ダンジョン転移と勇者召喚に巻き込まれたが、俺には関係ない。称号スキルで安住の地を創造します。

 ダンジョンが発生し称号スキルという独自のシステムが組み込まれた世界で探索者をしていた天動御影は、ある日素振りをしているところダンジョン転移に巻き込まれて異空間に飛ばされてしまう。そのまま異空間に消え去る運命と思いきや、奇跡的にも勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移することになった。その過程でユニーク称号スキルによりダンジョンや勇者の能力を手に入れた御影は、魔王や勇者のことなど関係ないと仲間と共に安住の地を創造し始める。しかし完成までは世の中との縁は切れないし、足りないものが多すぎた。その結果行く先々で厄介ごとに巻き込まれ、国や勇者、しまいには魔王軍の四天王にまで目を付けられる始末。「いっそのこと全部滅ぼすか」「おお、我が神よ! それは素晴らしい考えです!」「いや、冗談だから……」果たして、御影は無事に安住の地を創造することができるのか、それとも第二の魔王となってしまうのか、それはまだ分からない。

 

  • 001 巻き込まれた者

     寝て、起きて、ダンジョンに行って、寝て、起きて……変わり映えのしない、いや、死んでしまえばそれまでの毎日を俺、|天動御影《てんどうみかげ》は過ごしていた。 この世界にダンジョンが発生して約百年、世界は疲弊してくたびれている。 モンスター大…

  • 002 称号スキル

    ≪ゾンビシスター『エレティア・レイマーズ』に支配契約を実行致しますか?≫ 実際に声が聞こえたわけじゃない。けれども、それは確かに俺の脳内に浮かび上がっていた。 何だこれは? 支配契約? 訳が分からないが……。 突然のことに混乱してしまうが、…

  • 003 突然の襲撃者

    「エレティア・レイマーズ。お前にルドライナ枢機卿に嫁がれると面倒なんだ。俺の出世のためにも死んでくれるよな?」 突然現れた騎士風の男はそう言って剣を抜くが、先に動いた者がいた。「あ“あ“ぁああ!!」「なっ!? ぐべぇ!?」 信じられない速度…

  • 004 重要な可能性

     よし、最低限の準備が整ったな。 俺は騎士風の男ゲスゴーノが持っていた片手剣を剥いだ鞘に入れて左腰に差し、盗賊の一人が持っていた短剣も同様に背中側の腰に身に着けた。 やはり、剣があるだけで安心感が違う。元々剣士の称号をメインに戦闘を熟してき…

  • 005 異空間生成

     これは……入ってみるか。俺の予想通りであれば、今後が一変する。 俺は目の前に現れた黒い円形の空間へと、恐る恐る足を踏み入れた。 何も無いな……。 そこに広がっていた空間は、およそ高さ5m×横幅5m×奥行5mほどの正方形をした場所であり、全…

  • 006 移動手段

     目が覚めると、そこは洞窟の中だった。 ここは……ああ、そうか。ダンジョンを作ったんだっけ。「あー」「おはようエレティア」 横に視線を向けると、そこにはエレティアが昨日と同じ場所に立っていた。ゾンビだから寝る必要が無いのかもしれない。そもそ…

  • 007 街道での事件

     道中は至って平和だった。街道の端からモンスターがやってくることは無いし、人とすれ違うこともない。 意外と人通りは少ないのかもしれないな。 当初街道で人とそれなりにすれ違うのではないかと警戒していた。それはもちろん、エレティアがゾンビだと気…

  • 008 遠い記憶と核

     深い、闇の中に俺はいた。いや、これは夢なのだろうか。灰色の映像が映し出されている。「君の両親は立派だったよ。ダンジョンに迷い込んだ子供たちをモンスターから命がけで助けた上に、そのまま|囮《おとり》になって皆を助けたんだから」 それは、遠い…

  • 009 力の確認

     元はホームに戻るために用意したが、今回はいい方向に転がったな。 そう思いながら俺は自らの手の平に|創り出した《・・・・》石ころへと視線を移す。それは、転送/召喚の称号スキルでホームと行き来するために必要なものだった。 一度ホームに戻ってし…

  • 010 スラッシュの確認

     なるほどな。そんなうまい話はないという訳か。ダンジョンで手に入るアイテムを作り出せれば、怖い物なんて無いに等しいだろうしな。 ダンジョンから時折見つかるアイテムは、物によってその価値はユニーク称号所持者に迫る物まで存在していた。それを自由…

