048 ハパンナダンジョン ①

 それから召喚したスモールマウスに道案内してもらい、俺は二階層目に辿り着く。

 ちなみに、宝箱は探してはいない。

 人が多いし、何より一階層目ではたかが知れているだろう。

 探すとしても、三階層目以降になる。

 そして二層目になってお役御免になったスモールマウスをカードに戻し、先へと進む。

「ごぶ!」
「ごぶぶ!」

 ゴブリンって、どこにでも出るんだな。

 今のところダンジョン皆勤賞のゴブリンを倒しながら、俺はそんなことを思う。

 ゴブリンは正直もういらないから、他の道案内役のモンスターが欲しいところだ。

「ウォン!」
「ごぎゃっ!」

 それと今回は、レフにもダンジョン内で戦わせる。

 こうして頻繁に戦わせていれば、幻影化できるようになるかもしれない。

 少しでも可能性があるなら、試してみるべきだ。

 ちなみにホブンは目立つので、出すとしても三階層目だな。

 二階層目は、まだ駆け出し冒険者も多い。

 出てくるモンスターも、見たことがあるものばかりだ。

「キシャ!」
「おっ、グリーンキャタピラー」

 するとノブモ村で散々見かけたモンスター、グリーンキャタピラーが現れる。

 種族:グリーンキャタピラー
 種族特性
【糸吐き】【自然治癒力上昇(小)】

 種族特性は想像通りだ。糸吐きは何かと使えそうなので、コイツも三十枚ほど確保しておこう。

 そうしてグリーンキャタピラーも倒してカード化しつつ、他に持っていないモンスターがいないか探す。

 しかし結局二階層目にいるモンスターは、ゴブリン・グリーンキャタピラー・スライム・スモールマウスだけだった。

 なので二階層目でスモールマウスをカード化して、再び道案内をさせる。

 そしてしばらく経って三階層目にやってきたが、そこで増えたのはまさかのオーク。

 オークは既に五十枚もあるし、ゴブリン以上にいらない。

 そのように考えていたところ、次に現れたのはホブゴブリンだった。

「ゴブ?」
「おおっ、ホブゴブリン」

 種族:ホブゴブリン
 種族特性
【悪食】【病気耐性(小)】【他種族交配】
【腕力上昇(小)】

 鑑定してみると俺のホブンとは違い、エクストラのダンジョンボスはもちろんのこと、棍適性も無かった。

 しかし普通のゴブリンよりは強いので、カード化して損はない。

「ゴブアッ!?」

 俺はホブゴブリンの首を回し蹴りでへし折ると、カード化を行った。

 よし、新たにホブゴブリン部隊を作ろう。

 オークと同等の強さなので、同数の五十枚あればいいか。

 少し多いが、地道に集めていこう。

 だがまずは、ダンジョン踏破が先だ。

 出てくるモンスターをすべて把握してから、改めて集めることにする。

 当然道中で出くわせば、必ずカード化しておくが。

 あとは、ホブンも出しておこう。

「ホブン、出てこい」
「ゴッブ!」

 新たに召喚したホブンの手には、この前折れてしまった棍棒がある。

 だがそれは既に上級生活魔法の修理で直してあるので、問題はない。

 むしろ調整も施して、ホブンの体格ピッタリになり、以前より使いやすそうなくらいだ。

 それから三階層で出現するモンスターは、ホブゴブリン・オーク・ゴブリン・グリーンキャタピラーだと判明した。

 ちなみに先ほどカード化したホブゴブリンに、道案内をさせている。

 それと同じホブゴブリンだが、俺のホブンの方が体格が良い気がするな。

 たたずまいもしっかりしているし、流石はダンジョンボスといったところか。

 俺はそんなことを思いながらも、途中休憩しつつ三階層目からは宝箱を探す。

 だが三階層目でも、宝箱はほとんど無かった。

 見つかったのも、硬貨やポーション類だけである。

 おそらくだが、冒険者が既に取りつくしているんだろう。

 ダンジョンは宝箱を補充するが、補充する端から取られている気がする。

 これはもっと下の層に行かないと、宝箱は無さそうだな。

 三階層目はオークが出るし、中堅冒険者の狩場になっていそうだ。

