112 ダガルマウンテン ②

 道中は進めば進むほど、険しくなっていく。

 足場が悪くなり、戦闘もしづらい。

 だがこの山に住むモンスターたちは、慣れているのか動きに無駄が少なかった。

 また次第にDランクだけではなく、Cランクのモンスターも姿を見せ始める。

 
 種族:ロックイヤーウィグ
 種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【鋏強化(中)】【気配感知】
【硬化】【擬態】

 種族名からは想像しづらいが、見た目は巨大なハサミムシのようだ。

 大きさは約三メートルほどあり、体表は黒っぽい岩のようにも見える。

 普段は岩に擬態しているみたいだが、好戦的なのか敵意が分かりやすかった。

 加えて後部にあるハサミさえ気をつければ、問題はない。

 だが挟まれてしまえば、おそらくホブンなどは両断されてしまうだろう。

 それと硬化も使用できるので、攻撃も効きづらかった。

 剣や槍などでは、相性が悪く強敵となるだろう。

 しかしホブンの打撃攻撃はよく効いたこともあり、意外とすぐに倒すことができた。

 このモンスターは普通に使えそうなので、いくつか確保しておきたい。

 俺はそう思いながら、ロックイヤーウィグをカード化した。

 それと何気に、リジャンシャン樹海のCランクモンスターよりも、コイツの方が強そうだ。

 やはり、それだけこの山の魔素が濃いということだろう。

 これは他のCランクモンスターにも、期待ができる。

 まさかCランクモンスターが、コイツだけということはないはずだ。

 更にその上には、Bランクモンスターもいる。

 リジャンシャン樹海よりも、良い結果になりそうだ。

 それからモンスターを狩りつつ、アサシンクロウに上空から偵察をさせる。

 なるべく進みやすい場所を選び、俺たちは向かう。

 普通なら時間がかかりそう箇所かしょも、楽々越えていく。

 少し険しい場所も、レフのダークネスチェインがあれば安全だ。

 それにどうしても無理そうであれば、召喚転移もある。

 ちなみに、召喚転移で頂上まで行くということはしない。

 道中のモンスターをカード化したいというのもあるが、山登りも案外楽しいものだ。

 他にも何かに使えるだろうと思い、黒っぽい岩などを収納していく。

 落としても良いし、素材としても使える。

 試しに貯蔵内で解体してみると、僅かだが磁鉄鉱が取れた。

 これはもしかして、剣とか作れるかもしれない。

 その後休憩時間中に、守りを固めてから一度剣を作ってみる。

 うーん。

 剣っぽいものはできたが、おそらくはなまくらだ。

 また元々所持していた木炭の炭素と鉄を製作で合わせ、無理やり鋼鉄を作り出した。

 しかし魔力消費がとても悪く、集中力もかなり必要なので効率がとても悪い。

 これを量産するのは、難しそうだ。

 そしてその鋼鉄から剣を作ってみたものの、やはり微妙である。

 超級生活魔法の製作で、様々な工程を省略したからだろうか。

 加えて製作は所詮生活魔法なので、細かいことまではできないからだろう。

 むしろ性能が低いとしても、鋼の剣が出来ただけで上出来だ。

 それとたぶん、緑斬リョクザンのウィンドソードと比べてしまうのもある。

 あれは切れ味も良く能力までついているので、まあ仕方がない。

 この鋼の剣は量産こそ面倒だが、最低限モンスターに持たせる分には使えるだろう。

 それともし俺に鍛冶関連の知識があれば、もっと凄い物が作れたのだろうか?

