるダンジョン』
鍵の種類:銅の鍵
攻略人数:1
パーティ名:クルコン
・クルコン
基本報酬:30,000
【討伐報酬】
・男色ゴブリン55×100=5,500
・男色ホブゴブリン4×2500=10,000
合計報酬:45,500

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 今回の合計報酬は、45,500ポニカのようだ。

 五万に届かなかったのは残念だが、一回でこの額は多い方だ。

 基本報酬は一人一人に与えられる報酬であり、ソロの場合はパーティのおよそ三倍になる。

 討伐報酬はパーティの場合人数で割られるが、ソロであれば全て自分のものだ。

 なので上手く戦えれば、ソロの方が儲かる。

 しかしその分リスクが大きく、実際ソロの方が難易度は高い。

 敵の総数こそパーティより少なくなっているが、敵の強さは多少弱くなる程度である。

 加えて一人当たりのモンスター対処数を考えると、ソロの方が断然多い。

 何より索敵や罠の解除、休憩などを全て一人で行う必要があるソロでは、どうしても限界があるのが理由だ。

 そして鍵の種類というのは、難易度に関係しているらしい。

 というのも、俺は今のところ銅の鍵以外は見たことが無かった。

 うわさで銀の鍵が出たという話を聞いた事があるが、明らかに難易度が高くそのパーティは全滅したとのこと。

 現状ソロの俺が銀の鍵を引き当てた場合、間違いなくクリアはできない。

 今回のダンジョンでも、かなりギリギリだった。

 だが強い装備やアイテムを手に入れれば、いずれ挑戦できるかもしれない。

 俺はそう思いながらも、下部にある確認ボタンを押した。

 すると次に報酬の10%を使用して、装備やアイテムの修復及び全回復をするか問われる。

 10%は最初こそ高いと思ったが、実はかなりお得だ。

 帰還した後に同じことをすれば、数倍かかったりする。

 更に怪我を残したまま部屋に戻ってから死亡した場合、どうなるのか分からない。
 
 俺の予想では、自殺と同じように復活しないと思われる。

 なので安全を考えれば、ここで10%払った方がいい。

 俺はそう考えて、今回の報酬の10%である4,550ポニカを支払った。

 ちなみに小数点以下は切り捨てである。

 すると二槍男色ゴブリン、いや正式には男色ホブゴブリンにやられた傷口が完全に治った。

 正直ぬるぬるすっきりポーションが無ければ、ここに辿り着く前に力尽きて死亡していた可能性が高い。

 あの出血と痛みは、それだけヤバかった。

 そして回復も済ますと、俺は自動的に巨大なガチャガチャがあった場所に転移する。

 目の前に見えるのは巨大なガチャガチャの裏面であり、そこには巨大なモニターがあった。

 仮にパーティメンバーが死亡すると、ここで復活するのである。

 加えて他のパーティメンバーのダンジョン攻略を、目の前の巨大なモニターで見ることができた。

 また自室に帰還する際には、巨大なモニターの下にある水晶に触れることで転移することができる。

 俺はソロなのでこの場所に残る必要が無く、当然自室へと戻るために水晶に触れた。

 今回も、何とかクリアできたな。

 次回こそは、まともなダンジョンを攻略したい。

 そんなことを思いながら、俺はダンジョン攻略を終えるのであった。

◆ ◆ ◆

時間はさかのぼり、こんことクルコンがダンジョンに挑戦したころ、コメント欄では盛り上がりを見せていた。

 
 タメゾー『お、ダンジョンに入ったみたいだぞ! 巨根の貞操がどうなるのか楽しみだな!』

 友達0人異常『え? 口から木剣取り出したんだがww』

 ルイルイ『あれは前回、爆竹と泥棒の森で手に入れた装備品だね』

 サンダーフォース『よだれ臭そうで草』

 爆弾トマト『だが見たところ、湿り気が無いように見えるな』

 幼精紳士ペロロ『これってもしかして、アイテムボックス的なやつかな? 僕も欲しい』