 そう考えた俺は、宝箱を諦めてこのまま四階層目に向かう。

 道中やけにホブゴブリンとの遭遇率が高いが、もしかしたら他の冒険者はホブゴブリンを見ると戦闘を避けるのかもしれない。

 まあオークと違って肉は食べられないみたいだし、狩っても利益は少ないのだろう。

 アイテムの消耗や怪我を考えれば、ホブゴブリンを避けてオークだけを狩るのは理にかなっている。

 しかし俺としては、逆にありがたい。

 オークのカードはいらないし、今はホブゴブリンが少しでも欲しいからな。

 そうして順調にホブゴブリンのカードを手に入れながら、四層目に辿り着いた。

 四層目も同じく洞窟が続くが、そこでとうとう初見のモンスターが現れる。

「ガメェ!」

 それは人が乗れるサイズの、巨大なリクガメ。

 ただ通常とは異なり、その背中には岩のようなものを乗せている。

 色合いはサーモンピンクに、所々白色が混じっていた。

 種族:ソルトタートル
 種族特性
【塩生成】【共生化】
【水属性適性】【水属性耐性(小)】
【物理耐性(小)】

 塩生成? もしかしてあれは岩塩なのか?

 それに共生化という、見慣れない種族特性も所持している。

「ブヒ!」
「ゴブブ!」

 するとソルトタートルというモンスターの背後から、オークとホブゴブリンが現れた。

 まるで、ソルトタートルを守るような立ち位置に見える。

 なるほど。共生化とはこういう事か。

 しかし、ダンジョンだと微妙だな。

 そもそもダンジョンだと、種族関係なく手を組むことがよくあるからだ。

「ブヒャ!」
「ギャッ!」

 俺が難なくオークとホブゴブリンを倒すと、ソルトタートルは甲羅の中に引っ込む。

 だが穴から剣を差し込んでみると、あっさりと倒れてしまった。

 ふむ。戦闘は苦手のようだ。

 本来であれば、かなり有用な能力なのだろう。

 共生化とは何かを与え続けている限り、自身を守らせる契約を結ぶ効果があるようだ。

 ソルトタートルの場合、背中の岩塩が対価なのだと思われる。

 しかし岩塩か……今日は久々に、マッドクラブを食べることにしよう。

 多くをストレージの中に溜め込んでいるが、次いつ手に入るかは分からない。

 なので俺はマッドクラブを節約しながら、少しずつ消費していた。

 それと四階層目も、冒険者が多い。

 狙いは当然、ソルトタートルの岩塩だ。

 他に出現するのはホブゴブリンとオークだけなので、むしろ三階層目より稼げるだろう。

 ここでもホブゴブリンは余っているようで、遭遇率が高い。

 だができれば、ソルトタートルも数を揃えておきたいんだよな。

 岩塩が大量に手に入るようになれば、いつか役に立つかもしれない。

 俺は四階層目も、新たにカード化させたホブゴブリンに案内させる。

 またここでも、宝箱はほとんど無かった。

 三階層目より狩りをしている冒険者が多そうなので、それも仕方がないだろう。

 それとこの階層にいるテイマーの冒険者は、オークを連れていることが多い。

 ホブゴブリンの割合は少なかった。

 オークの方が、扱いやすいという事だろうか?

 どちらも性欲が強く、欲望に忠実なモンスターだ。

 違いがあるとすれば、ホブゴブリンはゴブリンの上位種という事だろう。

 おそらく、ホブゴブリンはオークよりプライドが高い。

 なのでテイムしようとしても、上手く行きづらい可能性がある。

 結果として従えるのであれば、オークの方が楽なのだろう。

 俺の予想は、そこまで間違っていないと思われる。

 さて、探索もほどほどに、そろそろ休む場所を見つけるか。

 気が付けば長いこと潜っているので、今日の野営場所を探す。

 結構サクサク下りてきたが、ダンジョンは広く階層を経るごとに、それは増している。

 俺の腹時計は、夕食時だと告げていた。

 そうして丁度よいコの字型の場所を見つけたので、今日はここに泊まることにする。

 

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