  • 011 異世界初の町へ

     現在俺は、再び街道を歩いている。手荷物は特にない。石刀はホームに置いて来ているが、疑似天地創造で創り出したので、状況によっては即座に呼び出すことができる。 それにしても、ホームに金銭の半分を置いていたのが功を奏したな。 人外集団に金銭を奪…

  • 012 冒険者ギルド

     エレバスの町は、活気に満ち溢れている。行く人々は明るく、商売人は声高らかに客を呼び込んでいた。 すごいな……何というか、人々の表情が明るい。未来に希望があるように感じる。 元居た世界では、行く先々で暗い表情の人が多かった。といっても、俺の…

  • 013 G級試験

     練習場の一角にて、俺は模擬戦を行うことになった。目の前にいるのは、冒険者ギルドの教官だというガイラスという男だ。 相手も同じ木剣か、俺に合わせているのか? そんなことを思いながら、互いに少し距離を取る。「ミカゲとかいったな? まぁ気軽にか…

  • 014 契約冒険者について

     契約冒険者? なんだそれは? そのような制度があるという話は、盗賊の男からは訊いていなかった。「ああ、僕の契約冒険者になれば、依頼の紹介をしてあげるし、ランクの昇給審査も通りやすくなるよ。他にも、メリットはたくさんあるんだ」 そこだけの部…

  • 015 初依頼

    「うん。これなんかどうかな。今近い時間帯ではこれがお勧めだよ」「倉庫から別の倉庫への荷移しか」 受付のカウンターに戻ると、ルチアーノが早速依頼を勧めてくる。戦闘系の依頼だと思っていたので、少し腑に落ちない。ちなみにだが、冒険者のルールなどの…

  • 016 小競り合い

    「おう。お前凄い力持ちなんだな!」「武器を持っていないところを見るに格闘家か?」 俺が木箱を運んでいると、不意に若い冒険者二人から声をかけられた。「ん? いや、格闘家ではないな」 急になんだ? それよりも、木箱運べよ。 誰がいくつ運んでも全…

  • 017 鳥のゆりかご亭

     ここがルチアーノの紹介してくれた宿屋か。 大通りから少し外れた場所にあるが、二階建ての立派な宿屋だった。看板には、宿屋の名称である鳥のゆりかご亭という文字が記されている。「いらっしゃい。宿泊かい?」「はい、とりあえず三泊頼みます。それと、…

  • 018 満腹と浅い眠り

     ……もう満腹だな。 あれからひたすら素振りをしていた俺は、夕食時になったこともあり宿屋の一階で食事をしていた。出てきた献立は、野菜のスープに肉の炒め物、それに少々固いパンである。内容はシンプルだが、量だけは多い。 普通の二倍はあるな。だが…

  • 019 盗賊の塒

     ホームを経由して盗賊がいると思われる森へと俺はやってきた。 確か、あの盗賊の話ではあと八人仲間がいるんだよな。 潜んでいるであろう人数を思い浮かべながら、盗賊が仲間のいる場所を指さしていた方角を見つめる。森を出るとき、その盗賊が指さした逆…

  • 020 盗賊の頭

     何でこんなところに獣人の子供が……って普通に考えたら盗賊に捕まったんだろうな。 獣人の子供たちは、檻の中ですやすやと眠っているようだった。その首には、見覚えのある首輪がされている。 あの首輪は、確か獣人集団が付けていたものと似ているが、同…

  • 021 獣人の子供たち

     こいつは、似ている。俺と直接戦った獣人の男とそっくりだ。 俺はその偶然に驚く。しかし、だからといってやることは変わらない。むしろ好都合とさえ思えた。 あの獣人は強かったからな、こいつを保護しておけば役に立ちそうだ。「俺はミカゲだ。まあ落ち…

  • 022 移動と拡張作業

    「それじゃあ、お前らを俺のホームに招待しようと思う」「ホーム?」 獣人が囚われていた部屋に戻ると、俺は早速そう切り出す。ベサルはそれに対し、若干不思議そうに訊き返してくる。「ああ、ホームだ。俺が拠点としている場所だが、安全は保証しよう。移動…

  • 023 保護をする理由

     魔力をかなり使ってしまったな。維持するための魔力も馬鹿にならない。だが、戦闘で使う分にはまだ余裕はありそうだ。 途中からホームの拡張が楽しくなってしまい、魔力を湯水のように使ってしまった。しばらくホームの拡張は控えた方がいいだろう。 さて…

  • 024 常時依頼

     俺が冒険者ギルドにやってくると、担当であるルチアーノの元へと向かう。「やあ、いらっしゃい。早速依頼を受けるかい?」「ああ、今日は討伐系を頼みたいのだが」「討伐系? おや、どうやら剣を手に入れたようだね。武器無しなら厳しいと思ったけれど、持…

