100 帰り道での成果確認

 ラブライア王国の王都ラブアは、混乱状態のようだ。

 上空からでもそれが、よく分かる。

 おそらく魔道具が壊れたことで、ツクロダの死を理解した信者が発狂したのだろう。

 中には自壊の理由を知る、高位の信者もいたはずである。

 それがいくつも起こり、王都中にツクロダの死が知れ渡ったのだと思われた。

 落ち着いたら信者一同で復讐に動く予感がするが、この様子であればしばらくは大丈夫だろう。
 
 一通り確認を終えると、俺は念のため直接西には行かず、南へと飛んでいく。

 ちなみに俺に気が付いた者は結構いたが、何かするほどの余裕は無いようだった。

 そうして一度南から大きく迂回うかいする形で、オブール王国へと向かう。

 行きとは違い、多少の余裕があった。

 なので気になった事などを、この機会に確認する。

 まずは、新たに取得した称号についてだ。

 名称:神授滅師
 効果
 ・神授スキルを滅する時の抵抗を減少させる。
 ・自身の神授スキルに対して神滅耐性(中)を付与する。
 ・神授スキルを滅した際に得られる神授石の効果を増加させる。

 効果はおおよそ予想通りだが、一つ見逃せない部分があった。

 神滅耐性ということは、神滅属性があるという訳か……。

 デミゴッドの俺にとって、これは致命的な属性だろう。

 一応種族特性で、属性耐性(特大)はある。

 しかしそれでカバーできない可能性は、十分高いだろう。

 もしかしたら、神滅属性を持つ神授スキルを所持する転移者がいるかもしれない。

 俺にとってそいつは、正に天敵になる。

 この情報を知れたのは、幸いだった。

 それとあの白い球体は、神授石という名称らしい。

 まあ、それについてはどうでもいいか。

 あと現状俺は、相手の神授スキルを滅する方法を持っていない。

 けれども自身の神授スキルに神滅耐性が付与されたことには、大きな意味がある。

 中には物理的に勝てない相手の神授スキルを滅することで、変則的な勝ちを狙う方法もあるかもしれない。

 そうした方法を使う敵と出会った時、この神滅耐性が効果を発揮する。

 神授スキルは強大な力だが、同時に転移者にとっては大きな弱点になってしまった。

 これからはそのことについても、注意していくことにしよう。

 またあの白い光の柱は、もしかしたら神滅属性かもしれない。

 一瞬だったが、かなりの身の危険を感じた。

 俺がアレを喰らった場合、生き残ることはできないと思われる。

 まあ弱点でなくても、普通に消し飛ばされそうだが。

 ちなみにあの時ブラッドだけがピンポイントで消されており、地面には一切影響がなかった。

 正に、神の一撃と呼べるものだろう。

 とりあえず称号については、これくらいでいいか。

 さて次は、ポイントについて考えよう。

 ブラッドを倒したことによるポイントも入ったことで、現在70ポイントある。

 ちなみにブラッドが得たであろうポイントは、譲渡されないようだ。

 残念だが、仕方がない。

 スキルのランクアップ先は、次の通りとなっている。

【スキル】
 ・上級生活魔法→超級生活魔法 50
 ・シャドーアーマー→ダークアーマー 50
 ・軍団行動→総軍行動 50
 ・軍団指揮→総軍指揮 50
 

 どうやら超級鑑定妨害・全感共有・以心伝心+は、ランクアップ先が無いらしい。

 なのでこの四つの中からランクアップさせるか、新たにスキルを取得してそれをランクアップさせるかになる。

 けれども俺は、どれをランクアップさせるか事前に決めていた。

『ポイントを使用したことにより、【上級生活魔法】は【超級生活魔法】にランクアップしました』

 そう、俺がランクアップさせたのは上級生活魔法。

 理由は言う必要がないくらい、ここまで役に立ったからだ。

 ツクロダ戦では、生活魔法の魔充がなければ負けていたかもしれない。

 他にも様々な場面で、生活魔法は役に立っている。

 シャドーアーマーをランクアップさせるのもよかったが、汎用性の高い生活魔法を俺は選んだ。

 そして超級生活魔法の内容は、この通りになる。

 名称:超級生活魔法
 効果
 次の魔法が使用可能になる。
 ・種火 ・飲水 ・微風 ・土塊
 ・光球 ・暗闇 ・清潔 ・氷塊
 ・魔充 ・植育 ・修理 ・調整
 ・解体 ・貯蔵 ・製作 ・治療

