050 ハパンナダンジョン ③

 おおっ、複数のものが入っているな。

 宝箱の中には、合計三つのアイテムが入っていた。

 一つ目はピンク色のポーション。

 名称:媚薬ポーション
 説明
 服用することで性的興奮を高める。

 これはハズレなので、スルーする事にした。

 次に二つ目は、棍棒。

 名称:スマッシュクラブ
 説明
 ・適性があれば装備中に限り、スキル【スマッシュ】を発動できる。
 ・この武器は時間経過と共に修復されていく。

 どうやら適性があれば、スキルを発動できる武器のようだ。

 これはちょうど良いので、ホブンに持たせることにする。

 大きさもオークサイズだったので、問題はなさそうだ。

「ゴブア!!」

 スマッシュクラブを渡すと、ホブンは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 使わなくなった棍棒は、ストレージにしまっておく。

 そして最後に三つ目は、スキルオーブだった。

 名称:集団指揮のスキルオーブ
 説明
 使用することで、集団指揮のスキルが習得できる。

 これは当たりだ。

 正直かなり欲しいと思ったので、とても嬉しい。

 俺は迷わずオーブを使用した。

『スキル【集団指揮】を習得しました』
『神授スキル【二重取り】が発動しました。スキル【集団指揮】を獲得しました』
『スキルが重複しているため、スキルが統合されました。スキル【集団指揮】は、スキル【軍団指揮】に進化しました』

 するといつもの通り、二重取りが発動して集団指揮は軍団指揮へと進化する。

 名称:軍団指揮
 効果
 ・一定数の味方の数に応じて、味方のあらゆる行動に補正がかかる。
 ・ある程度の距離や数が入り混じっていても、狙った個体と情報共有などの意思疎通が容易になる。

 効果は軍団行動とほぼ同じのようだ。

 違いは一定数の味方の数に応じて、自分ではなく味方のあらゆる行動に補正がかかることだろう。

 二つ目の効果は全く同じだが、以前より情報共有や意思疎通がしやすくなっている気がする。

 もはや普通に会話するレベルで、モンスターの気持ちが分かるな。

 ホブンなど、武器を貰ったことで改めて忠誠を誓うと考えている。

 レフは少しずつ自分の実力が敵より劣ってきていることに、あせりを感じているようだ。

 あとは俺自身が激しい戦闘中でも、モンスターに命令を送れると思う。

 この二つがそろったことで、俺はカード召喚士として更なる高みに登ることができた。

 さて、ここからは手に入れたハイオークに道案内をさせよう。

「いでよ、ハイオーク」
「ブヒ!」

 ハイオークは普通のオークより一回り大きく、肌の色は青い。

 なおこれまで案内させていたオークは、既にカードへと戻している。

 そうして再び宝箱探しを始めるが、残りは普通の宝箱しか見つからなかった。

 もしかしたらハイオークが守っていた場所に、集約されていたのかもしれない。

 いつもより宝箱は大きく、中身も複数だった。

 それと今思えば、ハイオークが率いた集団を攻略するのはとても難しいだろう。

 道中ハイオークにパワーアップを使わせたが、ホブンの攻撃の威力が目で分かるほど上昇した。

 加えてハイオークは、集団指揮も所持している。

 後ろに控えているだけで、オークが強化されるのだ。

 宝箱の内容が三つだったとしても、戦うのは割に合わないかもしれない。

 俺もホワイトキングダイルがいなければ、モンスター軍団の被害はかなりのものになっていただろう。

 ちなみに、ハイオークの集団指揮は効果が出ていない。

 どうやらこの集団を率いているのは、俺と判断されているようだ。

 指揮系スキルは、指揮していないと効果が現れないらしい。 
 
 それから宝箱をある程度回収した俺は、ようやく六階層目に辿り着くのだった。

 ◆

 ここが六階層目、つまり最終階層か。

 ハパンナダンジョンは、全六階層という情報を事前に得ている。

 なのでこの先に、ボス部屋があるはずだ。

 ダンジョンボスをカード化したい気持ちはあるが、それをしてしまうとダンジョンが崩壊してしまう。

 ここのダンジョンは街にとって重要そうなので、カード化することははばかられる。

 ホブンが強いだけに、とても残念だ。

 そんなことを考えながら、先へと進む。

 するとさっそく、モンスターが姿を現した。

「……」
「スライムか?」

 それはオレンジ色をしたスライムであり、バスケットボール程の大きさをしている。

 種族:アシッドスライム
 種族特性
【強酸】【酸弾】【分裂】
【再生】【酸耐性(大)】

「まずいっ」

 その能力を見た時には、アシッドスライムが酸弾を撃ち込んできた。

 瞬間的に命令を出し、回避させる。

「ゴッブア!」

 そしてホブンにさっそく、スマッシュの発動を命じた。

 勢いよく振り下ろされる棍棒に、淡い光が纏う。

「……」

 アシッドスライムはそれを避けられず、周囲へと飛び散った。

 すると飛び散った一部が、レフの尻尾を焼く。

「きゃいん!」

 倒すことは問題なさそうだが、その後がやっかいだな。

 余っているポーションをレフの尻尾にかけてやり、傷を癒す。

 だが、アシッドスライム自体はかなり使えそうだ。

 俺はカード化したアシッドスライムを眺めて、笑みを浮かべる。

 普通のスライムはザコだったが、上位種なった途端凶悪になった。

 能力も申し分ないので、数をそろえることにする。

 それとホブンのスマッシュは、かなり強力だった。

 あの威力であれば、もしジャイアントボアと再戦することになっても、余裕で勝てるだろう。

 さて、この階層には他にどのようなモンスターが現れるのか、楽しみだ。

 しかし、アシッドスライムに不意打ちを喰らえば面倒になる。

 なので生贄の先導役に、ゴブリンを召喚して歩かせることにした。

「ごぶ!」

 召喚したゴブリンは、まかせろ! といった風に声を上げて歩き出す。

 すると少しして、ゴブリンに何かが飛び掛かる。

「ごぎゃっ!?」
「グルオゥ!」

 それはしなやかな体躯たいくをしている、黒豹くろひょうだった。

 ゴブリンは一瞬で頭を噛み砕かれ、やられてしまう。

 こいつは、実に強そうだな。

 俺は黒豹を前に、笑みを浮かべた。

 

ブックマーク
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA