013

 やはり、マッドゴーレムは一体ずつしか出てこないな。それに、出現頻度がそこまでよくない。

 あれから数時間狩り続けて、マッドドールのレアドロップである魔力泥は既に二つ手に入れているが、未だにマッドゴーレムのレアドロップは手に入れていなかった。

 このままではらちが明かないな。横道に逸れて先に進んでみるか?

 今いる場所は、山の中腹で比較的広く平坦になっている。しかし、左右はほぼ垂直な崖であり、普通に登るとすれば手間取りそうだった。

 登ってみるか。問題は、その先にマッドゴーレムがいるかどうかだが、ボスエリアを逸れて敵が弱くなることはないだろう。

 最悪の場合は登った先にボスモンスター以上の敵がいることだが、その時は崖を飛び降りてでも逃げたほうがいいな。

 それに、飛び降りるのはあまり問題じゃないから大丈夫だろう。

 そう考え、近くにモンスターがいないことを確認すると、俺は槌をしまい、崖の前に立つ。

 さて、なにが出るか。楽しみでもあるな。

 そうして、俺は勢いをつけると、その場から全力で垂直飛びをする。その直後自己重力操作を駆使して自分にかかる重力を極限まで減らす。

 その結果、俺は数十mはある崖を超え、重力を増やしてその先に着地した。

 まさか超えられるとは思わなかったな……それでここは……さすがに無理だ。

 その直後、俺は重力を操作しながら飛び降りる。最後に見えたのは、数十体を超えるマッドゴーレムの群れだった。

 はぁ、あれはひどいな。あれじゃあ普通にボスエリアを通ったほうが楽だろう。

 俺は岩陰でそうため息を吐くと、先ほどの光景を思い出す。一瞬だが、数十体を超えるマッドゴーレムと、見た目が似ているが、材質の違うゴーレムがいた。おそらくマッドゴーレムの上位種とかだろう。

 これなら、地道にここでマッドゴーレムを倒したほうがいいな。だが、いつか挑戦してみようと思う。きっとあの先には何かあるに違いない。

 そう思いながら、俺は再びこの場所で狩りを再開したのだった。

 ようやく手に入ったが、まさか素材以外がドロップするとはな。

 昼食休憩後、しばらくしてマッドゴーレムからレアアイテムがドロップした。しかし、それはどう見ても素材ではなく、装備品。名称もマッドグローブとなっている。

 名称:マッドグローブ
 分類:手袋
 階級:一般
 耐久:50/50
 能力:筋力上昇(微小)

 レアドロップのわりに階級が一般か。それに加えて、作者欄がないのが気になるな。

 そう思いつつ、マッドグローブを観察する。見た目は茶色く、所々にひび割れが入ったグローブで手首のあたりはすぼんでいる。肌触りはさらさらしており、柔らかい粘土のような柔軟さがあった。

 悪くないな。それに、完成品にもかかわらず作者がいないとすれば、錬金鍛冶術の素材になるかもしれない。試してみる価値はある。

 俺は、周囲を念入りに見渡し、人とモンスターがいないことを確認すると、十分警戒しつつ、岩陰に隠れた。

 よし、今ならやれる。素材はこれにしよう。

 そして、錬金会術を発動した。

 マッドグローブ+魔力泥+良質な泥
=マッドグローブ改

 名称:マッドグローブ改
 作者:ジャック・ジョーカー
 分類:手袋
 階級:希少
 耐久:200/200
 能力:『筋力上昇(小)』『地属性耐性(中)』

 思った通りだ。作者がいなければ素材にできる上に、その装備をベースとして使えば質を下げずに同系統のものが作れる。

 そのままマッドグローブが格上げされたのは予想外だったが、問題ない。それに、筋力上昇は元からあったが、地属性耐性の方が能力が上だな。素材三つとも泥に関係していたからだろうか?
 
 出来上がったマッドグローブ改の形は依然と大して変わらないが、ひび割れが無くなり、色は全体的に明るい茶色となっている。手の甲には、暗っぽい茶色の魔法陣が描かれていた。

 早速装備してみると、大きさが自動調節され、俺の手にぴったりとなる。これは特に驚いていない。希少以上の装備はその者の体に合うようにできているのだ。それはチュートリアルで教えられている。

 おお、全く違和感がないな。阻害感が全くない。それに、肌触りがさらさらなのに、滑る感じもしないな。これはいいものだ。

 一通りマッドグローブ改に満足すると、俺はいよいよ決意する。

 これなら、ボスエリアに行っても大丈夫だろう。何が出てくるかは分からないが、ここまで出てきた敵からして地属性の可能性が高い。

 武器の属性相性はよくないが、現状これ以上の武器を作るのには手間がかかる。今から作ろうと思えば、翌日になってしまう。

 それにできれば称号を手に入れたい。時が経てば経つほど、その可能性は低くなる。だからこそ、今行くんだ。

 そう決意した俺は、ボスエリアへと踏み入った。


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