あれから数日かけて、狩りを続けていた。
ジャイアントサーペントは比較的手に入ったが、他の二種が中々集まらない。
なので途中からは、Dランクのモンスターも生贄の数合わせのために集め始めた。
そしてこの樹海に来てから集めたカードは、次の通りになる。
【Cランク】
・ジャイアントサーペント 56枚
・アサシンクロウ 22枚
・アプルトレント 18枚
【Dランク】
・オーク 123枚+元々所持していた50枚=173枚
・ホブゴブリン 82枚+元々所持していた50枚=132枚
・スリーピングバタフライ 46枚
・トレント 32枚
ダンジョンとは違って、集まりが悪い。
理由はダンジョン種とは違い自然種だと、倒せば数が簡単に補充されないからだろう。
またダンジョン種が積極的に襲ってくるのに対して、自然種は警戒心も強く、勝てない相手へ無理に挑む個体が少ない。
一応自然種も空気中の魔力、魔素によって自然発生するが、ダンジョンよりも発生は遅いようだ。
ちなみに街や村などでは、人が空気中の魔素を中和するため、モンスターが自然発生しないらしい。
俺もその点は詳しくは知らないが、人通りの多い場所も同様とのこと。
この魔素が濃いほど強く、また周囲の環境によって発生するモンスターが変わるらしい。
なのでこのリジャンシャン樹海の深層は魔素が濃いため、Cランクモンスターが現れる。
それと種類が少ないのも、これが関係していそうだ。
まあそういう訳で、生贄を集めるのはまだまだ時間がかかりそうである。
ちなみにこれでようやく、他と合わせて生贄の点数が500点を少し超えたくらいだ。
先は長い。
故にここからは、人海戦術で行くことにする。
召喚するのは当然、リビングアーマー千体だ。
種族:リビングアーマー
種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(小)】
【技量上昇(小)】【マナドレイン】
【自動修復】
そして千体を十体一組の分隊にして、合計百分隊ほど用意する。
加えて所持している武器をできる限り渡してから、樹海内に送り込んだ。
俺は更地に待機して、アロマラビットのリラックスアロマで魔力の回復に専念する。
流石にこの数の召喚は、かなり無理があった。
アロマラビットがいなければ、魔力回復量がマイナスになっていただろう。
また自然魔力回復速度上昇(中)も、いい仕事をしている。
動かず楽な姿勢をとりながら、何か食べ続けることでギリギリ均衡を保っていた。
なお食事をすると、その質によって自然回復量が増える。
それと周囲はレフやホブン、グインに守らせた。
ちなみにジョンはいなくても変わらないので、カードに戻している。
そうしてしばらく待っていると、リビングアーマーたちが獲物を運んできた。
Dランクが多めだが、Cランクもいる。
俺の軍団指揮による補正と、数と武器で有利に戦ったようだ。
他にもリビングアーマーは、マナドレインのスキルで相手から魔力を奪うことで、俺が渡す魔力量を減らすことにも貢献してくれた。
それにより魔力に余裕が出てきたので、超級生活魔法を活用して棍棒を作っていく。
材料は、当然樹海の木である。
更地にする過程で、大量に貯蔵してあった。
それとどうやら生活魔法の貯蔵に入れてあるものは、そのまま解体の生活魔法でバラすことができるようだ。
更にそこから製作の生活魔法で、貯蔵内部の木材から棍棒を作り出す。
この三つの生活魔法は、元々組み合わせて使用することが前提だったようである。
そうして次々に棍棒を作り出し、戻ってきたリビングアーマーの中で武器を持っていない個体に渡していった。
すると武器を持ったことで効率が良くなったのか、モンスターが運ばれる頻度が増えてくる。
俺が直接動くよりも、こっちの方が効率がいいな。
千体をオーバーレボリューションで一体にするつもりだが、ここまで使えると悩む。
しかし元々そのためにここに来たので、やはり予定通り融合させることに決める。
それから順調に狩りが進んでいくが、中にはやられてしまう個体もいた。
リビングアーマーは防御面で優れているが、戦いを続けていれば消耗していく。
加えてアサシンクロウが相手の場合、基本的に不意打ちを喰らってからの戦いになっているようだ。
やられるのは、仕方がない。
けれども十二時間経てば、問題なく復活するはずだ。
おそらくこれが、カード召喚術の正しい使い方だろう。
術者自身が戦う方が、本来異端なのだ。
二重取りが無ければデミゴッドも選べなかったし、スキルも進化しなかった。
もし俺がカード召喚術だけしか持っていなければ、前に出て戦うことはしなかったかもしれない。
そんなことを思いながら、運ばれてくるモンスターをカード化していく。
また周囲のモンスターが減れば、その都度移動を繰り返す。
正に順調そのものだった。
しかしそんな時、事件が起きる。
ん? リビングアーマーが次々にやられているのか!?
