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 視界が戻ると、そこはイスやテーブルの並んだシンプルな部屋だった。よく見れば、コンロや水道もあり、他にも近くのドアにはトイレと思わしきマークもある。俺が最初にいたあの保健室のような場所と比べても、十分生活感があった。

 

 もうここを拠点にしたいな。

 

 つい俺は現実逃避でそんなことを思ってしまう。だが、正面の壁には現実を知らしめるかのように、先ほど表示された内容と、チーム数がそろってから三十分後に始まることが記されていた。

 

 俺一人とかどう考えても無理だろ……最下位には厳罰とかあるし、ボッチ殺しのシステム過ぎる。そもそも、事前に確認できないのが酷い。これは明らかにチームを組む場所を提供したのに、ボッチのままなのが悪いということだろう……。

 

 俺はため息を吐くと、ひとまずトイレで用を足し、蛇口を捻って水を飲む。

 

 これで毒だったら諦めるしかないな。さて、この状況を少しでも有利にするためには、やっぱりガチャに賭けるしかないよな。

 

 そう思い、俺は左手にあるオルガウォッチからガチャの項目を開く。初心者ガチャと無料ガチャ、それと特殊ガチャは文字が灰色となっており使用不可。残されたのは通常ガチャと食料ガチャ、そして11連ガチャの三種類だった。

 

 現在の所持オルガは1675。最低でも500は残しておきたいから、そう考えると一回1000オルガの11連ガチャと、一回30オルガの食料ガチャ×五回にしておくか。

 

 俺はそう判断すると、まずは食料ガチャを回す。その五回全てが白色のカプセルだった。

 

 ・のり弁

 ・缶コーヒー

 ・キャベツ

 ・レトルトカレー

 ・塩

 

 出てきたものはどれも単品であり、塩に関しては小瓶に百グラムのものだ。

 

 悪くはないが、これで二日は厳しい。というよりも飲料が少なすぎる。これはモンスターを倒してその場で食料ガチャを回すしかないな。もしかしたら水は手に入るかもしれないが、あまり期待しないでおこう。

 

 そうして、俺は楽しみに取って置いた11連ガチャを回すことにした。深呼吸をして間を置いてタップすると、おなじみのアニメーションが始まり、ガチャガチャから次々にカプセルが排出されていく。

 

 白、白、白、銅、白、白、銅、白、白、白、銀!

 

 最後に銀色のカプセルが排出されてテンションが上がるが、おそらく11連の場合最低でも銀は確定なのだろうと気持ちを落ち着かせた。そして、一つずつ開封されていき、その全てが出そろう。

 

 ・鉛筆(C)

 ・ルービックキューブ(C)

 ・サングラス(C)

 ・100オルガ(UC)

 ・タバスコ(C)

 ・フライパン(C)

 ・名も無きナイフ(UC)

 ・水筒(C)

 ・あんぱん(C)

 ・ホーンラビットのぬいぐるみ(C)

 ・スキル【暗視】(R)

 

 おお、スキルが出た。なかなか悪くないラインナップだな。因みに横の文字はレア度だ。

 

 俺は早速暗視のスキルを習得して効果を確認する。

 

 

 名称:暗視

 レア度:R

 種類:パッシブ

 効果

『光の無い場所でも視界を確保することができる』

 

 

 思った通りの効果だな。だが、これで暗闇で何かあっても対処できる。

 

 俺はそう満足しながら、次に100オルガを使用して所持金を600オルガにした。この時もう一回ガチャを回そうかとも考えたが、そういった欲求を我慢しなければいずれ破滅しかねないと、自制する。

 

 このあと一回って考えが危険なんだよな。オルガ=命っていう状態だし、慎重にいこう……って戦闘狂の俺が言っても仕方がないか。

 

 その後、名も無きナイフを腰にセットし、水筒に水を汲む。因みに水筒は水を入れた状態でカード欄に戻しても、次に出したときには問題なく水が入ったままだった。

 

 こういう仕様は助かる。水が無いと流石にやばいからな。

 

 続いて、時刻を確認すると10時42分だったので、昼食を兼ねて先ほどガチャで出したのり弁を食べ、完食すると割りばしやプラスチックケースのごみなどは光の粒子となってきた。どうやら再利用まではできないらしい。

 

 せめて割りばしは残しておきたかったが仕方がないか。ならあのステンレスのフォークを洗っておこう。

 

 戦闘で散々使ったステンレスのフォークを取り出して蛇口で洗う。歪んだ状態のままだが、一応カードに戻すたびに血などの汚れは完全になくなっているが、唯一の食器なので念入りに洗っておく。

 

 さて、今できることは大体できたな。後は始まるのを待つだけか。

 

 壁にはいつの間にか参加チームがそろったのか、カウントダウンの数字が浮かび上がっていた。残り時間は十分ほど。

 

 そういえば、俺の家族は今どうしているのだろうか……といっても、オルガゲームに参加したやつの記憶は消されるんだっけか……ある意味よかったのかもしれないな。

 

 記憶が残っていた方が残酷だろうと、俺は思った。おそらく死ぬ確率の方が高い俺のことをいつまでも探し続けるよりも、元からいなかったと思ってくれた方がいいと、俺は強がってかすれたような笑い声を吐く。

 

 俺の荷物とか、写真とかはどうなっているのだろうか。それも無くなっているのか? まあ、どうでもいい。それは奇跡的に変えれたときにでも考えよう。

 

 オルガゲームが始まった直後は家族のことなど考える余裕はなかった。それどころか、どこかゲーム感覚で楽しんでいた節もある。こうして暇な時間ができたことで、俺は本能的に避けていた家族のことをつい思い出してしまったのかもしれない。

 

 こんなことなら、あの姫歌とかいうチームに入れてもらうべきだったか……いや、なんか逆に生存率が低下しそうだな。くそ、こんなことを考えても意味はない。むしろひどくなる一方だ。

 

 俺は頭を振って弱気な自分を追い出す。そんなことを考えたところで悪影響しかないと言い聞かせた。

 

 これでいい、今はこれからの戦闘で最下位にならないことだけを考えよう。

 

 俺は心を落ち着かせると、時間が来るのを待つ。そして、到頭その時が来た。突如として視界は暗転し、すぐさま目の前には別の景色が広がる。

 

「外……か」

 

 視界にはどこまでも続く青空と、日光が燦燦さんさんと降り注いでいる。下方に向ければ、荒廃とした無人の街並みが広がっていた。

 

 まるで紛争地帯の跡地だな。

 

 周囲を見て、俺はそんな感想が浮かび上がる。

 

 さてと、これから二日間、最後まで生き残るぞ!

 

 俺はそう気合を入れると、左腰から長剣を引き抜いた。


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