105 リジャンシャン樹海 ①

 先に向わせていたフォレストバードを目印に、リジャンシャン樹海へと召喚転移でやってくる。

 この樹海は、Cランクモンスターが現れる天然のダンジョンだ。

 熟練の冒険者パーティが、足を運ぶ場所でもある。

 またサモナーやテイマーにとって、ここは自身の才能をはかるのにもよく使われるらしい。

 DランクモンスターとCランクモンスターの間には、大きな壁がある。

 才能が無くても大抵は、Dランクモンスターまで使役することができるようだ。

 しかし野生のCランクモンスターの場合、実力や才能が必要になる。

 Cランクモンスターを認めさせるのは難しく、またCランクモンスターに挑むころには容量限界を迎えている者も多くなるとのこと。

 なのでこの樹海でCランクモンスターを従えられるかどうかで、その者に才能があるかどうかが分かる。

 まあ俺の場合倒せばカード化できるので、才能云々うんぬんは関係ない。

 ちなみに今は国全体が大変なので、この樹海に来ているのは俺くらいなものだろう。

 そう思うと少し後ろめたさもあるが、気にしないで進むことにする。

 まずは連れ歩くモンスターだが、ここはレフとホブンでいいか。

 レフは既にいるので、ホブンを召喚する。

「出てこい」
「ゴブア!」

 ツクロダ戦では出番が無かったが、俺の手持ちでは優秀なモンスターだ。

 
 種族:エリートゴブリン
 種族特性
【無属性適性】【悪食】【病気耐性(小)】
【他種族交配】【腕力上昇(小)】
【技量上昇(小)】

 エクストラ
【ダンジョンボス】
【ランクアップモンスター】

 スキル
【打撃武器適性】【強打】
【連撃】【小波】【シールド】
【パワーアップ】

 またこの一ヶ月の間に、スキルオーブを購入してスキルを覚えさせた。

 攻撃面では瞬間的に連続で攻撃を打ちこむ連撃に、小さな衝撃波を放つ小波。

 守りや補助面では透明な盾を作り出すシールドに、一時的に力を上昇させるパワーアップを身につけさせている。

 これにより、ホブンは戦闘での自由度が増した。

 ちなみに強打はスマッシュと似たようなスキルだが、いずれスマッシュクラブがお役御免になった時のことを考えて覚えさせている。

 加えて強打をそれなりに使えなければ、上位の連撃を習得できなかったというのもあった。

 またホブンは蛮族のような防具を身につけているので、軽い攻撃なら受けても大丈夫である。

 それとエリートゴブリン自体はDランク上位だが、実力はスキルやエクストラも加味してBランク下位とも渡り合えるだろう。

 もちろんホブンだけではなく、レフも強化している。

 種族:グレネスレーヴェ
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(中)】
【威圧】【顎強化(中)】【気配感知】
【シャドーアーマー】【ダークネスチェイン】

 エクストラ
【フュージョンモンスター】

 スキル
【縮小】【隠密】
【シャドーニードル】

 だが次のフュージョン時にどうなるのか分からないので、覚えたスキルは少な目だ。

 スキルが引き継がれるようであれば、今後スキルも増やしていこうと思う。

 ただ隠密のスキルオーブはかなり高かったので、できれば消えないでほしい。

 ちなみにホブンのようなランクアップモンスターは、最初からスキルを引き継いでいるので問題はない。

 そうして準備もできたので、俺たちは樹海の中に入っていく。

 なお目印にしたフォレストバードは、念のためその場に残している。

 さて、どのようなモンスターが出て来るのだろうか。

 久々に高揚しながら、俺たちは進む。

 しかし出てくるモンスターは、ゴブリンやホーンラビットなど、お馴染みのものだ。

 まあ、浅層だから仕方がないか。

 一応Cランクは深層に多く、浅層ではまず出てこない事は聞いていた。

 適当に倒しつつ、進んでいく。

 だが中にはザコとはいえ、初見のモンスターもいた。

 
 種族:リトルトレント
 種族特性
【自然治癒力上昇(小)】 

 ぱっと見、それはただの若木である。

 しかしよく見れば、顔のようなものがあった。

 植物系のモンスターか、アレを試す時が来たな。

 そう、生活魔法の植育だ。

 俺はさっそく、リトルトレントに対して発動してみた。

「植育!」
「ッ!!」

 するとリトルトレントは、見る見るうちに大きくなっていく。
 
 これはもしかして、ランクアップしたか?