  • 025 東の森

    「ふッ」「ギュビビッ!?」 俺は目の前に現れたグリーンキャタピラーを両断した。小型犬ほどの大きな芋虫ではあるが、吐かれる糸さえ気を付ければ相手にはならない。 芋虫だけに動きが遅いのもあって、楽に倒せるな。 倒されたグリーンキャタピラーは光り…

  • 026 獣人差別と魔素

     改めて何を訊こうかと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのは獣人の差別についてだった。そのことをブラウに質問をしてみる。「俺はこの国出身じゃなくて詳しくはないんだが、獣人は何故差別されているんだ?」「え? ……それは、この国が人族至上主義だから…

  • 027 冒険者ギルドでの騒動

     道中は問題なく進んでいた。途中自己紹介をしていなかったことに気が付き、俺の名乗りを聞きながらも、後ろをブラウが付いてくる。ただし、ブラウは足を短剣で斬られた傷があるので、若干足が遅い。 麻痺は流れで治したが、傷を治してわざわざ自分の手札を…

  • 028 依頼の報酬

    「二人とも、ここは目立つから奥に行こうか」「わかった」「はい」 アグムとジットが衛兵に連れていかれた後、俺とブラウはルチアーノにそう言われて、奥の部屋に行くことになった。 思ったより目だったようだ。特に、ブラウが叫んだ時の注目は凄かった。 …

  • 029 買い物と緊急事態

     はぁ、また懐が寂しくなったな。 現在俺は必要物資を買いそろえ、防具を新しく購入していた。それが済んだことで、今は宿屋の自室に戻ってきている。 ホームに戻って金銭を取りに戻ったが、まさかほとんど使ってしまうとは……。 溜息が出てしまうが、買…

  • 030 新たな事件

     目が覚めると、俺はエレティアに膝枕されていた。近くにはベサルもおり、こちらを覗き込んでいる。「カミ!」「あんちゃん!!」 俺の意識が戻ったことに気が付くと、二人はそんな風に声を上げて喜びを現す。「……あんちゃん、ってのはなんだ?」 ベサル…

  • 031 思わぬ遭遇

     直感を頼りに森の奥へと進むが、一向にブラウを発見することができない。 くそ、やはり直感だよりで探すのは無謀だったか……。 徐々に俺は不安を覚えていくが、他に方法もないことも事実なので、森の中を駆け抜けていく。だがその時、あることに気がつい…

  • 032 獣人たちへの説得

    「確かに死にかけたことを恨まないと言えば嘘になるが、これまでの獣人の扱いを考えれば襲われたのも納得することができる」「なに? お前に何が分かる!」「ほら、やっぱり恨んでいるにゃ!」 俺はあえて恨んでいると言った。ここで恨んでいないと言う方が…

  • 033 親子の再会と売り込み

    「あんちゃん、帰ってき……父ちゃん!」「べ、ベサル! ベサルなのか!」 ホームに戻ってくると早々に、ベサルとべガルは鉢合わせ、互いの無事を喜び合う。「ぱぱー」「おじさんだー!」「村のみんなだ!」 それにつられて、他の子供たちも集まってきた。…

  • 034 移住への決断

    「それで、どうだろうか。このホームに移り住む決心はついたか?」 俺が獣人たちにそう問いかけると、既に答えが出ているのか、代表してべガルが答える。「ああ、我々はこのホームでやっかいになろうと思う。ついては、拠点に残してきた仲間たちへの説得と、…

  • 035 獣人奪還戦

    「ふっ!」「ぐあっ!?」 転移して早々、俺は目の前にいた男を斬り倒す。周囲を見れば、複数の奴隷狩りと思わしき男たちがいる。そして狭い森の中に場違いな牢屋馬車があった。当然その中には獣人たちがいる。「 仲間の仇だ! くらえ!」「お前らには死ん…

  • 036 獣人解放と戦利品

     ランディルが去ったあと、俺たちは牢屋馬車に囚われている獣人たちを解放した。「助かりましたべガル。しかし、他の仲間が……」「みんな、遅れてすまない……」「っ! そこにいるのは人族!? なぜ!?」「大丈夫にゃ。ミカゲは人族だけど信用できる人物…

  • 037 騒動の終わりと次に向けて

     ホームに戻ってくると獣人たちは驚きと共に、ベサル達を見て喜んだ。その後エレティアとの遭遇でひと悶着あったが、それも以前と同じように解決する。「ミカゲ殿、この度は誠にありがとうございました。我ら獣人を助けてくれたこと、生涯忘れません」 全員…


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