 明信『口から出し入れするとしても、その有用性は半端ないな』

 
 クルコンの泥棒リスの頬袋を見て、それぞれが強く反応を示した。

 しかしそれもそのはずであり、現状武器やアイテムを収納する方法は限られている。

 もし仮に奪えるのであれば、殺してでも奪い取る者が現れることだろう。

 だがダンジョンで見つけた物は、一度所有権が決まると売却や譲渡が出来なくなる。

 それは奪った際も同じであり、例え手にしても効果を発揮することは無い。

 タメゾー『なんだあれ……本当にゴブリンか!?』

 はみ出し女子『お、大きい……』

 仏の狂戦士『それに、とても強そうです。私も戦ってみたいです』

 サンダーフォース『いやw それよりもピンクの槍が笑うww あ、逃げた!』

 爆弾トマト『まあ、あれが出てくれば、逃げるのも当然だな』

 ルイルイ『出た! ヘドロ銃! うわーくさそう』

 幼精紳士ペロロ『倒し方がひどいww』

 明信『これが木剣の正しい使い方(笑)』

 ここまではまだ、ある意味普通だった。 

 しかしそれも、尻穴爆竹の串が登場してからは一変する。

 タメゾー『巨根のやつ、スニークうますぎだろ!』

 サンダーフォース『確かに。これは参考になる』

 ルイルイ『あ、ゴブリン……へ?』

 友達0人異常『アッーー!!』

 はみ出し女子『クルコン君、あなたもついに……』

 幼精紳士ペロロ『そしてそこからの逃亡は酷いww ってうそでしょ!?』

 爆弾トマト『爆発したな……しかも尻の内側から……』

 仏の狂戦士『こんなアイテムもあるんですね』

 明信『男色ゴブリンは犠牲になったのだ……』

 あまりにも酷い光景だが、視聴者たちは盛り上がる。

 普通のプレイヤーでは、まず見ることのできない光景。

 尻穴に突き刺すことで爆発を起こす串など、特殊過ぎてまず手に入らない。

 こうした異常な光景が、クルコンのコアなファンを生み出す切っ掛けになっているのだ。

 そして、更に異常な光景が続く。

 宝箱のある部屋、通称お宝部屋にクルコンが辿り着いたのだ。

 タメゾー『うげっー! ヤバすぎだろ!』

 ルイルイ『ひっ』

 友達0人異常『キモすぎる……』

 はみ出し女子『ここでクルコン君が捕まったら……ごくり』

 サンダーフォース『謎の光で見えないように補正されてて、本当に良かった』

 爆弾トマト『でも、クルコンは無修正で見えているんだよな……そりゃ、全力で逃げるわけだ』

 幼精紳士ペロロ『僕なら、トラウマに新たな1ページが加わるところだよ。クルコン君、大丈夫かな……』

 仏の狂戦士『しかしこれでは、あのお宝部屋の宝箱が取れないですね』

 明信『俺なら普通に諦める。あれは無理だ!』

 男色ゴブリンがフィーバーしているのは、謎の光で肝心な部分が見えないようになっているとはいえ、視聴者たちにある意味衝撃を与えた。

 だがその後二つ目のお宝部屋で、クルクルの激臭の水鉄砲と尻穴爆竹の串のコンボには、再び盛り上がる。

 またクルコンが手に入れたピンクパルチザンの名称を呟いたことにより、視聴者たちはピンクパルチザンにピンパチの愛称をつけた。

 なお鑑定画面は、視聴者たちは見ることができない。

 加えてボタン一つで変形するピンパチに、男心がくすぐられて男性視聴者たちは自分も欲しいと湧き上がるのだった。

 そしてボス戦では、当然最後のシーンが大いに盛り上がり、多くの投げ銭が投げ込まれる。

 様々な道具を駆使してギリギリの勝利を収めたクルコンに対して、多くの視聴者が魅了された。

 クルコンはコメント欄を見ていないので気が付いていないが、近頃ではアンチはなりを潜めており、ファンの方が盛り上がりを見せているのである。

 そうしてクルコンがボス部屋を出たところで、今回の生放送は終了した。

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