108 リジャンシャン樹海 ④

 あれから数日かけて、狩りを続けていた。

 ジャイアントサーペントは比較的手に入ったが、他の二種が中々集まらない。

 なので途中からは、Dランクのモンスターも生贄の数合わせのために集め始めた。

 そしてこの樹海に来てから集めたカードは、次の通りになる。

【Cランク】
 ・ジャイアントサーペント 56枚
 ・アサシンクロウ 22枚
 ・アプルトレント 18枚

【Dランク】
 ・オーク 123枚+元々所持していた50枚=173枚
 ・ホブゴブリン 82枚+元々所持していた50枚=132枚
 ・スリーピングバタフライ 46枚
 ・トレント 32枚

 ダンジョンとは違って、集まりが悪い。

 理由はダンジョン種とは違い自然種だと、倒せば数が簡単に補充されないからだろう。

 またダンジョン種が積極的に襲ってくるのに対して、自然種は警戒心も強く、勝てない相手へ無理に挑む個体が少ない。

 一応自然種も空気中の魔力、魔素によって自然発生するが、ダンジョンよりも発生は遅いようだ。

 ちなみに街や村などでは、人が空気中の魔素を中和するため、モンスターが自然発生しないらしい。

 俺もその点は詳しくは知らないが、人通りの多い場所も同様とのこと。

 この魔素が濃いほど強く、また周囲の環境によって発生するモンスターが変わるらしい。

 なのでこのリジャンシャン樹海の深層は魔素が濃いため、Cランクモンスターが現れる。

 それと種類が少ないのも、これが関係していそうだ。

 まあそういう訳で、生贄を集めるのはまだまだ時間がかかりそうである。

 ちなみにこれでようやく、他と合わせて生贄の点数が500点を少し超えたくらいだ。

 先は長い。

 ゆえにここからは、人海戦術で行くことにする。 

 召喚するのは当然、リビングアーマー千体だ。

 種族:リビングアーマー
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(小)】
【技量上昇(小)】【マナドレイン】
【自動修復】

 そして千体を十体一組の分隊にして、合計百分隊ほど用意する。

 加えて所持している武器をできる限り渡してから、樹海内に送り込んだ。

 俺は更地に待機して、アロマラビットのリラックスアロマで魔力の回復に専念する。

 流石にこの数の召喚は、かなり無理があった。

 アロマラビットがいなければ、魔力回復量がマイナスになっていただろう。

 また自然魔力回復速度上昇(中)も、いい仕事をしている。

 動かず楽な姿勢をとりながら、何か食べ続けることでギリギリ均衡きんこうを保っていた。

 なお食事をすると、その質によって自然回復量が増える。

 それと周囲はレフやホブン、グインに守らせた。

 ちなみにジョンはいなくても変わらないので、カードに戻している。

 そうしてしばらく待っていると、リビングアーマーたちが獲物を運んできた。

 Dランクが多めだが、Cランクもいる。
 
 俺の軍団指揮による補正と、数と武器で有利に戦ったようだ。

 他にもリビングアーマーは、マナドレインのスキルで相手から魔力を奪うことで、俺が渡す魔力量を減らすことにも貢献してくれた。

 それにより魔力に余裕が出てきたので、超級生活魔法を活用して棍棒を作っていく。

 材料は、当然樹海の木である。
 
 更地にする過程で、大量に貯蔵してあった。

 それとどうやら生活魔法の貯蔵に入れてあるものは、そのまま解体の生活魔法でバラすことができるようだ。

 更にそこから製作の生活魔法で、貯蔵内部の木材から棍棒を作り出す。

 この三つの生活魔法は、元々組み合わせて使用することが前提だったようである。

 そうして次々に棍棒を作り出し、戻ってきたリビングアーマーの中で武器を持っていない個体に渡していった。

 すると武器を持ったことで効率が良くなったのか、モンスターが運ばれる頻度が増えてくる。

 俺が直接動くよりも、こっちの方が効率がいいな。

 千体をオーバーレボリューションで一体にするつもりだが、ここまで使えると悩む。

 しかし元々そのためにここに来たので、やはり予定通り融合させることに決める。

 それから順調に狩りが進んでいくが、中にはやられてしまう個体もいた。

 リビングアーマーは防御面で優れているが、戦いを続けていれば消耗していく。

 加えてアサシンクロウが相手の場合、基本的に不意打ちを喰らってからの戦いになっているようだ。

 やられるのは、仕方がない。

 けれども十二時間経てば、問題なく復活するはずだ。

 おそらくこれが、カード召喚術の正しい使い方だろう。

 術者自身が戦う方が、本来異端なのだ。

 二重取りが無ければデミゴッドも選べなかったし、スキルも進化しなかった。

 もし俺がカード召喚術だけしか持っていなければ、前に出て戦うことはしなかったかもしれない。

 そんなことを思いながら、運ばれてくるモンスターをカード化していく。

 また周囲のモンスターが減れば、その都度移動を繰り返す。

 正に順調そのものだった。

 しかしそんな時、事件が起きる。

 ん? リビングアーマーが次々にやられているのか!?

 短時間でいくつもの繋がりが消失したことに、俺は驚愕きょうがくする。

 そして実際手元には、十枚のカードが戻ってきた。

 武器を持たせたリビングアーマー十体を倒す存在が、どうやらこの樹海にいるらしい。

 もしかして、樹海の主だろうか?

 これは、狙うしかないな。

 俺はそう思い、他のリビングアーマーたちに捜索を命じる。

 場所はリビングアーマーのやられた感覚から、おおよそ分かっていた。

 予想では、Aランクだと思われる。

 Bランクならば、ここまで短時間にやられる事はまず無い。

 だが逆に、Aランクを超える存在ではないとも感じていた。

 そうであれば、やられる直前のリビングアーマーから何かを感じていただろう。

 俺の直感スキルも反応していなかった。

 強いが、理不尽ではない。

 やられる直前の繋がりから予想するに、概ね間違っていないと思われる。

 むろん油断する気はないが、特出したスキルを所持していなければ、おそらく勝てない相手ではないだろう。

 そうして待っていると、対象を発見したらしいので俺も現場へと向かう。

 リビングアーマーたちには、それまでの足止めを命じておいた。

 一度感覚を共有して確認しても良かったが、それよりも移動を優先する。

 移動しながら使うのは、まだできそうになかった。

 加えて、魔力もかなり足りていない。

 自然回復量を増やすため食事を取り続けていたこともあり、魔力を回復するポーションの使用も難しかった。

 なので少しでも、魔力の消費を抑えたい。

 またその間にも、どんどんリビングアーマーの数が減っていく。

 だがそれ以上にリビングアーマーが集まってきているので、十分間に合うだろう。

 加えて減る速度から見ても、やはりいいところAランクモンスターだと思われる。

 敵の姿は気になるが、それは辿り着けば分かることだ。

 それにリビングアーマーに問いかければ、ある程度の情報が送られてくる。

 敵の使う能力についても、概ね把握した。

 油断はしないが、十分に対処はできる。

 そうしてリビングアーマーが百体ほどやられた頃、俺は目的地に辿り着いた。

「グォオウ!」

 あれが、この樹海の主か。

 それはぱっと見、空色のとらだった。

 体中には、電気のようなものをまとっている。
 
 俺はすぐさま、鑑定を発動した。

 種族:スパークタイガー
 種族特性
【雷属性適性】【雷耐性(大)】
【蓄電】【放電】【威圧】【気配感知】
【サンダーブレイク】【エレクトリックムーブ】

 能力を見た感じだと、やはり雷系スキルを操るAランクのモンスターか。

 エクストラや通常スキルが無いので、特殊な個体ではないようだ。

「にゃにゃ!」

 するとレフが敵を見て、俺にあることを伝えてくる。

 なるほど。あいつを次のフュージョン素体にしたいのか。

 確かに、レフとの相性は良さそうだ。

 同じ猫科だろうし、いびつな姿になる可能性は低いだろう。

 Aランクモンスターは貴重だが、レフを強くした方が良いと判断した。

「わかった。アレはレフにやろう」
「にゃっ!」

 俺がそう言うと、レフは自分が戦うと声を上げる。

 フュージョンするのであれば、それが筋だと言う。

 レフの種族であるグレネスレーヴェは、おそらくBランクだ。

 エクストラや俺の軍団指揮の効果など考えれば、勝てる可能性は十分にある。

「そうか、なら全力で行け」
「グルオウ!」

 俺の言葉を聞いたレフは、縮小を解いて本来の大きさに戻った。

 サイズを比べると、レフの方が断然大きい。

 だが大きさなど、高ランクの戦いでは不利になることもある。

 さて、レフはどのように戦うのだろうか。

 窮地きゅうちになればもちろん助けに入るが、できる限り全力でやらせよう。
 
 そうして、レフとスパークタイガーの戦いが始まった。

 

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