 新たに増えたのは、解体・貯蔵・製作・治療だった。

 名称からある程度効果を予想できるが、道中で使い方を調べることにする。

 そうして俺は、野営の都度新たな生活魔法を試していく。

 まず解体は倒したモンスターに使うことで、文字通り解体してくれる。

 生きていると、発動はしなかった。

 意識すれば、思った通りの大きさや形に解体することができる。

 もちろん、元のサイズを超えるような解体は不可能だ。

 便利といえば便利だが、俺にとってはそこまで必要なさそうである。

 次に貯蔵だが、これは完全にストレージの劣化版だった。

 魔力量によって、収納できる大きさが変わるようである。

 また収納時の経過時間は、およそ半分ほどだ。

 コップに入れたお湯を収納してみたところ、そんな感じだった。

 加えて収納するには、対象に触れていなければならない。
 
 おそらく、俺が使うことはほぼないだろう。

 ストレージが無ければ大当たりなのかもしれないが、俺にとってはハズレとなってしまった。

 続いて三つ目の製作は、素材を元に様々な物を作ることができる。

 魔力と操作能力、集中力次第では、簡単なログハウスなどを作ることができるだろう。

 しかし複雑な物は作れそうにないので、魔道具の製作は無理だ。

 それとこれは途中で気が付いたのだが、どうやら貯蔵に入れていた素材を使って製作することができるようである。

 目の前に素材を用意しなくてもいいのは、便利かもしれない。

 なおストレージに入っている素材は直接使えなかったので、これは同じ生活魔法だからだろう。

 使わないと思っていたが、製作に必要そうで劣化が遅そうな物は貯蔵に入れておくことにする。

 そして最後に治療だが、これは回復魔法だった。

 魔力や操作能力、集中力次第では大怪我も治すことができる。

 しかし部位欠損までは、治すことはできない。

 病気については、不明だ。

 ちなみに、野生のゴブリンで実験してこれを知った。

 人相手でも、おそらく同様の効果を期待できるだろう。

 この治療が、戦闘中で一番役に立ちそうである。

 戦闘中ポーションを服用するよりも、こちらの方が早い。

 またポーションでは、相手が服用するのを妨害してくることもあるだろう。

 だがこの治療であれば、気づかれにくいし対処が難しいはずだ。

 それとこの治療も、対象に触れている必要がある。

 ゴブリンに触れるのは嫌だったが、実験のために諦めた。

 もちろんその後に、生活魔法の清潔を使っている。

 なお自分自身であれば、念じるだけで怪我した部位に発動することができた。

 そんな感じで、超級生活魔法の確認はとりあえず以上だ。

 最後に、最も気になっていたオーバーレボリューションについて考える。

 簡単に説明すると、同じ種類のカード複数枚を、一枚のカードへと進化させる能力だ。

 だがそのためには、生贄いけにえが必要になる。

 使用するカードのランクと、枚数によって必要な生贄の内容が変わる感じだ。

 そしてその生贄にするモンスターだが、これはカード化したブラッドにになってもらう。

 一応転移者だし、生贄としては最上だと思われる。

 ブラッドを召喚して使う気にはならないので、これが一番良い使い道だろう。

 不思議と罪悪感も全く無いし、問題はない。

 また指定するカードだが、これはリビングアーマー千枚にする予定だ。

 同種類のカード化上限が千枚である以上、このオーバーレボリューションで一番効果が高いことになる。

 他のモンスターを千枚集めるのは大変だし、なによりリビングアーマーはCランクだ。

 同ランクのカードを千枚集めるのは、手間がかかりすぎる。

 数は力だが、まずは強力な個体が欲しい。

 なので俺はリビングアーマー千枚を、オーバーレボリューションすることにした。

 道中開けた場所に下りてさっそくと思ったのだが、そこでつまずいてしまう。

 どうやらブラッドだけでは、生贄が足りないようである。

 いらないカードを追加してみるが、それでもダメだった。

 これは落ち着いてから、オーバーレボリューション用にモンスターを集める必要がありそうだ。

 それにレフとの融合を解除したことで、幻影化と同様にカード化がしばらくできない。

 神授石での強化によって期間が半減しているが、それがどれくらいかは不明だ。

 オーバーレボリューションによってリビングアーマーがどうなるのかが楽しみなだけに、とても残念である。
 
 俺はそう思いながらグリフォンに乗ると、再びオブール王国にあるハパンナの街を目指すのであった。

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今回で100話突破しました!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
人生で初めて100話まで書けたので、とても嬉しいです。
これからも頑張ります!

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