088 ツクロダダンジョン ②

 ダンジョンを進みながら、俺は地図を描いている。

 これまでのダンジョンでは、モンスターに道案内をさせていた。

 なので地図を描くという事が頭になく、同じ場所まで来るのに時間がかかってしまう。

 ちなみに紙とペンは、ストレージから出していた。

 またブラッドは見た目が狼男なので、こうした細かい作業には向かない。

 対して俺は両手足を獣から人に変えられるので、地図は俺が描くしかなかった。

 そうしてようやく、元の場所まで戻って来たわけである。
 
 壁の一部が破壊されたままなので、間違いない。

 かなり時間を喰ってしまったな。

 だがなげいたところで仕方が無いし、ここは切り替えていこう。

 そう思いながら、俺たちは先へと進む。

 モンスターは相変わらず、スケルトンしか現れない。

 スケルトンのカードは既に十枚確保したので、これ以上カード化する気はなかった。

 また宝箱も発見して、ブラッドに罠を解除させている。

 気になる中身は、これだった。

 名称:ヒノキっぽい棒
 説明
 ・装備すると勇気が湧いてくるかもしれない。
 ・製作者が死亡した場合、この武器は自壊する。

 鑑定してみれば、正にゴミ装備と言える物が出てくる。

 ブラッドも鑑定ができるようで、この棒はいらないみたいだった。

 当然俺も必要ないので、この棒は宝箱に戻しておく。

 それからもいくつか宝箱を見つけたが、どれも持っていく気が起きなかった。

 なぜならその全てに、『製作者が死亡した場合、この○○は自壊する』という効果がついていたからである。

 これからツクロダを始末しに行く以上、持っていても意味がない。

 そもそもツクロダの作ったアイテムや装備など、使う気にはなれなかった。

 なので次からは、宝箱自体をスルーすることを決める。

 だがそれからダンジョンを進んでいくと、行き止まりの床に面白いものを発見した。

 名称:召喚の魔法陣(スケルトン)
 説明
 ・魔力を供給することで、一定の間隔でスケルトンを召喚する。
 ・製作者が死亡した場合、この魔法陣は自壊する。
 

 どうやらこの人工ダンジョンにモンスターを供給していたのは、この魔法陣らしい。

 ツクロダの神授スキルは、ここまでの物を作れるのか。

 魔力さえあれば、無限にモンスターを呼び出せるのかもしれない。

 おそらくあの大量のリビングアーマーも、こうした魔法陣から呼び出した可能性がある。

 このままツクロダの成長を許せば、いずれAランクやSランクモンスターを召喚できるようになるかもしれない。

 いや、もしかしたら、既にできるのだろうか?