短時間でいくつもの繋がりが消失したことに、俺は驚愕する。
そして実際手元には、十枚のカードが戻ってきた。
武器を持たせたリビングアーマー十体を倒す存在が、どうやらこの樹海にいるらしい。
もしかして、樹海の主だろうか?
これは、狙うしかないな。
俺はそう思い、他のリビングアーマーたちに捜索を命じる。
場所はリビングアーマーのやられた感覚から、おおよそ分かっていた。
予想では、Aランクだと思われる。
Bランクならば、ここまで短時間にやられる事はまず無い。
だが逆に、Aランクを超える存在ではないとも感じていた。
そうであれば、やられる直前のリビングアーマーから何かを感じていただろう。
俺の直感スキルも反応していなかった。
強いが、理不尽ではない。
やられる直前の繋がりから予想するに、概ね間違っていないと思われる。
むろん油断する気はないが、特出したスキルを所持していなければ、おそらく勝てない相手ではないだろう。
そうして待っていると、対象を発見したらしいので俺も現場へと向かう。
リビングアーマーたちには、それまでの足止めを命じておいた。
一度感覚を共有して確認しても良かったが、それよりも移動を優先する。
移動しながら使うのは、まだできそうになかった。
加えて、魔力もかなり足りていない。
自然回復量を増やすため食事を取り続けていたこともあり、魔力を回復するポーションの使用も難しかった。
なので少しでも、魔力の消費を抑えたい。
またその間にも、どんどんリビングアーマーの数が減っていく。
だがそれ以上にリビングアーマーが集まってきているので、十分間に合うだろう。
加えて減る速度から見ても、やはりいいところAランクモンスターだと思われる。
敵の姿は気になるが、それは辿り着けば分かることだ。
それにリビングアーマーに問いかければ、ある程度の情報が送られてくる。
敵の使う能力についても、概ね把握した。
油断はしないが、十分に対処はできる。
そうしてリビングアーマーが百体ほどやられた頃、俺は目的地に辿り着いた。
「グォオウ!」
あれが、この樹海の主か。
それはぱっと見、空色の虎だった。
体中には、電気のようなものを纏っている。
俺はすぐさま、鑑定を発動した。
種族:スパークタイガー
種族特性
【雷属性適性】【雷耐性(大)】
【蓄電】【放電】【威圧】【気配感知】
【サンダーブレイク】【エレクトリックムーブ】
能力を見た感じだと、やはり雷系スキルを操るAランクのモンスターか。
エクストラや通常スキルが無いので、特殊な個体ではないようだ。
「にゃにゃ!」
するとレフが敵を見て、俺にあることを伝えてくる。
なるほど。あいつを次のフュージョン素体にしたいのか。
確かに、レフとの相性は良さそうだ。
同じ猫科だろうし、歪な姿になる可能性は低いだろう。
Aランクモンスターは貴重だが、レフを強くした方が良いと判断した。
「わかった。アレはレフにやろう」
「にゃっ!」
俺がそう言うと、レフは自分が戦うと声を上げる。
フュージョンするのであれば、それが筋だと言う。
レフの種族であるグレネスレーヴェは、おそらくBランクだ。
エクストラや俺の軍団指揮の効果など考えれば、勝てる可能性は十分にある。
「そうか、なら全力で行け」
「グルオウ!」
俺の言葉を聞いたレフは、縮小を解いて本来の大きさに戻った。
サイズを比べると、レフの方が断然大きい。
だが大きさなど、高ランクの戦いでは不利になることもある。
さて、レフはどのように戦うのだろうか。
窮地になればもちろん助けに入るが、できる限り全力でやらせよう。
そうして、レフとスパークタイガーの戦いが始まった。
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