 いや、たぶん無理そうだな。

 一瞬そうは考えたものの、結果としてそこそこの出来で終わる気がした。

 加えて製作の能力にも、限界がありそうだ。

 それに技術力の高い鍛冶師や、ダンジョン産の凄い魔剣には負けるだろう。

 たぶんこれについては、直感のスキルもそう告げている。

 なのでこの考えは、おそらく間違ってはいないだろう。
 
 そう考えるとやはり、俺の作った武器はモンスター用が精々になる。

 自分の武具やホブンなどの主力モンスター用の武具は、別で手に入れた方がいい。

 とりあえずその事が分かっただけで、今は十分だ。

 同時にモンスター用の武具のため、俺は道中暇さえあれば岩を収集する事を決めた。

 ちなみにもしかしたら鉱脈などもあるかもしれないが、そこまでする気はない。

 場所が分からないし、手間がかかりすぎる。

 またあの小さな国境門がいつ閉まるか分からない以上、あまり時間はかけられなかった。

 いつか何かしらの鉱石が大量に必要で、掘削する機会があればその時に行おう。

 そうして俺は休憩を終えると、準備を整えて再び山頂を目指して歩き出す。

 次第にDランクモンスターは姿を消していき、Cランクモンスターが増えていく。

 当然その中には、初見のCランクモンスターもいた。

 
 種族:ロックベアー
 種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【腕力上昇(中)】【物理耐性(中)】
【激怒】【威圧】

 それは岩でできた熊であり、一種のゴーレムにも思える。

 単純な力自体はロックイヤーウィグより上であり、動きも素早い。

 追い詰められると激怒を発動させて、身体能力を上昇させる。

 注意するべき大技は無いが、シンプルに強い。

 だがレフのダークネスチェインで縛り、ホブンのスマッシュで頭部を破壊すれば楽勝だった。

 また俺も剣からウィンドカッターを放てば、簡単に頭部を斬り飛ばすことができる。

 これは俺が強いというよりも、魔法への耐性が低いのだろう。

 たぶんこの山に出現するモンスターは、物理に強く魔法に弱い気がする。

 まあ弱いと言っても、耐性が低いから攻撃が入りやすいというだけなのだが。

 そう思いながらも、俺はロックベアーをカード化していくのだった。

 あとは特筆するべきことはなく、順調に進んでいく。

 そしてとうとう、目的のモンスターを発見した。

 種族:ロックゴーレム
 種族特性
【地属性適性】【地属性耐性(中)】
【ストーンバレット】【硬化】【再生】
【物理耐性(中)】

 それは岩で形成された四メートルの巨人、ロックゴーレムだ。

 種族特性こそロックベアーの方が優勢に見えるが、根本的な地力が違う。

 種族としての元々のスペックは、圧倒的にロックゴーレムの方が上だ。

 加えてやっかいなのが、再生である。

 ホブンが体の一部を砕いても、あっという間に元通りになってしまう。

 加えてストーンバレットにより、自身の重鈍さを補っている。

 ディーバが使役していたが、手に入れるのはとても大変だっただろう。

 使役のために戦っている間も、他のモンスターへの対処も同時にする必要がある。

 なので使役するために、パーティ一丸になって奮闘ふんとうしたようだ。

 そのことをディーバが、自慢げに話していた事を思い出す。

 だが悲しいかな。ロックゴーレムはレフの一撃によって、簡単に倒されてしまう。

 魔力を込めたシャドーアーマーにより、以前と同様に全体を砕いたのだ。

 後は核を見つけ出して、破壊するだけである。

 まあディーバの育てたロックゴーレムに勝てた以上、負ける道理はない。

 そして俺は無事に、ロックゴーレムをカード化した。

「ロックゴーレム、ゲットだ」
「にゃん!」
「ゴブア!」
「ガァ!」

 俺がいつものように声を上げると、レフたちも続けざまに鳴く。

 新規で連れているアサシンクロウも、楽しげだ。

 さて、欲しかったロックゴーレムを手に入れたが、まだ山頂にはついていない。

 この山にも主が存在しているかもしれないし、いたら是非手に入れたいところだ。

 他にも、生贄の分を集める必要がある。

 この山でやることは、まだまだ多そうだ。

「よし、先へと進むぞ」
「にゃにゃ!」
「ゴブ」
「ガガァ」

 俺はレフたちに声をかけると、再び山頂を目指して歩き出すのだった。

 

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