 ダンジョンを進んでいけば、それも分かるだろう。

 ちなみに魔法陣は、そのまま放置した。

 破壊してまたスタート地点に戻されては、たまらない。

 そうしてダンジョンを突き進み、ようやく階段を見つける。

 いったい何階層あるか分からないが、このまま進むしかない。

 俺たちは警戒しながらも、二階層目へと下りていく。

 そして二階層目も引き続き、似たような光景が広がっていた。

 灰色の壁に、光る石が天井に埋め込まれている感じだ。

 しかし一階層目と違い、罠類は無かった。

 その代わり、モンスターが増えている。

 スケルトンはもちろんのこと、手足を模した石のモンスターも現れた。

 種族:ロックハンド
 種族特性
【浮遊】【集団行動】【硬化】

 種族:ロックフット
 種族特性
【浮遊】【集団行動】【硬化】

 大きさは成人男性の手足程度だが、その数が多くてやっかいだ。

 何より硬化のスキルでより硬くなり、こちらに飛んでくるのである。

 頭部に直撃すれば、流石の俺も危ない。

 しかし分かりやすい弱点があるので、そこを狙えば簡単に倒せた。

 ロックハンドの手の平には目があり、ロックフットの場合は足の裏に目がある。

 まあ、弱点を狙わなくても、獣化した腕で簡単に粉砕できたのだが。

 だが本来、こいつらはとてもやっかいなのだろう。

 実際ブラッドは、少々手こずっている。

 複数体から一度に襲われると、攻撃よりも回避することに集中してしまうからだ。

 俺の場合はレフとの融合で感覚が研ぎ澄まされており、またダークネスチェインを併用すれば対処は余裕だった。

 またカード化も当然行っており、使えそうなのでなるべく数を集めることにする。

 そのために俺は、この二種類を進んで倒していった。

 結果としてロックハンドとロックフットをそれぞれ五十枚、合計百枚手に入れる。

 加えてこの二層目は、この二種+スケルトンの物量作戦だったらしく、他に特出するべき場所は無かった。

 宝箱は開ける必要すらないので、スルーしている。

 そうして俺とブラッドは二階層目を進み、無事に三階層目への階段を見つけた。

 二層目は順調に進めたな。この階層ではブラッドも戦闘に貢献していたし、次もこの感じで頼むぞ。

 俺は心の中でそう思いながら、三階層目に下りた。

 三階層目は、霧が辺りを満たしている。

 視界が悪く、先がよく見えない。

 何があるか分からないので、俺たちは慎重に進んでいく。

 ちなみに先頭を歩かせていたゴブリンは、二階層目でカードが尽きている。

 元々王城に来るまでに何匹か消費していたこともあり、召喚可能な個体が既に残っていなかった。

 なので代わりのモンスターを召喚しようと思ったのだが、ブラッドが嗅覚で敵がいないか判断するという。

 また罠も先頭から直接見つけるので、任せてほしいとのこと。

 一理あると思ったので、先頭はブラッドに頼ることにした。

 罠の発見や対処、嗅覚については、俺よりも優れていることは間違いない。

 そうして先を進んでいたのだが、しばらくして問題が発生した。

「ガ、ガラダガ……」
「え?」

 突然ブラッドがそう言って、床に倒れる。

 俺は周囲を警戒するが、何も感じない。

 敵がいる訳ではなさそうだった。

 また何か罠にでもやられたのかと思ったが、そうした物も無い。

 なのでブラッドへと慎重に近づき、様子を確認する。

 それによって分かったのは、どうやら麻痺によって動けないということだった。

 モンスターでもなく、設置された罠類でもない。

 であるならば、この麻痺を引き起こしたのはおそらく、周囲に満ちる霧だろう。

 それ以外、現状では考えられない。

 俺は元々デミゴッドで状態異常に強いこともあり、体に不調などは見られなかった。

 しかし絶対ではないので、この階層に長居するのは危険である。

 俺はダークネスチェインでブラッドを引きずりながら、先へと進むことにした。

 この状態では、地図なども描いていられない。

 また種族特性に耐性は無いが、麻痺に何となく強そうなアシッドスライムを複数匹召喚しておく。

 種族:アシッドスライム
 種族特性
【強酸】【酸弾】【分裂】
【再生】【酸耐性(大)】

 とりあえず前後を任せ、俺は守りを固めた。

 するとそれから数分後、狙ったようにモンスターが現れる。

 出てくるのは今のところスケルトンだが、向こうは麻痺が効いていないようだ。

 やはり種族特性に耐性が無くても、効かないモンスターはいるらしい。

 ここまでモンスターが出なかったのは、おそらくこちらが麻痺で弱るのを待っていたからだろう。

 実際、ブラッドは動けなくなった。

 麻痺に耐性が無ければ、ここで詰んでいたかもしれない。

 俺はそう思いながら、スケルトンを蹴散らしていく。

 アシッドスライムにも、酸弾を使わせた。

 スケルトンくらいなら、余裕だな。

 そう一息ついたところで、次の面倒がやってくる。

 見れば薄っすらとだが、先の通路に罠が張り巡らされていた。

 まじか、ブラッドが動けないときに限ってこれか。

 

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