 そう思いもう一度鑑定してみるが、結果に変化はない。

 するとリトルトレントは、枝や根っこを動かして襲い掛かってくる。

 強さはおそらく、ワンランク上昇している気がした。

「ゴブア!」

 しかし所詮はザコなので、ホブンによって呆気なく倒される。

 ふむ。何となくだが、魔充でゴブリンを強化した時と似ている気がするな。

 だとすれば、時間経過で死亡、いや枯れていたかもしれない。

 一応カード化してみると、植育で強化された状態でカード化された。

 けれどもそれを見て、俺はリトルトレントを解放して消し去る。

 理由は何となく、ツクロダが改造に失敗したモンスターを思い出したからだ。

 自壊に向かいながら常に苦痛状態のモンスターと、これは似ていた。 

 カード状態であれば復活するとはいえ、これは越えてはいけない気がする。

 まあ、植育で実験した俺に言う資格はないけどな。

 これは、気持ちの問題かもしれない。

 そんなことを思いながら、俺は先を目指す。

 もちろんリトルトレントは見つけ次第、通常状態でカード化していく。

 ザコモンスターなので、集めるのは十枚にとどめた。

 それから次第にモンスターも強くなっていき、オークも現れ始める。

 Dランクのオークが出てきたということは、中層に入ったのだろう。

 だが中層は一番長いらしいので、深層はまだまだ先だ。

 あとはそろそろ、あいつも出しておこう。

 ここからは育成のため、このモンスターを召喚した。

 種族:キャタピラーモンキー
 種族特性
【糸吐き】【毒爪】
【自然治癒力上昇(小)】
【身体能力上昇(小)】

 エクストラ
【フュージョンモンスター】

 現れたのは上半身が茶色いサルで、下半身が紫色の芋虫になっているモンスター。

 全長は大人ほどだが、下半身はほとんど地面についているので、高さは基本子供ほどである。

「ウキィ!」

 召喚されたことを喜んでいるが、俺は正直複雑な気持ちだ。

 見て分かる通り、まるでマッドサイエンティストに改造された生き物である。

 俺もツクロダのことを、もはやどうこう言えないかもしれない。

 そしてこのモンスターはフュージョンモンスターであり、元になったモンスターがいる。

 種族名からも分かる通り、グリーンキャタピラーとスモールモンキーを融合させた。

 もちろん、そのグリーンキャタピラーはジョンである。

 フュージョンモンスターは回数を重ねるほど強くなるので、ザコモンスター同士で融合させたのだ。

 その結果が、これである。

 幸いだったのは、ジョン自身は喜んだことだろうか。

 またジョンには悪いが、これは良い経験になった。

 全くの別種を融合させると、こうしたキメラになってしまうのだろう。

 レフがもしこうなっていたかと思うと、ゾッとする。

 なので混ぜるモンスターは、しっかりと吟味ぎんみしなければならない。

 ちなみにこの経験があったので、サンの融合は見送った。

 サンも進化の条件を満たしているが、相性がよさそうで尚且つ吸血鬼に近付けるようなモンスターがいなかったためである。

 もししばらくしても見つからなければ、妥協して他の相性の良さそうなモンスターと融合する予定だ。

 そういう訳でジョンを育てようと思ったのは、次の進化で姿を変えさせるためである。

 だが何となく、次も悲しきモンスターになってしまう予感がした。

 まあ、その時はその時か。

 あとはジョンにスキルを覚えさせていれば、フュージョンモンスターがスキルを引き継げるのか分かったのだが、気が付いたのは進化させた後だった。

 むしろジョンを進化させたときに、気づいたともいえる。

 これについては、次の機会に試すしかない。

「ここからは頼むぞ」
「ウキキ!」

 そんな事を思いながら、俺はジョンに戦闘を任せて先へと進む。

 キャタピラーモンキーの強さは、Dランク中位くらいだろうか。

 身体能力も高く、生命力も高い。

 また糸を吐いて動きを阻害して、毒爪で相手を弱らせるのが得意だ。

 見た目こそアレだが、戦闘面のバランスはとても良い。

 オークくらいが相手なら、ジョンが勝つ。

 グリーンキャタピラーの時と比べて、かなり強くなった。

 一度のフュージョンでここまで変わってしまうことに、驚きを隠せない。

 もし数回フュージョンを繰り返した場合、いったいどうなってしまうのだろうか。

 そうして樹海で戦闘を熟していると、気が付けば日が暮れる。

 なので今晩は、ここで野営することにした。

 召喚転移で入り口に戻っても良かったが、もしここに残した目印がやられたらやり直しになってしまう。

 それに、守りは万全だ。

 周囲には、数十体のリビングアーマーを召喚しておいた。

 種族:リビングアーマー
 種族特性
【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】
【物理耐性(中)】【魔法耐性(小)】
【技量上昇(小)】【マナドレイン】
【自動修復】

 リビングアーマーはCランクなので、未だDランク程度しか出ない場所なら十分だろう。

 それにホブンとジョンもいるし、ついでにサンも召喚しておく。

 これを突破するようなら、流石に俺も起きるだろう。

 そうしてテントを張り、夕食を取った後ラフな格好になってから眠りにつくことにした。

「にゃーん」

 するとレフが縮小を少し緩めて、中型犬サイズになる。

「そういえば、久々だな」

 レフがまだグレイウルフだった時を思い出した。

 俺はレフを枕にして、横になる。

 毛並みはサラサラで、とても心地が良い。

 あの時は、ホーンラビットを掛け布団代わりにしていたな。

 そう思い、俺は久々にホーンラビットたちを召喚しようとした。

「ん?」

 だがその時、ホーンラビットのカード十枚が光り輝いていることに気が付く。

 もしかして、進化の条件を満たしていたのか?

 戦闘もさせていないし、最近は召喚もしていなかったのだが……。

 そんな風に思いながらカードを眺めていると、少しずつ情報が流れ込んでくる。

 これは始めてレフが進化条件を満たした時と、同じだった。

「ユニゾンフュージョン?」

 どうやら複数枚の同種カードが条件を満たした時に、可能となるようだ。

 効果はオーバーレボリューションに近く、複数枚を一枚にする進化方法である。

 おそらくこの隠し効果は、オーバーレボリューションと関係があるのだろう。

 オーバーレボリューションができるようになったことで、この隠し効果が増えたのかもしれない。

 つまりもう一つの強化である、時間的制限を半減する方にも、隠し効果があるのだろうか?

 まあ現状分からないので、今はユニゾンフュージョンの方に集中しよう。

 こちらは特に生贄が必要ない感じなので、さっそく実行に移すことにした。

 

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