小説

008

 さて、称号もそうだが、まさか鍛冶師ギルドでこの名前が通るとは思わなかったな。というのも、この世界で異人は同じ名前を使えない。 上と下の名前の組み合わせ次第では可能だとはいえ、この名前、ジャック・ジョーカーは、スペード神や他の陣営のことを考…

007

 どうしよう。金がない。 鍛冶師ギルドの前に来て気が付く。登録料がないということに。 ここまで来てどうしようもないな。登録料がいくらかかるかだけでも聞いてみるか。 そう思いながら、建物の中に入っていく。やはり、鍛冶師ギルドというだけにドワー…

006

 これで本当に金は底をついたな。 この宿は食事代別で一泊2,000フィルだ。宿泊客には割引があるらしく、何とかわずかな残りで一番安い食事を摂ることができた。 だが、これで明日稼がなければ飢えることとなる。もう後には引き返せない状況となった。…

005

 あれから俺は途中警戒しつつも昼食を摂り、数多く現れるストーンタートルを倒しながらも、手ごろな岩や石などを収穫し、そろそろ町に帰ろうかと考えていた。「ガメェ!?」 一匹のストーンタートルが悲痛の声を上げて光の粒子となる。残されたのはおなじみ…

004

 それにしても、この顔と声は便利だな。露店で購入の時は値引きしてくれるし、聞いたことは丁寧に教えてくれる。それも男女関係なく。 そう、俺の見た目は幼さを残す少女であり、声は愛らしく、長い銀色の髪は後ろで大きな三つ編みにしており、どこか眠そう…

003

「――というわけで、チュートリアルは以上となる。何か質問はあるか?」「いや、十分だ。いろいろ確認できて助かった」「そうか、ならもう言うことはないだろう。お主ならば大丈夫だとは思うが、たっしゃでな」 そうして、話を聞き終わってチュートリアルを…

002

「ん?」 目が覚めると、そこはまるで熱湯が煮えたぎるような音を鳴らす場所。溶岩地帯だった。暗っぽい岩が周囲に散乱している。「おう、目覚めたようじゃな」「誰だ?」 突然そう声をかけてきたのは、ずんぐりむっくりという言葉を表したような体系の老人…

001

 俺はいったい誰なのだろうか? それが最初に思ったことだった。 体が動かない暗闇の中、いや、|体の感覚《・・・・》のない暗闇の中で、俺はぼんやりとただ存在しているだけだというのに、そこに何の不快感も無く、負の感情すら湧き上がってはこない。 …

006 案内

 700万シルをストレージの中とはいえ、持ち運ぶ勇気は無く、俺は早速冒険者カードを利用して冒険者ギルドに預けた。「君のような稀人ばかりならいいのだが、あのような者もそれなりにいるとみて対応をすべきだな。では、私はこれで失礼する」「ここまであ…

005 奴隷商

「娘を助けていただきありがとうございました。遅れながら申しますが、私はこちらの冒険者ギルド職員をしておりますフィーネと言います。今は会計や依頼の仕分けなどを主にしておりますが、以前は受付嬢をしておりました」フィーネさんはそういうと、冒険者登…

004 能力の確認

≪稀人で初めてPVPに勝利したことにより、称号『勝利者』を獲得しました≫≪アルカナ『吊るされる男』の能力『忍耐の試練』により、称号『勝利者』は『連勝者』に向上しました≫視界が戻ると同時に、そんなアナウンスが聞こえてくる。 そして、目の前には…

003 稀人の少年

 稀人の少年は自分の世界に入っているのかこちらには気がついておらず、偶然空いていた正面の受付まで向かうと再び笑みを浮かべる。受付の女性はその表情に若干引き気味だ。 そんな時、一人の男性冒険者が少年に近づくと、右肩に軽く触れてこう言った。「お…